顔が良い妹の方が相応しいと婚約破棄したではありませんか。妹が無能だったなんて私の知ったことではありません。

木山楽斗

文字の大きさ
21 / 83

21.得られた成果

しおりを挟む
「武器の発注ミスですか?」
「ああ、百を千だと間違えたようだ」

 お兄様から聞かされた事実に、私とイルヴァド様は顔を見合わせていた。
 ルルメリーナがウェディバー伯爵家で起こしたミス、それはなんとも初歩的なものだった。
 しかし、とても大きなミスである。百を千と多めに発注してしまったのだから、資金的にはかなりの打撃であるだろう。

「なるほど、ルルメリーナ嬢のそういったミスをラヴェルグ様やラスタリア伯爵夫妻は狙っていた訳ですか?」
「もちろんそれもあるが、重要なのはあなたの母親と兄のことだ。今回の件において、二人は真逆のスタンスであるらしい」
「真逆、ですか?」
「あなたの母親はルルメリーナを激しく責めたようだが、あなたの兄はルルメリーナを庇った。二人の間に、対立が生まれた訳だな」
「対立……」

 お兄様の言葉に、イルヴァド様は目を丸めていた。
 アデルバ様とカルメア様の対立、それは彼にとってはかなり驚くべきことであるようだった。
 それはなんとなく、わかるような気がする。私を追い返す時には、あれ程団結していた二人が対立するなんて、少し意外だ。

「珍しいことですね。あの二人が対立するなんて……」
「それが我々がルルメリーナに期待していたことだ」
「そうなのですか?」
「ああ、ルルメリーナはなんと言い表すべきか、男性を惹きつける性質がある。それを利用した仲違いこそが、重要なことだ」

 お兄様は少し表情を歪めて、言葉を発していた。
 恐らく妹に男性を惹きつける性質があるなんて、本当は言いたくないのだろう。
 しかしそれでも、イルヴァド様にはそう伝えるしかなかった。それは残念ながら、事実である訳だし。

「確かに、ルルメリーナ嬢は可愛らしい方ですからね。社交界でも人気であると聞いています。なるほど、兄上はまんまと誑かされているという訳ですか」
「誑かされているかどうかはわからないが、どちらにしてもウェディバー伯爵家が揺れているということは間違いない。それは我々、引いてはあなたにとっても良き知らせであるだろう」
「……そうですね。あの二人に隙ができた。それは重要な事実です」

 イルヴァド様は、お兄様の言葉に力強く頷いた。
 私達の目的から考えると、二人の結束力が弱まっているのは都合が良い。付け入る隙が、できたといえるだろう。

「こちらも動き出しますか?」
「いや、もう少し待つべきだろう。二人の仲違いも、決定的なものではない。今こちらが動き出したら、二人の結束力を強める結果になりかねない。もう少しルルメリーナが成果を出すのを待つとしよう」
「焦るのは禁物、という訳ですね。わかりました。それなら、そうしましょう」

 イルヴァド様は、お兄様からの返答をある程度予測していたのだろう。提案を否定されても、特に動揺したりはしていない。
 お兄様の方も、それはわかっているのだろう。少し嬉しそうに笑みを浮かべていた。
しおりを挟む
感想 36

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

義妹ばかりを溺愛して何もかも奪ったので縁を切らせていただきます。今さら寄生なんて許しません!

ユウ
恋愛
10歳の頃から伯爵家の嫁になるべく厳しい花嫁修業を受け。 貴族院を卒業して伯爵夫人になるべく努力をしていたアリアだったが事あるごと実娘と比べられて来た。 実の娘に勝る者はないと、嫌味を言われ。 嫁でありながら使用人のような扱いに苦しみながらも嫁として口答えをすることなく耐えて来たが限界を感じていた最中、義妹が出戻って来た。 そして告げられたのは。 「娘が帰って来るからでていってくれないかしら」 理不尽な言葉を告げられ精神的なショックを受けながらも泣く泣く家を出ることになった。 …はずだったが。 「やった!自由だ!」 夫や舅は申し訳ない顔をしていたけど、正直我儘放題の姑に我儘で自分を見下してくる義妹と縁を切りたかったので同居解消を喜んでいた。 これで解放されると心の中で両手を上げて喜んだのだが… これまで尽くして来た嫁を放り出した姑を世間は良しとせず。 生活費の負担をしていたのは息子夫婦で使用人を雇う事もできず生活が困窮するのだった。 縁を切ったはずが… 「生活費を負担してちょうだい」 「可愛い妹の為でしょ?」 手のひらを返すのだった。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

邪魔者はどちらでしょう?

