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8.開かぬドアは
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歳月というものは、時に人を変えるものであるだろう。
特にエリファル様のように、壮絶な体験をしたというなら猶更だ。
何があったのか、詳細はまだ聞けていない。それを踏み込める程に、今の私達の距離は近づいていなかった。
結局昨日の夜は、色々とどたばたとしていたし、エリファル様が早々にかつて自分が使っていた部屋に籠ったことで話はできなかった。
というか私の方も、なんだか疲れてしまっていたのか、アーキス侯爵が場をある程度収めてから部屋で一旦息をつこうと思っていたら、そのまま朝になっていた。
お陰で体は元気なのだが、エリファル様と話せなかったのは痛い。
「……失礼します、ルーティアです」
「……」
とりあえず私は、朝の支度を終えてエリファル様を訪ねていた。
ただ部屋の戸を叩いても、返答は返ってこない。使用人達によると、部屋からは出ていないようなのだが。
「……鍵は締まってる」
ドアノブを回してみると、なんとも固かった。部屋の鍵はきちんと閉められているようだ。ということは、やはり中にいるということだろう。
まだ寝ているということかもしれない。エリファル様はきっと私以上に疲れていたはずだ。
しかし彼の様子からして、居留守を使っているという可能性も充分にある。それはなんとも悲しいことだが。
「エリファル様? 起きているなら戸を開けてください。話がしたいんです」
「……」
「……どうやら無駄なことのようだな」
「え?」
私が呼びかけていると、後ろから声が聞こえてきた。
振り返ってみると、そこにはフェルド様がいる。彼は、なんとも不機嫌そうな顔をしながらドアの方を見つめていた。
「フェルド様? どうしてこちらに?」
「エリファルが戻ってきたという吉報を聞きつけてな……夜通しで引き返してきた所だ。しかしなんとも、無様なものだな。部屋に籠って、ルーティア嬢の言葉にも耳を傾けないとは」
「フェルド様、その、あ、えっと……」
フェルド様は、私に退くように手を動かした。
私はとりあえずそれに従っておく。ただ動いてから思ったのは、あまり良くなかったということである。フェルド様の雰囲気から、何をするつもりかは充分に推察できたから。
「開けないというなら、開けさせてもらう」
「あっ……!」
フェルド様は、その長い足を素早く伸ばしてドアを蹴破った。
それはなんとも見事な様ではあるが、同時に滅茶苦茶だった。あまりにも強引過ぎるその様には、私も呆気に取られてしまう。
ただフェルド様は、まるで何事もなかったかのように部屋の中に入っていく。私はとりあえずそれに追従した。
「エリファル! ……うん?」
「エリファル様? ……あ」
私達が部屋の中に入ると、床に何か大きなものがあった。
それが動き出したことで、私はエリファル様がそこに寝転がっていたことを認識する。立派なベッドがあるというのに、どうしてそんな所にいるのだろうか。
それからエリファル様は、周囲を見渡した。彼の視線は、フェルド様で一旦止まり、それから私を経てドアの方に向く。
「……」
「……」
「……どういうことだ?」
エリファル様の鋭い視線に、フェルド様は目をそらしていた。
エリファル様は居留守を使っているという訳ではなく、本当に眠っていただけということだろう。そんな中ドアを蹴破って入ってこられたら、そんな反応にもなるのも仕方ない。
一方でフェルド様は、なんとも気まずそうだった。エリファル様の変化なども気になっているようではあるが。
「……ドアを蹴破ったことは悪かったな。しかし呼びかけに答えないお前が悪いのだ。ルーティア嬢の声が聞こえなかったのか?」
「……開き直るな」
「ふっ、ここに来るまでに耳にしていたものだが、お前は随分と変わったらしい。なんだその姿は? 鬼にでもなったつもりか?」
「誤魔化そうとするな。このドアをどうしてくれるつもりだ?」
「細かいことをぐちぐちと、昔のお前ならこんなことは笑って許してくれたはずだ」
フェルド様に対して、エリファル様は不服そうだった。
ただ彼の言う通り、昔のエリファル様なら仕方ないくらいで済ませていたかもしれない。
いや、流石に無理だろうか。しばらくこの部屋が使えなくなるような惨状だし。
しかし私は、少し安心していた。エリファル様は思っていたよりも、ずっと元気そうだ。
