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照れながらもじもじとする僕を見て、ようやくエンジュが安心したように目尻を下げた。
「そうか。無理矢理じゃないならいい」
あ、と僕は思い出してついでに教えてもらおうと思った。
「ひとつ教えてください。精通したときに出る白い液体はなんと言うのですか?」
あのあとウィリデ様に聞いてみてもちょっと笑ってはぐらかされてわからず仕舞いだった。
すぐに返事がなくてエンジュを見ると彼の口元は引き攣っていた。
「……そこから?まさか、何も知らないで嫌じゃないとか言ってんのか?」
彼はなんとか言葉を探しているようだったけど、諦めたように頭を振った。
「エリュ、お前には性教育が必要だと執事長に伝えておく」
俺の手に負えないとエンジュがぼやいている。
「あとさ、満更でもなかったなら俺としても安心なんだけど、その様子だと何も知らないところに手を出されたみたいだし。そういうのは良くない。嫌じゃなかったって気持ちが本当に正しいのか、よくよく考えておいて欲しい」
強い視線を受けてとっさに頷いた。
嫌だとは思わなかったけど、と反発したくなったけどエンジュが真剣に言うから黙っていた。
「よそでは使用人を無理矢理手籠にする貴族もいるって聞くけど、ここでそんなことが許されるわけがない。今回のことは執事長にしか言わないし、執事長も旦那様と奥様に報告するだけだろうが、二人とも聞いたら卒倒するだろうな。それくらいのことなんだ。これから、もしも嫌なことをされたら相手がウィリデ様でも抵抗して逃げろ。使用人だからって思わなくて良い。そして逃げたら必ず俺とかに報告すること。これは絶対」
最初に言っておくべきだった、とエンジュがしょげている。
その落ち込んだ姿を見てなんとなくきまりが悪くなった。
「なんにも知らなくてごめんなさい……」
視線を落とす僕に、彼は「誰も教えてこなかったんだろ」と言った。
「お前を家の中に閉じこめて、家にいる連中が何も知らないように育てたんなら、それはエリュにはどうしようもないと思うけどな」
いつの間にか立ち直った彼はさっぱりとした様子でそう言って、水でいっぱいになったバケツと使ったタオルを持ち上げた。
「あ、そうだ。もしエリュがウィリデ様を好きになったとしてもウィリデ様は貴族でエリュは平民。しかも男同士。結婚はできないからできたら恋愛感情は持たない方がエリュのためになる」
恋愛感情はよくわからなかったけど、これは一応言っておかなきゃなって笑ってるエンジュにとりあえず頷いた。
「まあ、また何か相談したいこととか知りたいことがあったら悩む前に聞いてくれ。俺はこのタオルとバケツを片付けてくるよ」
エンジュが部屋を出ると静寂が流れた。
いちばんの悩みはウィリデ様にされたことを思い出すと落ち着かなくなることだったけど、それをエンジュに言うと彼はさらに頭を抱えるのかもと思った。
とりあえず、人に話してすっきりした部分もあってだいぶ気分は落ち着いた。
僕はエンジュが戻ってくるまでに途中だった窓拭きを終わらせておこう、と掃除道具を持ち直して青空を映す窓に向き合った。
「そうか。無理矢理じゃないならいい」
あ、と僕は思い出してついでに教えてもらおうと思った。
「ひとつ教えてください。精通したときに出る白い液体はなんと言うのですか?」
あのあとウィリデ様に聞いてみてもちょっと笑ってはぐらかされてわからず仕舞いだった。
すぐに返事がなくてエンジュを見ると彼の口元は引き攣っていた。
「……そこから?まさか、何も知らないで嫌じゃないとか言ってんのか?」
彼はなんとか言葉を探しているようだったけど、諦めたように頭を振った。
「エリュ、お前には性教育が必要だと執事長に伝えておく」
俺の手に負えないとエンジュがぼやいている。
「あとさ、満更でもなかったなら俺としても安心なんだけど、その様子だと何も知らないところに手を出されたみたいだし。そういうのは良くない。嫌じゃなかったって気持ちが本当に正しいのか、よくよく考えておいて欲しい」
強い視線を受けてとっさに頷いた。
嫌だとは思わなかったけど、と反発したくなったけどエンジュが真剣に言うから黙っていた。
「よそでは使用人を無理矢理手籠にする貴族もいるって聞くけど、ここでそんなことが許されるわけがない。今回のことは執事長にしか言わないし、執事長も旦那様と奥様に報告するだけだろうが、二人とも聞いたら卒倒するだろうな。それくらいのことなんだ。これから、もしも嫌なことをされたら相手がウィリデ様でも抵抗して逃げろ。使用人だからって思わなくて良い。そして逃げたら必ず俺とかに報告すること。これは絶対」
最初に言っておくべきだった、とエンジュがしょげている。
その落ち込んだ姿を見てなんとなくきまりが悪くなった。
「なんにも知らなくてごめんなさい……」
視線を落とす僕に、彼は「誰も教えてこなかったんだろ」と言った。
「お前を家の中に閉じこめて、家にいる連中が何も知らないように育てたんなら、それはエリュにはどうしようもないと思うけどな」
いつの間にか立ち直った彼はさっぱりとした様子でそう言って、水でいっぱいになったバケツと使ったタオルを持ち上げた。
「あ、そうだ。もしエリュがウィリデ様を好きになったとしてもウィリデ様は貴族でエリュは平民。しかも男同士。結婚はできないからできたら恋愛感情は持たない方がエリュのためになる」
恋愛感情はよくわからなかったけど、これは一応言っておかなきゃなって笑ってるエンジュにとりあえず頷いた。
「まあ、また何か相談したいこととか知りたいことがあったら悩む前に聞いてくれ。俺はこのタオルとバケツを片付けてくるよ」
エンジュが部屋を出ると静寂が流れた。
いちばんの悩みはウィリデ様にされたことを思い出すと落ち着かなくなることだったけど、それをエンジュに言うと彼はさらに頭を抱えるのかもと思った。
とりあえず、人に話してすっきりした部分もあってだいぶ気分は落ち着いた。
僕はエンジュが戻ってくるまでに途中だった窓拭きを終わらせておこう、と掃除道具を持ち直して青空を映す窓に向き合った。
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