42 / 48
42.立ちはだかるのは
「兄上、お待ちください」
「ルーアス、退け」
ルーアス殿下は、ラメリオ殿下とリヴェンド殿下の間に割って入っていった。
彼は、両手を広げて兄を庇っている。どうやらラメリオ殿下に、刃を振り下ろさせる気はないようだ。
剣を向けられても、ルーアス殿下は動じていない。彼には強靭な精神力があるようだ。少なくとも、その後ろですっかり震えているリヴェンド殿下とは違う。
「……ル、ルーアス、お前はできた弟だ。この僕を助けてくれ。ラメリオ兄上は狂っているんだ」
「……」
リヴェンド殿下は、みっともなく弟であるルーアス殿下に縋りついていた。
その姿というものは、情けないなんてものではない。私も思わず、顔を顰めてしまう。
そんな彼のことを庇うなんて、ルーアス殿下は優しすぎる。その寛大さというものには、驚いてしまう。というか少々、寛大過ぎる気さえする。
「ルーアス、そいつが王家に相応しい男ではないということが、わからない訳でもあるまい」
「もちろん、それはわかっています。別に僕も、リヴェンド兄上のことを庇いたいとは思いません」
「え?」
ルーアス殿下の言葉に、リヴェンド殿下は目を丸めていた。その言葉が、予想外のものであったからだろう。
それは実の所、私も同じだ。彼はてっきり、その優しさからリヴェンド殿下にも同情しているものだとばかり思っていた。しかしどうやら、そうではなかったらしい。
ルーアス殿下は、真っ直ぐにラメリオ殿下の目を見ている。そこに宿っている意思とは、一体どういったものなのだろうか。
「しかし、僕は思うのです。ラメリオ兄上、あなたはこのような所で、こんな者のために手を汚すべき人ではないと……」
「何?」
「あなたは誇り高き王家の……国王を継ぐお方です。そのようなあなたが自ら手を下すような価値が、このリヴェンド兄上にはありません」
ルーアス殿下は、むしろラメリオ殿下のことを心配しているようだった。
その言葉に、私は気付かされる。冷静で芯があると感じられるラメリオ殿下も、血の通った人間であるということを。
彼はきっと、リヴェンド殿下のことを背負うつもりだっただろう。ここで手を下すとはそういうことだ。それは、生半可な覚悟でできることではない。
しかし、その覚悟をするだけの価値がリヴェンド殿下にあるかというと、それは微妙な所だ。
いや、まずないといえるだろう。彼はなんとも矮小で、みっともない人間である。ラメリオ殿下が背負うべき人ではない。これからの王国のためにも、ここで彼に手を振り下ろさせてはならないのだ。
「ルーアス、退け」
ルーアス殿下は、ラメリオ殿下とリヴェンド殿下の間に割って入っていった。
彼は、両手を広げて兄を庇っている。どうやらラメリオ殿下に、刃を振り下ろさせる気はないようだ。
剣を向けられても、ルーアス殿下は動じていない。彼には強靭な精神力があるようだ。少なくとも、その後ろですっかり震えているリヴェンド殿下とは違う。
「……ル、ルーアス、お前はできた弟だ。この僕を助けてくれ。ラメリオ兄上は狂っているんだ」
「……」
リヴェンド殿下は、みっともなく弟であるルーアス殿下に縋りついていた。
その姿というものは、情けないなんてものではない。私も思わず、顔を顰めてしまう。
そんな彼のことを庇うなんて、ルーアス殿下は優しすぎる。その寛大さというものには、驚いてしまう。というか少々、寛大過ぎる気さえする。
「ルーアス、そいつが王家に相応しい男ではないということが、わからない訳でもあるまい」
「もちろん、それはわかっています。別に僕も、リヴェンド兄上のことを庇いたいとは思いません」
「え?」
ルーアス殿下の言葉に、リヴェンド殿下は目を丸めていた。その言葉が、予想外のものであったからだろう。
それは実の所、私も同じだ。彼はてっきり、その優しさからリヴェンド殿下にも同情しているものだとばかり思っていた。しかしどうやら、そうではなかったらしい。
ルーアス殿下は、真っ直ぐにラメリオ殿下の目を見ている。そこに宿っている意思とは、一体どういったものなのだろうか。
「しかし、僕は思うのです。ラメリオ兄上、あなたはこのような所で、こんな者のために手を汚すべき人ではないと……」
「何?」
「あなたは誇り高き王家の……国王を継ぐお方です。そのようなあなたが自ら手を下すような価値が、このリヴェンド兄上にはありません」
ルーアス殿下は、むしろラメリオ殿下のことを心配しているようだった。
その言葉に、私は気付かされる。冷静で芯があると感じられるラメリオ殿下も、血の通った人間であるということを。
彼はきっと、リヴェンド殿下のことを背負うつもりだっただろう。ここで手を下すとはそういうことだ。それは、生半可な覚悟でできることではない。
しかし、その覚悟をするだけの価値がリヴェンド殿下にあるかというと、それは微妙な所だ。
いや、まずないといえるだろう。彼はなんとも矮小で、みっともない人間である。ラメリオ殿下が背負うべき人ではない。これからの王国のためにも、ここで彼に手を振り下ろさせてはならないのだ。
あなたにおすすめの小説
王子様への置き手紙
あおき華
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯
小説家になろうにも掲載しています。
婚約者と妹に裏切られましたが、今さら戻ってこられても困ります
すみひろ
恋愛
王都でも名の知れた侯爵家――レイヴェルト家の長女、エレノアは、その日、自室で静かに紅茶を飲んでいた。
