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14.散歩に出かけて
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「本当に行かないと駄目なのか?」
「もちろんです」
「はあ、面倒だなて……」
私は、ロナード様と散歩に出かけることにした。
なんとなく察していたが、彼はほとんど家から出ない生活を送っていた。ほぼ毎日ベッドで寝転がりながら過ごしていたらしい。
「人間は、偶には太陽の光を浴びるべきですよ」
「そんなことしなくても生きてきたんだけどな……」
「体には悪いですよ?」
「そんなに俺を健康にしたいか?」
「ええ、したいと思っています」
色々と文句を言いながらも、ロナード様は付いて来てくれている。
ロナード様の家の周りには、特に何もない。草原が広がっているだけだ。
「一応、私はあなたの妻になりますからね」
「夫の健康には気を遣ってくれるということか、それは優しいね……」
「皮肉で言っているんですか?」
「いや、そういう訳ではないさ。そう思ってくれるのは、嬉しいと思っているよ」
私の隣で、ロナード様は笑みを浮かべていた。
本当に、嬉しそうに笑っている。それを見ていると、私もなんだか自然と笑ってしまう。
「まあ、こんなに天気もいいんですから、こうやって外に出るのもいいとは思いませんか? 太陽の光が気持ちいいですよ?」
「まあ、それは否定はしないさ。出かけた時は、正直眩しかったけどな……」
「それだけ、太陽の光を浴びていなかったということなのではありませんか?」
「そうかもしれないな……」
ロナード様は少し笑いながら、頭をかいた。
出かける前は色々と言っていた彼だが、どうやらそれなりにこの散歩を楽しんでくれているらしい。それは、私にとっても嬉しかった。
思えば、こんな風に和やかな時間を誰かと過ごすのは、随分と久し振りであるような気もする。立場上、私にはそのように過ごせる人は少なかったからだ。
「よく考えてみれば、俺達は夫婦になるんだよな……」
「ええ、結婚式も多分ないと思いますけど……」
「ははっ、まあそうだろうな……改めてよろしく頼むよ、フェルリナ。俺はこういう人間だから、幸せにできるかはわからないけどな」
「そこは、幸せにすると断言してもらわなければ困ります」
私は、ロナード様が差し出した手を取った。
色々と問題はあるかもしれないが、彼はいい人ではある。根拠はないが、なんとなく彼とは上手くいくような気がする。この婚約は、私にとって幸いなものだったといえるだろう。
「もちろんです」
「はあ、面倒だなて……」
私は、ロナード様と散歩に出かけることにした。
なんとなく察していたが、彼はほとんど家から出ない生活を送っていた。ほぼ毎日ベッドで寝転がりながら過ごしていたらしい。
「人間は、偶には太陽の光を浴びるべきですよ」
「そんなことしなくても生きてきたんだけどな……」
「体には悪いですよ?」
「そんなに俺を健康にしたいか?」
「ええ、したいと思っています」
色々と文句を言いながらも、ロナード様は付いて来てくれている。
ロナード様の家の周りには、特に何もない。草原が広がっているだけだ。
「一応、私はあなたの妻になりますからね」
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「皮肉で言っているんですか?」
「いや、そういう訳ではないさ。そう思ってくれるのは、嬉しいと思っているよ」
私の隣で、ロナード様は笑みを浮かべていた。
本当に、嬉しそうに笑っている。それを見ていると、私もなんだか自然と笑ってしまう。
「まあ、こんなに天気もいいんですから、こうやって外に出るのもいいとは思いませんか? 太陽の光が気持ちいいですよ?」
「まあ、それは否定はしないさ。出かけた時は、正直眩しかったけどな……」
「それだけ、太陽の光を浴びていなかったということなのではありませんか?」
「そうかもしれないな……」
ロナード様は少し笑いながら、頭をかいた。
出かける前は色々と言っていた彼だが、どうやらそれなりにこの散歩を楽しんでくれているらしい。それは、私にとっても嬉しかった。
思えば、こんな風に和やかな時間を誰かと過ごすのは、随分と久し振りであるような気もする。立場上、私にはそのように過ごせる人は少なかったからだ。
「よく考えてみれば、俺達は夫婦になるんだよな……」
「ええ、結婚式も多分ないと思いますけど……」
「ははっ、まあそうだろうな……改めてよろしく頼むよ、フェルリナ。俺はこういう人間だから、幸せにできるかはわからないけどな」
「そこは、幸せにすると断言してもらわなければ困ります」
私は、ロナード様が差し出した手を取った。
色々と問題はあるかもしれないが、彼はいい人ではある。根拠はないが、なんとなく彼とは上手くいくような気がする。この婚約は、私にとって幸いなものだったといえるだろう。
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