フェルド様とのやり取りからも、それはわかる。昨日の内に、彼は少なくとも憎しみに囚われるのはやめたということなのだろう。
特にエリファル様のように、壮絶な体験をしたというなら猶更だ。
何があったのか、詳細はまだ聞けていない。それを踏み込める程に、今の私達の距離は近づいていなかった。
結局昨日の夜は、色々とどたばたとしていたし、エリファル様が早々にかつて自分が使っていた部屋に籠ったことで話はできなかった。
というか私の方も、なんだか疲れてしまっていたのか、アーキス侯爵が場をある程度収めてから部屋で一旦息をつこうと思っていたら、そのまま朝になっていた。
お陰で体は元気なのだが、エリファル様と話せなかったのは痛い。
「……失礼します、ルーティアです」
「……」
とりあえず私は、朝の支度を終えてエリファル様を訪ねていた。
ただ部屋の戸を叩いても、返答は返ってこない。使用人達によると、部屋からは出ていないようなのだが。
「……鍵は締まってる」
ドアノブを回してみると、なんとも固かった。部屋の鍵はきちんと閉められているようだ。ということは、やはり中にいるということだろう。
まだ寝ているということかもしれない。エリファル様はきっと私以上に疲れていたはずだ。
しかし彼の様子からして、居留守を使っているという可能性も充分にある。それはなんとも悲しいことだが。
「エリファル様? 起きているなら戸を開けてください。話がしたいんです」
「……」
「……どうやら無駄なことのようだな」
「え?」
私が呼びかけていると、後ろから声が聞こえてきた。
振り返ってみると、そこにはフェルド様がいる。彼は、なんとも不機嫌そうな顔をしながらドアの方を見つめていた。
「フェルド様? どうしてこちらに?」
「エリファルが戻ってきたという吉報を聞きつけてな……夜通しで引き返してきた所だ。しかしなんとも、無様なものだな。部屋に籠って、ルーティア嬢の言葉にも耳を傾けないとは」
「フェルド様、その、あ、えっと……」
フェルド様は、私に退くように手を動かした。
私はとりあえずそれに従っておく。ただ動いてから思ったのは、あまり良くなかったということである。フェルド様の雰囲気から、何をするつもりかは充分に推察できたから。
「開けないというなら、開けさせてもらう」
「あっ……!」
フェルド様は、その長い足を素早く伸ばしてドアを蹴破った。
それはなんとも見事な様ではあるが、同時に滅茶苦茶だった。あまりにも強引過ぎるその様には、私も呆気に取られてしまう。
ただフェルド様は、まるで何事もなかったかのように部屋の中に入っていく。私はとりあえずそれに追従した。
「エリファル! ……うん?」
「エリファル様? ……あ」
私達が部屋の中に入ると、床に何か大きなものがあった。
それが動き出したことで、私はエリファル様がそこに寝転がっていたことを認識する。立派なベッドがあるというのに、どうしてそんな所にいるのだろうか。
それからエリファル様は、周囲を見渡した。彼の視線は、フェルド様で一旦止まり、それから私を経てドアの方に向く。
「……」
「……」
「……どういうことだ?」
エリファル様の鋭い視線に、フェルド様は目をそらしていた。
エリファル様は居留守を使っているという訳ではなく、本当に眠っていただけということだろう。そんな中ドアを蹴破って入ってこられたら、そんな反応にもなるのも仕方ない。
一方でフェルド様は、なんとも気まずそうだった。エリファル様の変化なども気になっているようではあるが。
「……ドアを蹴破ったことは悪かったな。しかし呼びかけに答えないお前が悪いのだ。ルーティア嬢の声が聞こえなかったのか?」
「……開き直るな」
「ふっ、ここに来るまでに耳にしていたものだが、お前は随分と変わったらしい。なんだその姿は? 鬼にでもなったつもりか?」
「誤魔化そうとするな。このドアをどうしてくれるつもりだ?」
「細かいことをぐちぐちと、昔のお前ならこんなことは笑って許してくれたはずだ」
フェルド様に対して、エリファル様は不服そうだった。
ただ彼の言う通り、昔のエリファル様なら仕方ないくらいで済ませていたかもしれない。
いや、流石に無理だろうか。しばらくこの部屋が使えなくなるような惨状だし。
しかし私は、少し安心していた。エリファル様は思っていたよりも、ずっと元気そうだ。
フェルド様とのやり取りからも、それはわかる。昨日の内に、彼は少なくとも憎しみに囚われるのはやめたということなのだろう。
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