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15.隠していたのは

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「エリシアさん、どうかされましたか?」
「……少しお聞きしたいことがあって」
「そうですか?」

 私はロナティアとともに、アムドラさんの元に来ていた。
 色々と考えても仕方ないので、本人に何か隠していることがないか聞きに来たのである。
 そんな私に、ロナティアは同行を志願してきた。怯えていたが、彼女もこの屋敷の人々の真意を知りたいと思っているようだ。

「アムドラさん、単刀直入にお聞きします。あなたは、ヴォルダー伯爵の失踪に関わっているのではありませんか?」
「おや……」

 そこで私は、少しかまをかけてみることにした。
 この屋敷にもしも隠し事があるとしたら、その原因は間違いなくあのヴォルダー伯爵だ。
 だから、その伯爵の失踪に関して、この屋敷の人達が何かを隠しているのではないかと思ってしまった。それはできれば、当たって欲しくない予想だ。

「どうしてそのように思われるのですか?」
「色々と違和感があるんです。ヴォルダー伯爵の失踪には……そこで思ったんです。全員が協力したら、伯爵の死も隠蔽できるのではないかと」
「え?」

 私の言葉に反応したのは、ロナティアだった。
 彼女は、かなり驚いている。流石にそんな予想はしていなかったようだ。
 一方で、アムドラさんは左程驚いていない。私としては、彼にこそ驚いて欲しかったのだが。

「エリシアさんは、聡い人ですね……わかりましたか」
「そ、それじゃあ、本当に……」
「ええ、父上は僕が亡き者にしました。皆さんに協力してもらって」

 アムドラさんは、とても冷淡にそう言ってきた。
 優しく穏和な彼とは思えないその表情に、私は少し驚いてしまう。
 しかし彼は、確かに認めた。自らの犯行を自白したのだ。

「ま、まさか、本当に……」
「父上は、自分勝手な人でした。その振る舞いによって、様々な人達に迷惑をかけました。いいえ、そんなレベルではありませんね。父上は皆の人生を滅茶苦茶にしたのです」

 アムドラさんの表情からは、怒りよりも悲しみが伺えた。
 それは、自らが父を手にかけたという悲しみなのだろうか。それとも、ヴォルダー伯爵に人生を滅茶苦茶にされた人達に対する悲しみなのだろうか。

「……思い当たることが、ない訳ではありません。例えば、メイド長とクルネアさんは」
「……ええ、お二人は親子です。クルネアさんの父親は伯爵、つまり彼女は僕の妹にあたる訳です。父上は彼女にもひどいことをしました。それらの積み重なってきた罪に対する罰を、僕は与えたのです」

 アムドラさんの表情は、凛々しいものに変わっていた。
 どうやら彼は自分の行いを悔いてはいないらしい。決意を持って、彼は実行したのだ。自らの父親を、手にかけたのである。
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