25 / 36
25.託されたもの
しおりを挟む
「……ところで、兄上はこれからどうするつもりなんだ」
「私はこれから旅に出るつもりだ」
「旅?」
「ああ、この国を自分の目で見てみたいと思っている」
ロナード様の質問に、レオルード様はそのように答えた。
表向きは亡くなっている以上、彼は王城に留まることは難しい。だから、旅に出るという選択はわからない訳ではない。
だが、きっと単純に、これがレオルード様のやりたかったことなのではないだろうか。彼の笑顔を見ているとそう思う。本当は彼も王位に縛られずに、自由に生きたかったということなのだろう。
「いつ出発するつもりなんだ?」
「今日の内にはもう旅立とうと思っている。あまりここに長居したくはないしな」
「葬儀はどうする?」
「その辺りは、上手くやるように伝えている。エリクシスやクレメリアがいるのだ。特に問題はないだろう」
「二人にも迷惑をかけやがって……というか、その二人は知っているのか?」
「ああ、二人と二人が信頼できる者達しか真の事実は知らない」
「そうか……」
エリクシスさんはこの国の騎士団長であり、クレメリアさんはこの国の聖女だ。そんな二人が味方ならなんでもできるような気がする。
とはいえ、死を偽装するなんてそんなに上手くいくのだろうか。それは少々、不安な所である。
「まあ、それにお前もいる。上手くやれるだろう?」
「それは……まあ、任された以上は考えるしかないが」
「これがばれれば厄介なことになる。上手くやるのだぞ?」
「まったく、どこまでも勝手な兄上だな」
レオルード様の言葉に、ロナード様は笑っていた。
なんだかんだ言いながらも、彼は国王としての役目を受け継ぐつもりのようだ。それを心から嫌がっているようには見えない。いざという時は、そうなる覚悟があったということなのだろうか。
「私は、旅によってこの国をよくしていくつもりだ。旅先でもできる限りのことはするとしよう」
「それは、心強いな……兄上ならそれで本当に国を変えてしまいそうだ」
「無論、それができればいいとは思う。だが、流石にそれは難しいだろう」
「いや、兄上ならやれるさ。弟の俺が言うのだから、間違いない」
「そうか……」
ロナード様の言葉にゆっくりと頷いてから、レオルード様は私に視線を向けた。
彼は、そのままゆっくりと頭を下げてくる。とても綺麗な礼だ。王族にそんなことをされると私も恐縮してしまう。
「フェルリナ嬢、どうか弟のことをよろしくお願いします」
「……はい、わかりました。私も王妃として、できる限りのことはしたいと思っています」
「それならありがたい」
私は、レオルード様からもロナード様のことを任されてしまった。
これは頑張らなければならない。彼の妻として、私も務めを果たすのだ。
「私はこれから旅に出るつもりだ」
「旅?」
「ああ、この国を自分の目で見てみたいと思っている」
ロナード様の質問に、レオルード様はそのように答えた。
表向きは亡くなっている以上、彼は王城に留まることは難しい。だから、旅に出るという選択はわからない訳ではない。
だが、きっと単純に、これがレオルード様のやりたかったことなのではないだろうか。彼の笑顔を見ているとそう思う。本当は彼も王位に縛られずに、自由に生きたかったということなのだろう。
「いつ出発するつもりなんだ?」
「今日の内にはもう旅立とうと思っている。あまりここに長居したくはないしな」
「葬儀はどうする?」
「その辺りは、上手くやるように伝えている。エリクシスやクレメリアがいるのだ。特に問題はないだろう」
「二人にも迷惑をかけやがって……というか、その二人は知っているのか?」
「ああ、二人と二人が信頼できる者達しか真の事実は知らない」
「そうか……」
エリクシスさんはこの国の騎士団長であり、クレメリアさんはこの国の聖女だ。そんな二人が味方ならなんでもできるような気がする。
とはいえ、死を偽装するなんてそんなに上手くいくのだろうか。それは少々、不安な所である。
