勝手に期待しておいて「裏切られた」なんて言わないでください。

木山楽斗

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21.私の想いは

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「……私の記憶が目覚めたのは、裏庭であなた達の会話を聞いた時ね。何故かわからないけれど、私はそれで全てを思い出すことができた」
「……全部聞かれてしまったのですね」
「ええ……」

 私の言葉に、お姉様は弱々しく頷いた。
 私が抱えているお姉様への屈折した想いを本人に知られてしまったというのは、少し気まずいことだった。
 しかしそんな私に、お姉様は笑顔を向けてくる。その笑みには、憂いだとかそういうものは含まれていない。

「あなたがそういう類のことを抱えていることは、なんとなくではあるけれどわかっていたわ」
「そ、そうなのですか?」
「ええ、まあ、私さえいなければ、きっとあなたはお父様やお母様にも評価されていたでしょうし、そう思うのも無理はないわ」
「で、でも、それは逆恨みです」
「そうやって悩んでいる時点で、あなたは良い子だと思うけれどね……結局私は、あなたの立場を変えることなんてできなかった訳だし、非力なものだわ」

 お姉様は、自分のことを卑下していた。
 それによって、私は思い出す。お姉様が、どれ程私のために両親と口論していたかを。
 思えばお姉様は、いつも私を守ろうとしてくれていた。理不尽な立場を変えようとしてくれていた。それがわかっているのに、どうして私は彼女に怒りを向けてしまったのだろうか。
 考えれば考える程に、自分が情けなくなってきた。私はただ、臆病だっただけだ。父と母の元から飛び出した今なら、それがよく理解できる。

「お姉様、そんなことを言わないでください。結局の所、それは私が弱かったというだけです。こうしてお父様やお母様の元から飛び出した今ならわかります。あなたは私にとって、偉大な姉です。尊敬できる目標なのです」
「イルフェリア……」
「お姉様が無事で、本当によかった……どうかこれからも、よろしくお願いします」
「……ええ、よろしくお願いします」

 私の言葉に、お姉様は力強い返答を返してくれた。
 なんというか、お姉様と改めて分かり合えたような気がする。本人と話してやっと、私は自分の中にあったわだかまりを取り払えたのだ。
 そこで私は、ふとレオールさんに目を向ける。すると彼も、笑みを返してくれた。

「それにしても、侯爵家を抜け出してくるなんて大胆な選択をしたわね?」
「え? ええ、まあ、バラルド様との婚約とか、色々とあって……」
「ああ、あのろくでなしとの婚約があなたに引き継がれてしまったのね。それはなんとも、不幸な話だわ」
「ろくでなし、ですか……」

 お姉様は、バラルド様に対してひどく辛辣であった。
 私に彼のことを話さなかったのは、妹に対して愚痴を聞かせたくなかったからなのかもしれない。お姉様の態度に、私はそんなことを思うのだった。
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