私に聖女は荷が重いようなので田舎に帰らせてもらいます。

木山楽斗

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9.穏やかな時間

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 昼食を取ってから、私は散歩に出かけることにした。
 久し振りに村を見て回りたかったのである。そう両親に伝えてから、歩いていると見知った顔が見えて来た。

「ロヴァイド、おじさん、おばさん、こんにちは」
「おお、アフィーリちゃん、久し振りだね」
「大きくなったね……美人になったよねぇ、ロヴァイド」
「まあ、そうかもしれないな……」

 隣の家であるため、ロヴァイドの家族とはこの村で一番仲が良い。私にとって、おじさんとおばさんはもう一人のお父さんやお母さんと言っていいような存在だ。
 幼馴染であるロヴァイドとは、兄妹のような関係といえるだろうか。私にとって、彼は頼りになるお兄さんといった感じだ。

「ところで、どうしたんだい? 家に何かようかな?」
「あ、いえ、そういう訳ではないんです。久し振りに村を見て回ろうと思って」
「おお、そうかい。それならロヴァイド、お前も着いて行ってあげなさい」
「別に俺は構わないが……アフィーリ、同行者は必要か?」
「話し相手がいてくれたら嬉しいけど……」
「そうか。それなら少し待ってくれ」

 おじさんの言葉で、ロヴァイドが私に着いて来てくれることになった。
 一人で散歩もそれはそれで楽しいとは思うが、話し相手がいる方がいい。その相手がロヴァイドならば、きっと楽しい時間になるだろう。

「それじゃあ、父さん、母さん、行ってくるよ」
「ああ、いってらっしゃい」
「二人とも、何もないとは思うけど気を付けてね」
「はい」

 おじさんとおばさんに挨拶してから、私とロヴァイドは歩き始める。
 小さな頃は、二人で村をよく走り回っていた。それをなんとなく思い出す。
 いや、よく考えてみれば、大きくなってからも彼とはこうやって歩くことも多かった。幼馴染であったし、ほとんど一緒にいたのだ。

「こうやって歩くのは久し振りだな……アフィーリが出て行く前になるだろうか」
「うん、そうかもしれない。聖女を目指すようになってからはあんまり帰れなかったし、聖女になってからは帰れなかったからね」
「それだけ大変だったということだろう?」
「そうだね。色々と大変だった。大変過ぎて、帰ってきちゃうくらいには」
「そうか」

 ロヴァイドとゆっくりと話すのは、何年ぶりになるだろうか。
 村を出て行ってから、私は中々帰って来られず、帰って来ても休むばかりだった。そのため、こうして語り合うのは久し振りなのだ。
 考えてみれば、随分と時が経った。お互いに、それなりに大人になったものだ。

「こう言ってはなんだが、俺はお前が帰って来て良かったと思っているよ」
「え?」
「ずっと心配だったからな……」
「そっか……」

 ロヴァイドは、穏やかな笑顔を浮かべていた。本当に、私のことを心配してくれていたのだろう。
 それが嬉しかった。何年経っても、彼は私を大切に思ってくれている。それが伝わってきたからだ。
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