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 新聞の発表から数日後、私に対する他の貴族の評価が聞こえてくるようになった。
 基本的には、私は哀れな被害者ということになっている。ルグファド様という貴族とは思えない男と婚約することになって、不幸だった。婚約破棄するのは、妥当である。現状、多くの貴族から私はそう思われているようだ。
 もっとも、貴族にも様々な人がいるため、私が悪いという人もいる。どのようなことがあっても、婚約破棄するなんてまともではない。そう思う人もいるようだ。

「まあ、でも、とりあえず、私はそこまで悪い立場ではないようです」
「そうですか……」

 結局、私はそこまで悪い立場ではないということになるだろう。色々とあったが、基本的には被害者として見られているので、それで間違いないはずだ。

「ということは、僕の望みを果たしてもらえるのでしょうか?」
「……ええ」

 ソルガード様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
 私の評価が被害者であるなら、彼やディレイズ公爵家に迷惑はかからないはずである。そのため、私は彼の言葉にやっと頷けるのだ。

「改めて、もう一度言わせてもらいます。エルフィリナ・アルガンテ様、どうか僕と婚約してください」
「ありがとうございます、ソルガード・ディレイズ様。あなたの婚約を、受け入れさせてもらいます」

 彼の手を取ると、少し汗ばんでいた。いや、もしかしたら私の汗かもしれない。
 はっきりとわかることは、お互いに緊張しているということだ。こんなにも緊張しているのに、こんなにも心地いいのは、なんとも不思議なことである。

「えっと……なんだか、恥ずかしいですね。でも、嬉しいです」
「ええ、そうですね……」
「あ、でも、まずはソルガード様のご両親に許可を取らなければなりませんね。それでやっと、初めて婚約者です」
「そのことなんですが……実は、それは問題ないんです」
「え?」

 ソルガード様の言葉に、私は少し驚いた。
 彼のご両親に許可を取る必要がない。それは、どういうことなのだろうか。

「両親には、僕から既に説明をしておきました。事情は全て話して、許可ももらっています」
「そ、そうだったんですね……」
「ええ、勝手なことをしてしまいましたね……」
「い、いえ、こちらとしてはありがたいくらいです……」

 ソルガード様のご両親に許可が得られているのは、私にとってありがたいことだ。それが一番の問題だと思っていたので、今はとても安心している。

「それじゃあ、これからよろしくお願いしますね、ソルガード様」
「ええ、よろしくお願いします」

 こうして、私とソルガード様は無事に結ばれた。
 私の元婚約者の乱心から始まった事件は、解決したのである。
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