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宙を舞う試練と空の門の兆し
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――壁面が音もなく消え去り、視界いっぱいに広がったのは紺碧の空と、果てしなく続く大地の遠景。
螺旋を描く大理石の道は宙に浮き、太陽光を受けた無数の結晶が星屑のように煌めいている。
リゼットは胸の前で鍵を抱え、その淡い翼状の紋章をそっと指先でなぞった。
「ここ…本当に飛べるの?」
声はか細く震えていたが、その言葉に応えるように、カインは真剣な瞳で彼女を見つめる。
「怖くても大丈夫。俺たちなら一緒に――さぁ、行こう」
彼の言葉に背中を押され、リゼットは小さく頷いた。
――遠く、螺旋路の先方に浮かぶ守護者の姿。
淡い光の瞳が、二人の行く手を静かに見守っている。
突如、螺旋路に吹き抜ける風が突風となり、二人の体をぐらりと揺らした。
突風は渦を巻き、足元の縁をすり抜けるように吹き抜ける。
「風の祝福を受けよ。翼は自ら育むもの」
守護者の低い声が空間に響き渡り、その淡い光が螺旋の上方で揺れた。
リゼットはとっさに鍵を胸に抱き寄せ、小声で「助けて…」と願った。
すると鍵の紋章から微かな追い風が生まれ、彼女の背中にそっと力を与えた。
二人は息を合わせ、静かに一歩ずつ前進する。
――次の瞬間、足元の縁が揺らぎ、宙へ飛び出す断絶の区間が姿を現した。
リゼットは思わず後ずさりしそうになったが、カインが背中を強く押した。
「行け! 一緒に飛ぼう!」
その声に応え、二人は腕を大きく広げてその隙間へ身を投じた。
ひんやりとした風が全身を包み、リゼットの体がふわりと浮き上がる。
鍵の紋章が淡い光の翼を羽ばたかせ、追い風に乗って螺旋路の続きが先に浮かび上がる。
カインも歓声をあげつつ、リゼットをしっかりと見据えながら宙を舞った。
「うわあ!」
その声は歓喜と緊張が混ざり合い、二人の間に不思議な一体感を生んだ。
やがて二人は浮遊する結晶片に包まれながら、次の段へ着地した。
そこには銀白の雲海が果てしなく広がり、その向こうに青緑の海と大陸が遠望できる。
見渡す限りの雲海の上、小さな浮遊島がぽつりぽつりと浮かび、それらの先に巨大な円環状の門が霞んで見えた。
「見える…あれが空の門?」
リゼットは息を切らしながら指差す。
カインは肩で息をしつつも地図を取り出し、空の門のシルエットを確認する。
「間違いない。次の鍵は、浮遊島――安息の島だ」
鍵から微かな囁きが聞こえた。
「辿りつけ…」
その声がリゼットの胸に響き、彼女の目にさらに強い決意の光を灯した。
二人は螺旋路の上、再び腕を広げてひらりと飛び越える。
鍵の紋章がふんわりと翼を広げ、風が背中をそっと支える実感に、リゼットは目を輝かせた。
「信じられる…私たちの羽で飛べるなんて!」
カインはその言葉に笑みを返し、リゼットの手をしっかり握った。
「行くぞ。俺たちの旅はまだ始まったばかりだ」
螺旋路の最上部に立つと、そこにそびえ立つ巨大な円環状の門が視界に飛び込んできた。
門の輪郭は眩い光を帯び、風がざわめく。
扉の隙間からは、静寂を破るような低い響きが漏れ聞こえた。
「辿るべきは安息の島。次なる鍵はそこで試される」
守護者の声が最後の宣告を響かせる。
リゼットは鍵を胸に高くかざし、結晶片の雨に目を細めた。
扉の光がゆっくり吸い寄せられるように広がり、その瞬間を二人は息を呑んで見守った。
