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 私とソルバン様は、王城の中庭に来ていた。
 太陽の光も、吹き抜ける風も、とても心地いい。やはり、外に出るのはいいことである。

「楽しそうですね?」
「はい……とても、気持ちいいです」
「それなら良かった。ここまで、連れて来た甲斐がありましたよ」

 私が喜んでいるのを、ソルバン様は見抜いていた。
 しかし、それは当然だ。私自身、とてもはしゃいでいるのを自覚している。恐らく、とてもわかりやすいだろう。

「……そういえば、周りに人がいませんね?」

 そこで、私はそのことを指摘した。
 人の目が気になる私としては、中庭に人がいないことは嬉しいことだ。
 だが、ここまで誰もいないと逆に心配になる。何か起こっているのではないだろうか。

「ああ、それは当然です。中庭は、憩いの場所ですが、あまり人は寄ってきません。僕や他の王族の目がある以上、兵士達は休めませんからね」
「そういうことですか……」

 ソルバン様の言葉で、あまり気にする必要がないことは理解できた。
 確かに、王族の目があるのに、この中庭で休みたいとは思わない。だから、ここに近づいてくるのはソルバン様達王族だけなのだろう。

「まあ、つまり、王族の目はあるということだな」
「え?」
「あっ……」

 そう思っていた私の耳に、男性の声が聞こえてきた。
 私とソルバン様は、ゆっくりとその方向を向く。

「ゼノルス兄さん……」
「よう。ソルバン、こんな所でご令嬢を連れまわすとは、お前も中々やるようになったな?」
「そ、そういうのではないよ。この人は……」
「おっと、事情を説明する必要はないぜ。俺だって、色々と話は聞いている。そのお嬢さんが、隣国で冤罪をかけられたという双子のお姉さんだろう?」

 現れた人物は、ソルバン様のお兄様であるようだ。
 会話からもわかるし、その顔つきからもわかる。二人は、とてもよく似ているのだ。
 ただ、私達程ではない。双子ではないと思うので、それは当然のことだが。

「俺は、ゼノルス。ソルバンの兄で、このレパンディア王国の第二王子だ」
「あ、えっと……ラクリデ王国のアルリナ・ルバルデです」
「ああ、知っているとも。なるほど、あのイルリナ嬢と本当にそっくりだ。やはり、双子の姉というのはここまで似るものなのだな……」

 ゼノルス様は、私の顔を見て、驚いていた。
 そういえば、彼も会食でイルリナと会っているはずなのだ。だから、そっくりな私を見て、そのような反応をしているのだろう。本当に瓜二つなので、双子にあまり慣れていない人が驚くのは当然のことである。
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