勝手に期待しておいて「裏切られた」なんて言わないでください。

木山楽斗

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27.重苦しい雰囲気

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 騎士団の仕事が終わった私は、教会に立ち寄っていた。
 それは最早、日課のようなものになっている。仕事が終わって、お姉様と一緒に帰る。それが私の毎日のルーティンなのだ。
 という訳で教会に来た私は、中に入っていつもと少し違う雰囲気であることに気付いた。なんというか、教会の中は重苦しい雰囲気だったのだ。

「あの……何かあったんですか?」
「あ、イルフェリアさん……」
「い、いらしていたのですね」

 とりあえず私は、近くにいた修道女に話しかけてみた。
 教会の人達とは、何度も訪ねていることによって親しくなっている。故に修道女達の様子が、いつもとは違うことがわかる。
 彼女達の視線は、教会の奥に向いていた。私はその方向をとりあえず見てみる。

「なっ……!」

 そして私は、教会がどうしてこんな雰囲気なのかを理解した。
 そこにいたのは、二人の人物である。一人はお姉様だ。しかしもう一人は、ここにいるはずのない人物である。
 その人物は、ゆっくりとこちらに目を向けてきた。その鋭い視線に、私は少し怯んでしまう。

「イルフェリア、久し振りですね……」
「お、お祖母様……」

 そこにいたのは、私達の祖母であるマーガレットである。
 どうして彼女がここにいるのか、何をしに来たのか、様々な疑問が私の中に湧いてきた。
 ただとりあえず、私はお祖母様の方に歩み寄っていく。逃げる訳にはいかなかった。お姉様を一人にさせるなどいう選択肢はあり得ないからだ。

「お姉様、これは一体どういうことなのでしょうか? 一体、どうしてここにお祖母様が?」
「イルフェリア、どうやらお祖母様はあなたを追いかけてきたみたいなの」
「私を……」

 お姉様の言葉に、私は驚いていた。
 てっきりエルベルト侯爵家は、私のことを諦めたと思っていた。
 しかし、そういう訳ではなかったようだ。つまりお祖母様は、私を連れ戻しに来たということだろうか。

「安心してくださいイルフェリア、私はあなたを連れ戻しに来た訳ではありません。少し様子を見に来たというだけです」
「え?」

 だが、私の予想にお祖母様ははっきりと反論してきた。
 その言葉に、私は再度驚くことになった。連れ戻しに来たのではないのなら、どうしてお祖母様はここに来たのだろうか、その意味がわからなかったのだ。
 そして同時に、私はとあることに気付いた。お祖母様は、先程から震えているのだ。
 その震えを見て、私は思い出すことになった。お祖母様が、ずっとお姉様を探していたということを。
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