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第13話 眩しい兄
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私は、お兄様の執務室に来ていた。
ここで、お兄様に私が知ったことを伝えたのである。
「……それは、本当の話なのかい?」
「ええ、多分、本当の話だと思います」
「そうか……なるほど、なんだか、大変なことになっているようだね」
話を聞き終えて、お兄様はそのように苦笑いした。
突然、このようなことを言われたため、かなり動揺しているようだ。
だが、お兄様がこういう反応をすることはわかっていたことである。お兄様は普通の人なので、このようなことを言われて、すぐに信じたりはしないのだ。
「まあ、ミリティアがそんな嘘をつくような子ではないのは知っているから、多分聞いたというのは本当だろうね」
「え? ええ、本当ですね」
「でも、その内容が真実だとは、正直思えないな……伝説は伝説、僕はそう思いたいね」
少し考えた後、お兄様はそのように結論を出した。
私が、嘘を言っていないことを、お兄様は信じてくれた。だが、その内容までは信用できないようだ。
それは、少し残念である。お兄様なら、信じてくれるのではないか。そう期待していたのが、それは叶わないようだ。
「だけど……」
「え?」
「もし真実だったら、大変だ。僕は、妹が生贄になることを許容できるような人間ではない」
しかし、直後にお兄様はそのようにも述べた。
その時のお兄様の顔は、真剣なものになっていた。たまにしか見ない、彼が本気の時の顔である。
私と違って、お兄様はお姉様に複雑な感情を持っていない。彼は、ただ真っ直ぐに妹としか見ていないのだ。
だからこそ、真剣に今回のことを考えてくれたのだろう。もし、本当なら妹が犠牲になる。そのように考えられる人だから、このような顔ができるのだろう。
それに対して、私は複雑な感情を抱いた。
私は、結局、何がしたいのだろうか。
今まで、私はお姉様が婚約者にならなかった理由を知りたいと思って、行動してきた。理由を知り、納得すること。それが、私の目的でしかなかったのだ。
「ミリティア? どうかしたのかい?」
「いえ、なんでもありません……」
だから、真っ直ぐに妹を助けると結論を出したお兄様を直視できなかった。
私は、話を聞いた時、お姉様を助けようとならなかった。そんな自分が、とても惨めに思えたのである。
私は、いつの間にかお姉様が生贄になることを許容するような人間になっていた。その事実が、胸に突き刺さってくる。
冷たい心を持ったとしても、お姉様が犠牲になっていいなどと思っていいはずがない。彼女にいなくなって欲しいなど、思っていい訳がない。
私の頭の中で、何度も何度もそんな言葉が響いてくる。自身の愚かさに、私は嫌悪感を抱くのだった。
ここで、お兄様に私が知ったことを伝えたのである。
「……それは、本当の話なのかい?」
「ええ、多分、本当の話だと思います」
「そうか……なるほど、なんだか、大変なことになっているようだね」
話を聞き終えて、お兄様はそのように苦笑いした。
突然、このようなことを言われたため、かなり動揺しているようだ。
だが、お兄様がこういう反応をすることはわかっていたことである。お兄様は普通の人なので、このようなことを言われて、すぐに信じたりはしないのだ。
「まあ、ミリティアがそんな嘘をつくような子ではないのは知っているから、多分聞いたというのは本当だろうね」
「え? ええ、本当ですね」
「でも、その内容が真実だとは、正直思えないな……伝説は伝説、僕はそう思いたいね」
少し考えた後、お兄様はそのように結論を出した。
私が、嘘を言っていないことを、お兄様は信じてくれた。だが、その内容までは信用できないようだ。
それは、少し残念である。お兄様なら、信じてくれるのではないか。そう期待していたのが、それは叶わないようだ。
「だけど……」
「え?」
「もし真実だったら、大変だ。僕は、妹が生贄になることを許容できるような人間ではない」
しかし、直後にお兄様はそのようにも述べた。
その時のお兄様の顔は、真剣なものになっていた。たまにしか見ない、彼が本気の時の顔である。
私と違って、お兄様はお姉様に複雑な感情を持っていない。彼は、ただ真っ直ぐに妹としか見ていないのだ。
だからこそ、真剣に今回のことを考えてくれたのだろう。もし、本当なら妹が犠牲になる。そのように考えられる人だから、このような顔ができるのだろう。
それに対して、私は複雑な感情を抱いた。
私は、結局、何がしたいのだろうか。
今まで、私はお姉様が婚約者にならなかった理由を知りたいと思って、行動してきた。理由を知り、納得すること。それが、私の目的でしかなかったのだ。
「ミリティア? どうかしたのかい?」
「いえ、なんでもありません……」
だから、真っ直ぐに妹を助けると結論を出したお兄様を直視できなかった。
私は、話を聞いた時、お姉様を助けようとならなかった。そんな自分が、とても惨めに思えたのである。
私は、いつの間にかお姉様が生贄になることを許容するような人間になっていた。その事実が、胸に突き刺さってくる。
冷たい心を持ったとしても、お姉様が犠牲になっていいなどと思っていいはずがない。彼女にいなくなって欲しいなど、思っていい訳がない。
私の頭の中で、何度も何度もそんな言葉が響いてくる。自身の愚かさに、私は嫌悪感を抱くのだった。
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