本来なら、婚約者である第二王子アシュレイとの婚約披露会の準備で忙しい時期だった。
だが屋敷の空気は妙にざわついている。
使用人たちは目を合わせようとせず、廊下を歩けばひそひそ声が聞こえる。
「……何かあったのかしら」
嫌な胸騒ぎがした。
私を欠陥品と呼ぶ執事長が鬱陶しいので、侯爵夫人として排除することにしました
菖蒲月(あやめづき)
ファンタジー
「欠陥品に払う敬意など無い」
結婚後もそう言って嫌がらせを続けるのは、侯爵家の執事長。
どうやら私は、幼少期の病が原因で、未だに“子を産めない欠陥品”扱いされているらしい。
……でも。
正式に侯爵夫人となった今、その態度は見過ごせませんわね。
証拠も揃ったことですし、そろそろ排除を始めましょうか。
静かに怒る有能侯爵夫人による、理性的ざまぁ短編。
________________________________
こちらの作品は「小説家になろう」にも投稿しています。
【完結】「家族同然の幼なじみが大事」と言い放った婚約者様、どうぞお幸せに。私は婚約を破棄して自分の道を行きます
シマセイ
恋愛
侯爵令嬢のエルザは、王宮魔導騎士団長である婚約者レオンを愛し、予算管理や物資調達などすべての裏方業務を完璧にこなして彼を支え続けてきた。
しかし、騎士団にとって最も重要な祝賀会の直前。レオンは幼なじみの魔導士リリィの些細な体調不良を優先し、「彼女は君とは違う、特別な存在だ」とエルザを一人残して会場を去ってしまう。
長年の献身が全く報われないことを悟ったエルザは、静かに彼への愛を捨てた。
婚約指輪を置き、騎士団への支援をすべて打ち切った彼女は、自身の類まれなる「実務能力」を武器に、新たな舞台である商業ギルドへと歩み出す。
【完結済】王女に夢中な婚約者様、さようなら 〜自分を取り戻したあとの学園生活は幸せです! 〜
鳴宮野々花
恋愛
王立学園への入学をきっかけに、領地の屋敷から王都のタウンハウスへと引っ越した、ハートリー伯爵家の令嬢ロザリンド。婚約者ルパートとともに始まるはずの学園生活を楽しみにしていた。
けれど現実は、王女殿下のご機嫌を取るための、ルパートからの理不尽な命令の連続。
「かつらと黒縁眼鏡の着用必須」「王女殿下より目立つな」「見目の良い男性、高位貴族の子息らと会話をするな」……。
ルパートから渡された「禁止事項一覧表」に縛られ、ロザリンドは期待とは真逆の、暗黒の学園生活を送ることに。
そんな日々の中での唯一の救いとなったのは、友人となってくれた冷静で聡明な公爵令嬢、ノエリスの存在だった。
学期末、ロザリンドはついにルパートの怒りを買い、婚約破棄を言い渡される。
けれど、深く傷つきながら長期休暇を迎えたロザリンドのもとに届いたのは、兄の友人であり王国騎士団に属する公爵令息クライヴからの婚約の申し出だった。
暗黒の一学期が嘘のように、幸せな長期休暇を過ごしたロザリンド。けれど新学期を迎えると、エメライン王女が接触してきて……。
※10万文字超えそうなので長編に変更します。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
あなたのことなんて、もうどうでもいいです
もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。
元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。
【完結】今さら執着されても困ります
リリー
恋愛
「これから先も、俺が愛するのは彼女だけだ。君と結婚してからも、彼女を手放す気はない」
婚約者・リアムが寝室に連れ込んでいたのは、見知らぬ美しい女だった――
アンドレセン公爵令嬢のユリアナは、「呪われた子」として忌み嫌われながらも、政略結婚によりクロシェード公爵家の嫡男・リアムと婚約し、彼の屋敷に移り住んだ。
いつか家族になれると信じて献身的に尽くすが、リアムの隣にはいつも、彼の幼馴染であり愛人のアリスがいた。
蔑まれ、無視され、愛人の引き立て役として扱われる日々。
ある舞踏会の日、衆前で辱めを受けたユリアナの中で、何かがプツリと切れる。
「わかりました。もう、愛される努力はやめにします」
ユリアナがリアムへの関心を捨て、心を閉ざしたその夜。彼女は庭園で、謎めいた美しい青年・フィンレイと出会う。
彼との出会いが、凍りついていたユリアナの人生を劇的に変えていく。
一方、急に素っ気なくなったユリアナに、リアムは焦りと歪んだ執着を抱き始める。
・全体的に暗い内容です。
・注意喚起を含む章は※を付けています。
婚約者の幼馴染が二十四回目のお詫びに来たので、氷の令嬢は書斎にある人を隠してみました
Megumi
恋愛
四年で二十四回。
婚約者ダミアン・アレクサンドル公爵令息は、幼馴染エレーヌの体調を理由に、クロエとの約束を反故にし続けた。
その回数を社交界に律儀に拡散していたのは——エレーヌ自身だった。
「クロエ様は気高い方だから、何も感じていらっしゃらないわ」
いつしかクロエは「氷のような令嬢」と呼ばれていた。
家族のために、次期公爵夫人としての体面のために。一度でも気を抜けば二度と立てなくなる気がして、ただ一人で己を律し続けた四年間。
ある夜会で、令嬢たちが扇の陰で「二十四回目」と数えるのを聞きながら、クロエはようやく決意する。
——もう、終わりにしましょう。