「優秀な妹の相手は疲れるので平凡な姉で妥協したい」なんて言われて、受け入れると思っているんですか?

木山楽斗

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14.取り巻き達の証言

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 私は、ゼルート様とともに一年生の教室にやって来ていた。
 ここは、オーディス様が在籍している教室である。ただ、今彼はいない。いない時を見計らって、私達はここに来たのだ。
 その目的は、オーディス様の友人達から彼のことを聞くためである。随分と慕われているように見えたのだが、その真実を確かめてみることにしたのだ。

「オーディス様のことですか?」
「ああ、あの人は……」

 私は、とある一組の男女に話を聞いていた。
 オーディス様の名前を出すと、二人は苦い顔をした。そのことから、二人が彼にそこまで良い感情を持っていないことが伝わってくる。

「えっと、あなたは確かリメルナ嬢のお姉様、なんでしたよね?」
「あ、ええ、そうだけれど……」
「その、あの話は信じない方がいいと思いますよ。多分、出まかせなので……」
「出まかせ……」

 苦い顔をしている男性の言葉に、私とゼルート様は顔を見合わせた。
 この人達が、オーディス様の発言を信じていないというのは、結構意外である。テセネアも含めて、二年生はほぼ皆信じているというのに。

「オーディス様のことを知っている人なら、皆わかります」
「そういうものなの?」
「ええ、オーディス様は……その、侯爵令息ですから、皆慕っている振りをしていますが、あまり良い人ではありませんから。あ、これは本人には言わないでくださいね」
「ええ、それはもちろん」

 女性の方も、かなり辛辣な言葉を発していた。
 しかしそれは理解できる。私にさえあんな態度だったオーディス様が慕われているという方が、むしろおかしな話だったといえる。
 侯爵令息に媚を売りたくなるのは、当然と言えば当然のことだ。いざという時に、それでトレファー侯爵家を味方にできるなら御の字である。

「オーディス様は、虚飾でできています。皆、彼の話は話半分で聞いています。それを吹聴する人なんていません。だから今回の噂がどうして流れたのか、理解できないんです」
「いつもなら、適当に流されてそれで終わりです。皆特別触れようともしません」
「それについては、こちらの事情も関係しているのかも……」

 今回の件は、リメルナが本当につい最近婚約者を得たことによって話が厄介になってしまったのだろうか。
 その事実とオーディス様の虚飾が合わさって、噂として流れてしまったのである。不幸な事故であるとしか言いようがない。

 厄介なのは、オーディス様がそれによって調子づいているということだ。彼を止めなければならない。これ以上、彼などに振り回されてたまるか。
 ロディオン子爵家のためにもリメルナのためにも、私は改めて決意を固めるのだった。
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