ブラコン姉妹は、天使だろうか?【ブラてん】

三城 谷

文字の大きさ
12 / 68
共通ルート

ブラコン姉妹は、天使だろうか?(11) 

しおりを挟む
 遊園地に来るのは、いつ振りだろうか?そんな事を思いながら、俺は両腕を無理矢理に引っ張られている。

 「おいおい、そこまで焦らなくても時間には余裕があるぞ?」
 「兄者は分かってないなぁ。遊園地の乗り物は、何回でも乗り回すのが常識だよ?」
 「いや、美羽。その常識はお前だけだと思うぞ?」

 ぱあっと表情を輝かせている美羽は、読心術の心得が無くともテンションが上がっている事が分かる。片腕を引っ張られている間、もう片方の腕にも何かの力が入ってその場で制止させられる。

 「美羽、まずはこちらから行くのが常識だと思います!」
 「ええ~、美羽はお化け屋敷とかにしようと思ったのにぃ~」
 「お、おば、お化け屋敷なんて、そんな子供騙しなんてつまらないに決まってます。お兄様、さっそくジェットコースターに乗るのも一つの手ですよ?」
 「あ、あぁ……」

 俺は両腕を引っ張られながら、足を前へと進める。こう言い争いになると、お互いのプライドは表に出てしまう癖が彼女たちにはある。負けず嫌いというか、好戦的にというか……兎に角、この場を収めるためには乗り物に乗るのが一番だ。となれば……俺はどっちにしようか。お化け屋敷かジェットコースターか。

 「……」

 意外に悩む物だと思いながら、俺は言い争いと続ける彼女たちの勝負に付き合うつもりは全く無い。そもそも内容を知らないのだから、気にしても仕方が無いのだ。ならば、俺は順番を決めるだけでも勝ち負けを決めるにはちょうど良いだろう。

 「よし、決めた。お化け屋敷に行くとしよう。その次はジェットコースターな?二人とも、それで良いか?」
 「ふふん……♪」
 「むかっ……はぁ~、お兄様がそう決めたのなら、私に異論はありません。はぁ~……次は私の方を選んでもらうようにしないと……」

 何やらブツブツと言っているが、聞こえないのでそのままにしておこう。せっかく来たのだから、楽しまなければ来た意味が無くなってしまう。ここ最近は勉強尽くしだった上、羽を伸ばすにはちょうど良い一日になりそうだ。

 「……ぎぃやあああああっ!!」

 女の子だろうに、と思う程の節操の無い叫び声。眉目秀麗で完全無欠と噂されている少女でさえ、こうも容易く崩れるお化け屋敷。とは言うものの、俺としては大した事は無いのだけど……美咲にとっては違うらしい。

 「ぎゃあぁぁぁぁぁぁっ!!こっち来るなぁ!!うわっ、次こっちから!?うにゃぁぁぁぁぁっ!!」
 「くすくす……」
 「美羽は平気そうだな。ホラー得意だったっけ?」
 「美羽は大丈夫だよ?自分よりも盛大に怖がってる人が居るし(兄者が隣にいるし♪)」
 「ふうん……あ、戻ってきたぞ」

 美羽と小さく交わした会話の後、フラフラと体を左右に揺らしている美咲が来た。もうゾンビみたいになっていて、どっちがお化け役か分からないという具合である。

 「お、お、お兄様……私は、もう、ダメです」
 「すげぇ顔色悪いぞ。もうゲッソリし過ぎて、心配通り越して怖いわ。大丈夫か?」
 「……はい。もう少しで、出口ですよね?……でしたら、もう少しだけ頑張ります……」
 「お、おう」

 フラフラと左右に揺れながら、順路を進んで行く美咲。俺と美羽はその背中を眺めながら、小さい声で言葉を交わすのだった。

 「おい、美咲は大丈夫なのか?」
 「うーん、大丈夫だと思うよ?美咲はタフな部分もあるから、このぐらいじゃへこたれないと思うんだけど……」

 そう言いながら、再びフラフラと歩く美咲に視線を戻す美羽。その瞬間に驚かされていて、品の無い悲鳴を上げていた。本当に大丈夫だろうか?

 「……ったく、仕方ねぇな」
 「兄者?……あ」

 そう小さく呟いた俺は、スタスタと平気そうな美羽を置いて美咲の元へ近寄った。フラフラと危なっかしいから、こっちが見ていられない。

 「――ほれ、美咲。これなら多少は怖く無くなるだろ?」
 「お、おおおおおお兄様?突然何を!?」
 「我慢するのも良いが、素直に頼る事も覚えてくれ。一応これでも、お前らの兄なんだからさ。ほれ美羽、お前はこっちの手だ」
 「美羽も?良いの!」
 「何を言ってるんだお前。俺はって言ったんだ。美咲だけに手を伸ばす訳ねぇだろ。良いから、ほれ」

 俺は半ば無理矢理に彼女たちの手を握り、順路をゆっくりと進んでいく。小さい手を両手に持って、俺たちはようやくお化け屋敷を抜ける事が出来たのであった。――のだが……。

 ガヤガヤと周囲の目に映ったのは、無邪気に笑っている美羽と涙目となっている美咲。その彼女たちの手を握っている状態を見て、俺を見る周りの目が痛かった。やめろ、俺をロリコンかシスコン。それか誘拐犯を見るような目で俺を見えるな。見ないで下さいお願いします。そう心の中で懇願こんがんしながら、俺たちは次のアトラクションへ向かうのだった――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

籠の鳥〜見えない鎖に囚われて✿❦二人の愛から…逃れられない。

クラゲ散歩
恋愛
私。ユリアナ=オリーブ(17)は、自然豊かなオータム国にあるグローパー学院に在籍している。 3年生になって一ヶ月が経ったある日。学院長に呼ばれた。技術と魔術の発展しているフォール国にある。姉妹校のカイト学院に。同じクラスで3年生の男子3名と女子3名(私を含め)。計6名で、半年の交換留学をする事になった。 ユリアナは、気楽な気持ちで留学をしたのだが…まさか学院で…あの二人に会うなんて。これは…仕組まれていたの?幼い頃の記憶。 「早く。早く。逃げなきゃ。誰か〜私を…ここから…。」

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

王宮地味女官、只者じゃねぇ

宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。 しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!? 王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。 訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ―― さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。 「おら、案内させてもらいますけんの」 その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。 王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」 副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」 ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」 そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」 けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。 王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。 訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る―― これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。 ★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。

処理中です...