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第ニ章 運命の番
四
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拓海と秀也がバーに戻った時、半分開いたドアの隙間からママとヨウ君のいつもの大きすぎるくらいの笑い声が聞こえた。
なんか、ママ。今日調子悪かった?
拓海はその声に疑問を抱きつつも、カウンターの内側に戻ると、誕生日ケーキを箱から取り出し、ロウソクをつけて皆の前に持っていった。
「あら、可愛いロウソクね」
「本当だ! 僕、細長いのしか見た事ない!」
ママとヨウ君はチョコレートケーキの上に飾られた、ローマ数字で二十を表しているロウソクのぽってりとしたフォルムに、興味を示していた。
「火、つけるね」拓海はママから渡されたライターでロウソクに火をつけた。
薄暗い部屋に、オレンジ色の照明と同調する温かい灯り。ドアから秋風が入り込み、火を揺らす。
秀也の誕生日を祝う歌は、バーの外まで聞こえているだろう。ママの野太い声にヨウ君の愉快な声、明るい拓海の声が合わさって、なんとも奇妙な集会だとドアの前を通った人は思うかもしれない。
その中にいる秀也は、嬉しそうに頬を赤らめていて、ロウソクの火を吹くと「ありがとうございます」と照れながら言った。
***
「大丈夫か?」
「……すみません、重たい、ですよね」
「いや、大丈夫」
拓海と秀也の体格差はかなりあって、拓海が秀也を支えているというよりは、秀也が拓海にもたれ掛かっているという方がしっくりくる状態だ。
裏路地から通ればタクシー乗り場が近いため、酔っ払った秀也を運ぶにはその道を通るしかなかった。
まさか、一杯で酔うとは。初めて呑むとは聞いてたけど、ここまで弱いとは思わなかった。
拓海はタクシー乗り場が目に入ると、目を擦っている秀也に教える。
「ほら、もうタクシー乗り場つくぞ、人通りが多いからちゃんとしろ」
歓楽街にはΩが水商売をしているお店が多いため、ふらつく客をタクシーまで連れて行く姿はよくある。しかし、それはβやΩに限ってだ。多くのαはΩに支えられて店から出る事はない。自尊心が許さないのか、αには有権者が多いため週刊誌や名に傷をつけたくないのだろう。
秀也もαだ。しかも、名の知れた大病院の一人息子だ。拓海は先輩として秀也に気を使ってあげた。のにも関わらず、秀也はさらに拓海にもたれ掛かる。
「秀也君? 吐きそう?」と今度は心配する言葉をかける。
秀也は首を降って、身体から離れた。
「先輩はまだ仕事ですか」酒のせいか目を潤ませながら聞いた。
「ああ、ママ一人じゃ大変だからな」
秀也を送ろうと外に出たら、多くの常連客が来店してきた。他のキャストは一時後に出勤してくるため、今バーはママが一人で回している状態だ。
「拓海先輩」そう言って、秀也の片手が流れる手付きで拓海の耳から頭部に移動する。拓海は肩を押され路地裏の壁に押し付けられた。
拓海の顔を隠すように秀也の顔が近づいた。
「しゅう──」と名前を呼ぶ拓海の唇は塞がれた。
拓海の見開いた瞳に映ったのは、ガラスの奥に光る、心臓を射抜くような双眸だった。
なんか、ママ。今日調子悪かった?
拓海はその声に疑問を抱きつつも、カウンターの内側に戻ると、誕生日ケーキを箱から取り出し、ロウソクをつけて皆の前に持っていった。
「あら、可愛いロウソクね」
「本当だ! 僕、細長いのしか見た事ない!」
ママとヨウ君はチョコレートケーキの上に飾られた、ローマ数字で二十を表しているロウソクのぽってりとしたフォルムに、興味を示していた。
「火、つけるね」拓海はママから渡されたライターでロウソクに火をつけた。
薄暗い部屋に、オレンジ色の照明と同調する温かい灯り。ドアから秋風が入り込み、火を揺らす。
秀也の誕生日を祝う歌は、バーの外まで聞こえているだろう。ママの野太い声にヨウ君の愉快な声、明るい拓海の声が合わさって、なんとも奇妙な集会だとドアの前を通った人は思うかもしれない。
その中にいる秀也は、嬉しそうに頬を赤らめていて、ロウソクの火を吹くと「ありがとうございます」と照れながら言った。
***
「大丈夫か?」
「……すみません、重たい、ですよね」
「いや、大丈夫」
拓海と秀也の体格差はかなりあって、拓海が秀也を支えているというよりは、秀也が拓海にもたれ掛かっているという方がしっくりくる状態だ。
裏路地から通ればタクシー乗り場が近いため、酔っ払った秀也を運ぶにはその道を通るしかなかった。
まさか、一杯で酔うとは。初めて呑むとは聞いてたけど、ここまで弱いとは思わなかった。
拓海はタクシー乗り場が目に入ると、目を擦っている秀也に教える。
「ほら、もうタクシー乗り場つくぞ、人通りが多いからちゃんとしろ」
歓楽街にはΩが水商売をしているお店が多いため、ふらつく客をタクシーまで連れて行く姿はよくある。しかし、それはβやΩに限ってだ。多くのαはΩに支えられて店から出る事はない。自尊心が許さないのか、αには有権者が多いため週刊誌や名に傷をつけたくないのだろう。
秀也もαだ。しかも、名の知れた大病院の一人息子だ。拓海は先輩として秀也に気を使ってあげた。のにも関わらず、秀也はさらに拓海にもたれ掛かる。
「秀也君? 吐きそう?」と今度は心配する言葉をかける。
秀也は首を降って、身体から離れた。
「先輩はまだ仕事ですか」酒のせいか目を潤ませながら聞いた。
「ああ、ママ一人じゃ大変だからな」
秀也を送ろうと外に出たら、多くの常連客が来店してきた。他のキャストは一時後に出勤してくるため、今バーはママが一人で回している状態だ。
「拓海先輩」そう言って、秀也の片手が流れる手付きで拓海の耳から頭部に移動する。拓海は肩を押され路地裏の壁に押し付けられた。
拓海の顔を隠すように秀也の顔が近づいた。
「しゅう──」と名前を呼ぶ拓海の唇は塞がれた。
拓海の見開いた瞳に映ったのは、ガラスの奥に光る、心臓を射抜くような双眸だった。
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