復讐しようとして上手くいかなかった話

菫野

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縄で縛られ、目も布で覆われた。
縄で縛られるなど初めてで、擦れた手首が痛かった。

しばらく馬車に揺られて連れてこられたのは、どこかの建物だった。布を外された視界はまぶしくて、景色はよくわからなかった。
建物の階段をしばらく降りていくと牢獄が並んでいる空間があり、ときどき呻き声が聞こえてきて震え上がった。
地下の空間は澱んだ臭いがした。
そしてそのうちのひとつに連れて行かれると「ここが貴方の過ごす場所です」と言われて縄を外された。

牢の中には届かないくらい高い位置にある光取りの穴、床に敷かれた薄い布、おそらく排泄用だと思われるおまるしかなかった。
牢獄は廊下に面した部分が鉄格子になっていて人が通れる鉄製の扉が一箇所あるだけだった。呆然としていると僕を連れてきた男が出て行こうとする。

「待って!お前、こんなところに貴族の僕を連れてきていいとでも思っているのか?!」
「それがエリュ様の今の処遇です。沙汰があるまでそちらでお過ごしください」
男は鬱陶しそうに片眉を上げた。

「お前は平民だろう!なぜ僕にここで過ごせと命令する?平民風情が貴族に向かってそんな口をきくなんて!お前の雇い主は躾がなっていない!」
「わたしが貴方に命令しているのではなく、わたしはアシダンセラ伯爵のお言葉を貴方に伝えているのです」

アシダンセラ伯爵?ミルトニア男爵領の隣の?
そいつのせいで僕はこんなところに?
しかし伯爵は男爵のうちより地位が高く、何を言っても無駄だろうと思った。

悔しくて男を睨み上げる。
「いつまで僕はここにいればいい」
1秒でも早くこんなところから出たかった。

男は言った。
「期限は聞いておりません。審問の結果、貴方の罪が軽いと認められたらその日が貴方の出られる日でしょう」

目の前が真っ暗になり、力が抜けて床に膝をつく。
涙を耐えるだけで精一杯だった。

黙った僕を見て、男は出て行ったのだった。


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