「行きましょう、私たちの羽で」
彼女はひときわ明るい笑顔を浮かべ、カインと共に門の中へと足を踏み出した。
螺旋を描く大理石の道は宙に浮き、太陽光を受けた無数の結晶が星屑のように煌めいている。
リゼットは胸の前で鍵を抱え、その淡い翼状の紋章をそっと指先でなぞった。
「ここ…本当に飛べるの?」
声はか細く震えていたが、その言葉に応えるように、カインは真剣な瞳で彼女を見つめる。
「怖くても大丈夫。俺たちなら一緒に――さぁ、行こう」
彼の言葉に背中を押され、リゼットは小さく頷いた。
――遠く、螺旋路の先方に浮かぶ守護者の姿。
淡い光の瞳が、二人の行く手を静かに見守っている。
突如、螺旋路に吹き抜ける風が突風となり、二人の体をぐらりと揺らした。
突風は渦を巻き、足元の縁をすり抜けるように吹き抜ける。
「風の祝福を受けよ。翼は自ら育むもの」
守護者の低い声が空間に響き渡り、その淡い光が螺旋の上方で揺れた。
リゼットはとっさに鍵を胸に抱き寄せ、小声で「助けて…」と願った。
すると鍵の紋章から微かな追い風が生まれ、彼女の背中にそっと力を与えた。
二人は息を合わせ、静かに一歩ずつ前進する。
――次の瞬間、足元の縁が揺らぎ、宙へ飛び出す断絶の区間が姿を現した。
リゼットは思わず後ずさりしそうになったが、カインが背中を強く押した。
「行け! 一緒に飛ぼう!」
その声に応え、二人は腕を大きく広げてその隙間へ身を投じた。
ひんやりとした風が全身を包み、リゼットの体がふわりと浮き上がる。
鍵の紋章が淡い光の翼を羽ばたかせ、追い風に乗って螺旋路の続きが先に浮かび上がる。
カインも歓声をあげつつ、リゼットをしっかりと見据えながら宙を舞った。
「うわあ!」
その声は歓喜と緊張が混ざり合い、二人の間に不思議な一体感を生んだ。
やがて二人は浮遊する結晶片に包まれながら、次の段へ着地した。
そこには銀白の雲海が果てしなく広がり、その向こうに青緑の海と大陸が遠望できる。
見渡す限りの雲海の上、小さな浮遊島がぽつりぽつりと浮かび、それらの先に巨大な円環状の門が霞んで見えた。
「見える…あれが空の門?」
リゼットは息を切らしながら指差す。
カインは肩で息をしつつも地図を取り出し、空の門のシルエットを確認する。
「間違いない。次の鍵は、浮遊島――安息の島だ」
鍵から微かな囁きが聞こえた。
「辿りつけ…」
その声がリゼットの胸に響き、彼女の目にさらに強い決意の光を灯した。
二人は螺旋路の上、再び腕を広げてひらりと飛び越える。
鍵の紋章がふんわりと翼を広げ、風が背中をそっと支える実感に、リゼットは目を輝かせた。
「信じられる…私たちの羽で飛べるなんて!」
カインはその言葉に笑みを返し、リゼットの手をしっかり握った。
「行くぞ。俺たちの旅はまだ始まったばかりだ」
螺旋路の最上部に立つと、そこにそびえ立つ巨大な円環状の門が視界に飛び込んできた。
門の輪郭は眩い光を帯び、風がざわめく。
扉の隙間からは、静寂を破るような低い響きが漏れ聞こえた。
「辿るべきは安息の島。次なる鍵はそこで試される」
守護者の声が最後の宣告を響かせる。
リゼットは鍵を胸に高くかざし、結晶片の雨に目を細めた。
扉の光がゆっくり吸い寄せられるように広がり、その瞬間を二人は息を呑んで見守った。
「行きましょう、私たちの羽で」
彼女はひときわ明るい笑顔を浮かべ、カインと共に門の中へと足を踏み出した。
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