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8.不思議な来客

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 私は、アムドラさんとクルネアさんに屋敷を案内してもらいながら騒ぎの原因らしき場所までやって来ていた。
 そこは、伯爵家の屋敷の玄関だ。どうやら、訪ねてきた人物が屋敷が騒がしくなっている原因であるらしい。

「あれは……子供?」

 玄関にいるのは、小さな女の子だった。
 身なりからして、恐らく平民だろうか。この伯爵家の客人としては、あまり適切ではない。
 そんな人物が訪ねてきたからこそ、これ程騒ぎになっているということだろうか。

「まさか……」
「アムドラ様、あの子はもしかして……」
「うん? お二人とも、どうかされましたか?」

 状況をよくわかっていない私と違って、アムドラさんとクルネアさんは彼女が何者であるのかわかっている風だった。
 その反応から、私は先程の話を思い出す。ヴォルダー伯爵には隠し子がいる。もしかして、あそこにいる彼女が、その件の隠し子なのだろうか。

「アムドラ様、丁度いい所に」
「レンバーさん、彼女は一体……」
「いや、庭の整備をしていたら急にあの子が訪ねてきて、自分はヴォルダー伯爵の子供だっていうんですよ」
「やはり、そういうことでしたか……」

 中年の男性と話したアムドラさんは、その表情を少し真剣なものにして玄関の少女の元に向かっていった。
 とりあえず私は、それに同行する。彼女がヴォルダー伯爵の隠し子であるならば、私にも大いに関係があるからだ。

「ゼボルグさん」
「おや、アムドラ様……それに、エリシア様も」

 アムドラさんは、対応していた執事らしき人に話しかけた。
 その執事ゼボルグさんは、少し驚いたような顔をして、私達のことを見ている。アムドラさんと私が一緒に行動していることに、驚いているのだろうか。
 しかし今は、彼と話し合っている場合ではない。今は目の前にいる少女のことを優先するべき時だ。

「あなたはロナティアさん、ですね?」
「はい、私はロナティアです」

 アムドラさんの質問に、少女はとても冷静に答えていた。
 彼女の表情は、とても固い。それは当然だ。平民の少女が、伯爵家を一人で訪ねる。それはどれだけ勇気がいることだろうか。
 その毅然とした態度は、自身を守ろうとする彼女の壁なのかもしれない。

「どうして、あなたがここに?」
「ヴォルダー伯爵に、こちらを訪ねて来るように言われていたからです」
「……なんですって?」

 ロナティアの言葉に、アムドラさんは目を丸めていた。
 確かに、これはおかしな話だ。伯爵は、隠し子への支援を断っていたはずである。そんな彼女を屋敷に呼ぶなんて、意味がわからない。
 ただ、彼女は手紙らしきものを持っているし、嘘を言っている訳ではなさそうだ。一体ヴォルダー伯爵は、何を考えているのだろうか。
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