54 / 58
54.痣の所有者
しおりを挟む
「ドグマードは、僕の行動を邪魔しようとしていました。それに僕は、なんとか抗おうとしました。ですが、完全にその支配から逃れることはできませんでした。時には彼に従い、時には抗い、そんなことの繰り返しでしたね……」
「大変だったんですね……」
「ええ、まあ……でも、本当に大変だったのは、お二人や龍の方々です。改めて、感謝します。ありがとうございます……僕を助けてくれて。それに、すみませんでした。色々と迷惑をかけてしまって……」
「気にしないでください」
「……ええ、我々は当然のことをしたまでです」
レリクス様は、私とセリティナに笑顔を向けてきた。
その笑みは、憑き物が落ちたかのように明るいものである。
いや、実際に憑き物は落ちたのだ。彼を縛りつけてきた悪しき王は、確かに滅ぼされたのである。
「……ところで、今レリクス様の体にはズグヴェルさんが宿っているんですよね?」
「え? ええ、そうですね……」
『ああ、我はここにいる』
「あっ……」
私の質問に、ズグヴェルさんの声が聞こえてきた。
いつも通り頭に響いてくるその声は、確かに彼の声である。
だが、ズグヴェルさんはもう私の体にいない。
レリクス様の体に移って、そのままなのである。
「えっと……大丈夫なんですか?」
「大丈夫? それは、どういうことですか?」
「いや、なんというか……元々、私の体に宿っていた訳ですし」
「……まあ、別に問題はありませんよ。ドグマードと違い、彼は変なことはしてきませんし……」
『当然だ。あんな奴と一緒にしてもらっては困る』
レリクス様は、このままズグヴェルさんを宿していても問題はないようだ。
それでいいなら、大丈夫なのだろう。なんというか、多少寂しいような気もするが。
「封印に関しては、移そうと思えば、いつでも移せますよ。それは左程難しいことではありませんから」
「エルファリナさんは、ズグヴェルさんに戻って来て欲しいですか?」
「えっと……まあ、戻って来てもらいたいという気持ちがない訳ではありませんが」
『むっ……』
私の言葉に、ズグヴェルさんは少し驚いているようだ。
実の所、私もそれは同じである。まさか自分が、こんな風に考えるとは思っていなかったのである。
あの呪われた痣は、私にとってとても嫌なものだった。それが今はこんな風に戻って来て欲しいと思うようになるなんて、人生というものは不思議なものである。
「わかりました。それなら、お返ししましょう。ズグヴェルさんもそれで構いませんか?」
『……まあ、いいだろう』
「ただ、少しだけ待っていただけませんか? もう少しこの痣を使ってやりたいことがあるのです」
「え?」
そこで、レリクス様は笑みを浮かべた。
それは、かつてと同じような笑みだ。つまり、何かを企んでいるということなのだろう。
「大変だったんですね……」
「ええ、まあ……でも、本当に大変だったのは、お二人や龍の方々です。改めて、感謝します。ありがとうございます……僕を助けてくれて。それに、すみませんでした。色々と迷惑をかけてしまって……」
「気にしないでください」
「……ええ、我々は当然のことをしたまでです」
レリクス様は、私とセリティナに笑顔を向けてきた。
その笑みは、憑き物が落ちたかのように明るいものである。
いや、実際に憑き物は落ちたのだ。彼を縛りつけてきた悪しき王は、確かに滅ぼされたのである。
「……ところで、今レリクス様の体にはズグヴェルさんが宿っているんですよね?」
「え? ええ、そうですね……」
『ああ、我はここにいる』
「あっ……」
私の質問に、ズグヴェルさんの声が聞こえてきた。
いつも通り頭に響いてくるその声は、確かに彼の声である。
だが、ズグヴェルさんはもう私の体にいない。
レリクス様の体に移って、そのままなのである。
「えっと……大丈夫なんですか?」
「大丈夫? それは、どういうことですか?」
「いや、なんというか……元々、私の体に宿っていた訳ですし」
「……まあ、別に問題はありませんよ。ドグマードと違い、彼は変なことはしてきませんし……」
『当然だ。あんな奴と一緒にしてもらっては困る』
レリクス様は、このままズグヴェルさんを宿していても問題はないようだ。
それでいいなら、大丈夫なのだろう。なんというか、多少寂しいような気もするが。
「封印に関しては、移そうと思えば、いつでも移せますよ。それは左程難しいことではありませんから」
「エルファリナさんは、ズグヴェルさんに戻って来て欲しいですか?」
「えっと……まあ、戻って来てもらいたいという気持ちがない訳ではありませんが」
『むっ……』
私の言葉に、ズグヴェルさんは少し驚いているようだ。
実の所、私もそれは同じである。まさか自分が、こんな風に考えるとは思っていなかったのである。
あの呪われた痣は、私にとってとても嫌なものだった。それが今はこんな風に戻って来て欲しいと思うようになるなんて、人生というものは不思議なものである。
「わかりました。それなら、お返ししましょう。ズグヴェルさんもそれで構いませんか?」
『……まあ、いいだろう』
「ただ、少しだけ待っていただけませんか? もう少しこの痣を使ってやりたいことがあるのです」
「え?」
そこで、レリクス様は笑みを浮かべた。
それは、かつてと同じような笑みだ。つまり、何かを企んでいるということなのだろう。
167
あなたにおすすめの小説
【完結】引きこもりが異世界でお飾りの妻になったら「愛する事はない」と言った夫が溺愛してきて鬱陶しい。
千紫万紅
恋愛
男爵令嬢アイリスは15歳の若さで冷徹公爵と噂される男のお飾りの妻になり公爵家の領地に軟禁同然の生活を強いられる事になった。
だがその3年後、冷徹公爵ラファエルに突然王都に呼び出されたアイリスは「女性として愛するつもりは無いと」言っていた冷徹公爵に、「君とはこれから愛し合う夫婦になりたいと」宣言されて。
いやでも、貴方……美人な平民の恋人いませんでしたっけ……?
と、お飾りの妻生活を謳歌していた 引きこもり はとても嫌そうな顔をした。
死を望まれた王女は敵国で白い結婚を望む。「ご安心ください、私もあなたを愛するつもりはありません」
千紫万紅
恋愛
次期女王として王位継承が内定していたフランツェスカ。
だが戦況の悪化を理由に父王に争いの最前線に送られた。
それから一年、命からがら王都へ戻った彼女を待っていたのは労いの言葉ではなく、敵国・シュヴァルツヴァルトの王太子への輿入れ命令。
しかも父王は病弱な異母妹アリーシアを王妃に据え、フランツェスカの婚約者レナードを王にするという。
怒りと絶望の中フランツェスカはかつて敵将であったシュヴァルツヴァルト王太子・フリードのもとへお飾りの妻として嫁ぐことを決意する。
戦地での過去を封じ、王族としての最後の務めを果たすために。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。
ねーさん
恋愛
あ、私、悪役令嬢だ。
クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。
気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる