使用人の私を虐めていた公爵令嬢は、婚約者の王子にそれが見つかり婚約破棄されました。その後、私は王城で働かせてもらうことになりました。

木山楽斗

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20(ウェリクス視点)

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 私が子供の頃に憧れた王子様。彼女にそう言われて、僕は無性に恥ずかしくなっていた。
 どうしてこんなに照れてしまうのだろう。自分でも不思議なくらい、僕は恥ずかしくなっていたのだ。

「私を助けたくれた時にも、同じことを思っていました」
「え?」
「アルキーナ様の呪縛から、あなたは私を解き放ってくれました。その時にも、同じことを思ったのです。私に手を差し伸べてくれるかっこいい王子様だと……」
「え?」
「……あっ」

 今度は、リメリアさんが照れる番だった。よく考えてみれば、彼女も先程から中々恥ずかしいことを言っている。そのことに、今気づいたのだろう。

「……なんだか、お互いに少しテンションがおかしいようですね」
「ええ、そうみたいです」

 僕達は、事件のせいで気が立っていた。その事件が終わって安心して、少しテンションが狂っているのだろう。
 そうでなければ、こんなにも恥ずかしい空気にはならないはずだ。これは一時的な仕方ないこと。そう思うことにする。

「……ああ、そうだ。あなたには、今後のことを伝えておく必要がありますね」
「今後のこと?」
「ええ、あなたを虐げていた使用人達のことです。彼女達の行動は、悪質という他ありません。そんな者達を雇用しておける程、王城は寛大ではないのです」
「それは、つまり……」
「近々、彼女達は解雇されることになると思います」

 そこで、僕は話を切り替えることにした。
 だが、この話題は間違いだったかもしれない。僕の言葉を聞いて、彼女は少しだけ苦しそうな表情をしたからだ。
 彼女は強い。だが、全てに耐えられる訳ではない。兄上の言っていた通り、きっと今は心の中で複雑な感情を覚えているのだろう。

「あなたのせいではありませんよ。あなたを排除したいなどと願う者達は、どの道淘汰される運命だったはずです。遅かれ早かれ、ぼろを出したでしょうから」
「わかっています……でも、それでも」
「苦しいのですよね……わかっています。あなたのような人は、こういうことにも責任を感じてしまう。それは素晴らしいことだと思います。でも、物事は割り切ることも時には必要なのです。自分を守るということは、人としての当たり前のこと。あなたの行動は、非難されるべきものではありません」
「ウェリクス様……ありがとうございます」

 僕の言葉に、彼女はぎこちない笑みを浮かべていた。
 その表情を見ていると、また勘違いしてしまいそうになる。彼女が守るべき存在だと、そう思ってしまうのだ。
 いや、もしかしたら違うのかもしれない。僕はただ、彼女を守りたいだけなのではないだろうか。
 確か、兄上も言っていた。僕には個人的な感情が入っていると。その意味を、僕は改めてゆっくりと考えるのだった。
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