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エンジュに相談した2日後に奥様からウィリデ様のことで呼び出しがあり、1週間くらい経った頃には執事長直々に性教育とやらをしてもらった。
彼は普段の仕事も多く、こんなことをしている場合ではないのではと思ったし、さすがに恐縮したけど他に適任者が思い当たらなかったと言われたら大人しく教えてもらうほかなかった。
執事長の予定がその日しか空いていなかったので、一日中座学を詰め込むことになった。
「これでひと通り教えることができたと思いますが、またわからないことがあれば私かエンジュに聞きなさい」
「ありがとうございます」
かなり噛み砕いて教えてもらったことはわかったので、自分のためにここまでしてもらったことが嬉しかった。
子供向けのような教本まで探して用意してくれて、これは僕が持っているようにとのことだった。
自室でもらった本を捲っていると確かに今日教わったことが書いてあった。
「家族でも気安く勝手に触ってはいけない部分か」
挨拶で抱きしめたり、頬を合わせたりするのは問題ないけど不必要に他人の身体を触るのは良くないなんて知らなかった。
もしかして、兄様が僕をよく触っていたのも良くないことだったのかも。当時は兄弟だからとなんの疑問にも思わなかったけど、今となっては不自然なくらい接触が多かったような気もする。
トントン、と扉が叩かれてエンジュの声がした。
「エリュ、いるか」
本を置いて扉を開けると彼は僕の机の本を見て、「今日どうだった?」と聞いてきた。
立ち話もなんだし、部屋に入るように言った。
「執事長はとてもわかりやすく教えてくださって、勉強になりました」
「それはよかった。執事長の役職に就く前、教えるのが上手いって評判だったんだ」
エンジュはにこにこと、執事長を自慢するように言った。
彼が椅子に座ったから僕は寝台に腰掛けた。
「旦那様と奥様の反応がどんなだったかも聞いたか?」
「エンジュの言っていた通り、ものすごく衝撃的だったようです」
そこまで驚く旦那様の姿は想像できなかった。
「言ったろ。何にも知らないようなやつに手を出すのはだめなんだよ。想い合ってる同士なら問題ない」
今日それも教えてもらった。
「もしかしてエンジュも執事長に教わったのですか」
先日エンジュから聞いた先輩としての助言も今日聞いたような内容だった。
「そうだ。3つのときに拾われてここに来たからな」
なんでも教えてもらったんだ。と彼は言った。
「幼い頃から苦労をしていたんですね」
いつもさっぱりとした明るい彼にもいろいろあったのだろう。
エンジュは髪を触りながら言った。
「苦労ってほどでもない。よくある話だ。それにここに拾われてからはずっとこんな調子だから全然良い方だな」
こんな調子とはここでの暮らしのことだろう。
ここでは食事も衣類も困らないし、石鹸やタオル類まで備品として与えられる。もちろん給金で好きなものを買って使うこともできる。さらに必要ならエリュやエンジュのように教育も受けられる。早朝から深夜までのような無理な働き方もないし、週に一度の休暇まである。
これが破格の待遇だということは、ここで働いている人や街中の人と関わることで実感した。
野菜を売るおばさんは毎日仕事で休みなんてないと言っていたし、魚を卸に来るおじさんは食事と仕事服は給金から出していると言っていた。ほかにも、「あのお屋敷で働いてるならいい暮らしをしているのね」などと言われることも少なくなく、自分の恵まれた環境を自覚するほかなかった。
彼は普段の仕事も多く、こんなことをしている場合ではないのではと思ったし、さすがに恐縮したけど他に適任者が思い当たらなかったと言われたら大人しく教えてもらうほかなかった。
執事長の予定がその日しか空いていなかったので、一日中座学を詰め込むことになった。
「これでひと通り教えることができたと思いますが、またわからないことがあれば私かエンジュに聞きなさい」
「ありがとうございます」
かなり噛み砕いて教えてもらったことはわかったので、自分のためにここまでしてもらったことが嬉しかった。
子供向けのような教本まで探して用意してくれて、これは僕が持っているようにとのことだった。
自室でもらった本を捲っていると確かに今日教わったことが書いてあった。
「家族でも気安く勝手に触ってはいけない部分か」
挨拶で抱きしめたり、頬を合わせたりするのは問題ないけど不必要に他人の身体を触るのは良くないなんて知らなかった。
もしかして、兄様が僕をよく触っていたのも良くないことだったのかも。当時は兄弟だからとなんの疑問にも思わなかったけど、今となっては不自然なくらい接触が多かったような気もする。
トントン、と扉が叩かれてエンジュの声がした。
「エリュ、いるか」
本を置いて扉を開けると彼は僕の机の本を見て、「今日どうだった?」と聞いてきた。
立ち話もなんだし、部屋に入るように言った。
「執事長はとてもわかりやすく教えてくださって、勉強になりました」
「それはよかった。執事長の役職に就く前、教えるのが上手いって評判だったんだ」
エンジュはにこにこと、執事長を自慢するように言った。
彼が椅子に座ったから僕は寝台に腰掛けた。
「旦那様と奥様の反応がどんなだったかも聞いたか?」
「エンジュの言っていた通り、ものすごく衝撃的だったようです」
そこまで驚く旦那様の姿は想像できなかった。
「言ったろ。何にも知らないようなやつに手を出すのはだめなんだよ。想い合ってる同士なら問題ない」
今日それも教えてもらった。
「もしかしてエンジュも執事長に教わったのですか」
先日エンジュから聞いた先輩としての助言も今日聞いたような内容だった。
「そうだ。3つのときに拾われてここに来たからな」
なんでも教えてもらったんだ。と彼は言った。
「幼い頃から苦労をしていたんですね」
いつもさっぱりとした明るい彼にもいろいろあったのだろう。
エンジュは髪を触りながら言った。
「苦労ってほどでもない。よくある話だ。それにここに拾われてからはずっとこんな調子だから全然良い方だな」
こんな調子とはここでの暮らしのことだろう。
ここでは食事も衣類も困らないし、石鹸やタオル類まで備品として与えられる。もちろん給金で好きなものを買って使うこともできる。さらに必要ならエリュやエンジュのように教育も受けられる。早朝から深夜までのような無理な働き方もないし、週に一度の休暇まである。
これが破格の待遇だということは、ここで働いている人や街中の人と関わることで実感した。
野菜を売るおばさんは毎日仕事で休みなんてないと言っていたし、魚を卸に来るおじさんは食事と仕事服は給金から出していると言っていた。ほかにも、「あのお屋敷で働いてるならいい暮らしをしているのね」などと言われることも少なくなく、自分の恵まれた環境を自覚するほかなかった。
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