風見ゆうみ
恋愛
レモンズ侯爵家の長女である私は、幼い頃に母が私を捨てて駆け落ちしたということで、父や継母、連れ子の弟と腹違いの妹に使用人扱いされていた。 私の境遇に同情してくれる使用人が多く、メゲずに私なりに楽しい日々を過ごしていた。 ある日、そんな私に婚約者ができる。 相手は遊び人で有名な侯爵家の次男だった。 初顔合わせの日、婚約者になったボルバー・ズラン侯爵令息は、彼の恋人だという隣国の公爵夫人を連れてきた。 そこで、私は第二王子のセナ殿下と出会う。 その日から、私の生活は一変して―― ※過去作の改稿版になります。 ※ラブコメパートとシリアスパートが混在します。 ※独特の異世界の世界観で、ご都合主義です。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。

ランプの令嬢は妹の婚約者に溺愛され過ぎている

ユウ
恋愛
銀髪に紫の瞳を持つ伯爵令嬢のフローレンスには社交界の華と呼ばれる絶世の美女の妹がいた。 ジェネットは幼少期の頃に病弱だったので両親から溺愛され甘やかされ育つ。 婚約者ですらジェネットを愛し、婚約破棄を突きつけられてしまう。 そして何もかも奪われ社交界でも醜聞を流され両親に罵倒され没落令嬢として捨てられたフローレンスはジェネットの身代わりとして東南を統べる公爵家の子息、アリシェの婚約者となる。 褐色の肌と黒髪を持つ風貌で口数の少ないアリシェは令嬢からも嫌われていたが、伯爵家の侮辱にも顔色を変えず婚約者の交換を受け入れるのだが…。 大富豪侯爵家に迎えられ、これまでの生活が一変する。 対する伯爵家でフローレンスがいなくなった所為で領地経営が上手くいかず借金まみれとなり、再び婚約者の交換を要求するが… 「お断りいたします」 裏切った婚約者も自分を捨てた家族も拒絶するのだった。

【完結】姉を追い出して当主になった悪女ですが、何か?

堀多 ボルダ
恋愛
「お姉様、このマクレディ伯爵家は私が後を継ぎます。お姉様は邪魔なので今すぐこの家から出ていってください」 両親の急逝後、伯爵家を切り盛りしていた姉を強引に追い出して妹ダリアは当主となった。しかし、それが原因で社交界からは稀代の悪女として嫌われるようになった。 そんな彼女の元を訪ねたのは、婿に来てほしい男ナンバーワンと噂される、社交界で人気の高い幼馴染だった……。 ◆架空の世界にある架空の国が舞台の架空のお話です。 ◆カクヨムにも掲載しています。

完結 婚約破棄をしたいのなら喜んで!

音爽(ネソウ)
恋愛
婚約破棄を免罪符にして毎回責めてくる婚約者。 さすがにウンザリした彼女は受け入れることにした。婚約者に何を言っても、多少の暴言を吐いても彼女は悲し気な顔で赦していたから。 この日もつまらない矜持を剥き出し臍を曲げて「婚約破棄」を言い出した。彼女は我慢ならないと言い出して婚約破棄を受け入れたのだ。 「あぁ……どうしよう、彼女を怒らせてしまった」 実は彼は婚約者であるベルティナ・ルーベンス伯爵令嬢をこよなく愛していた。

婚約者の姉を婚約者にしろと言われたので独立します!

ユウ
恋愛
辺境伯爵次男のユーリには婚約者がいた。 侯爵令嬢の次女アイリスは才女と謡われる努力家で可愛い幼馴染であり、幼少の頃に婚約する事が決まっていた。 そんなある日、長女の婚約話が破談となり、そこで婚約者の入れ替えを命じられてしまうのだったが、婚約お披露目の場で姉との婚約破棄宣言をして、実家からも勘当され国外追放の身となる。 「国外追放となってもアイリス以外は要りません」 国王両陛下がいる中で堂々と婚約破棄宣言をして、アイリスを抱き寄せる。 両家から勘当された二人はそのまま国外追放となりながらも二人は真実の愛を貫き駆け落ちした二人だったが、その背後には意外な人物がいた

処理中です...