「まあ、それにお前もいる。上手くやれるだろう?」
「それは……まあ、任された以上は考えるしかないが」
「これがばれれば厄介なことになる。上手くやるのだぞ?」
「まったく、どこまでも勝手な兄上だな」
レオルード様の言葉に、ロナード様は笑っていた。
なんだかんだ言いながらも、彼は国王としての役目を受け継ぐつもりのようだ。それを心から嫌がっているようには見えない。いざという時は、そうなる覚悟があったということなのだろうか。
「私は、旅によってこの国をよくしていくつもりだ。旅先でもできる限りのことはするとしよう」
「それは、心強いな……兄上ならそれで本当に国を変えてしまいそうだ」
「無論、それができればいいとは思う。だが、流石にそれは難しいだろう」
「いや、兄上ならやれるさ。弟の俺が言うのだから、間違いない」
「そうか……」
ロナード様の言葉にゆっくりと頷いてから、レオルード様は私に視線を向けた。
彼は、そのままゆっくりと頭を下げてくる。とても綺麗な礼だ。王族にそんなことをされると私も恐縮してしまう。
「フェルリナ嬢、どうか弟のことをよろしくお願いします」
「……はい、わかりました。私も王妃として、できる限りのことはしたいと思っています」
「それならありがたい」
私は、レオルード様からもロナード様のことを任されてしまった。
これは頑張らなければならない。彼の妻として、私も務めを果たすのだ。
2
あなたにおすすめの小説
あなたとの縁を切らせてもらいます
しろねこ。
恋愛
婚約解消の話が婚約者の口から出たから改めて考えた。
彼と私はどうなるべきか。
彼の気持ちは私になく、私も彼に対して思う事は無くなった。お互いに惹かれていないならば、そして納得しているならば、もういいのではないか。
「あなたとの縁を切らせてください」
あくまでも自分のけじめの為にその言葉を伝えた。
新しい道を歩みたくて言った事だけれど、どうもそこから彼の人生が転落し始めたようで……。
さらりと読める長さです、お読み頂けると嬉しいです( ˘ω˘ )
小説家になろうさん、カクヨムさん、ノベルアップ+さんにも投稿しています。
婚約破棄寸前、私に何をお望みですか?
みこと。
恋愛
男爵令嬢マチルダが現れてから、王子ベイジルとセシリアの仲はこじれるばかり。
婚約破棄も時間の問題かと危ぶまれる中、ある日王宮から、公爵家のセシリアに呼び出しがかかる。
なんとベイジルが王家の禁術を用い、過去の自分と精神を入れ替えたという。
(つまり今目の前にいる十八歳の王子の中身は、八歳の、私と仲が良かった頃の殿下?)
ベイジルの真意とは。そしてセシリアとの関係はどうなる?
※他サイトにも掲載しています。
婚約破棄はこちらからお願いしたいのですが、創造スキルの何がいけないのでしょう?
ゆずこしょう
恋愛
「本日でメレナーデ・バイヤーとは婚約破棄し、オレリー・カシスとの婚約をこの場で発表する。」
カルーア国の建国祭最終日の夜会で大事な話があると集められた貴族たちを前にミル・カルーア王太子はメレアーデにむかって婚約破棄を言い渡した。
異母姉の身代わりにされて大国の公妾へと堕とされた姫は王太子を愛してしまったので逃げます。えっ?番?番ってなんですか?執着番は逃さない
降魔 鬼灯
恋愛
やかな異母姉ジュリアンナが大国エスメラルダ留学から帰って来た。どうも留学中にやらかしたらしく、罪人として修道女になるか、隠居したエスメラルダの先代王の公妾として生きるかを迫られていた。
しかし、ジュリアンナに弱い父王と側妃は、亡くなった正妃の娘アリアを替え玉として差し出すことにした。
粗末な馬車に乗って罪人としてエスメラルダに向かうアリアは道中ジュリアンナに恨みを持つものに襲われそうになる。
危機一髪、助けに来た王太子に番として攫われ溺愛されるのだか、番の単語の意味をわからないアリアは公妾として抱かれていると誤解していて……。
すれ違う2人の想いは?
【完】嫁き遅れの伯爵令嬢は逃げられ公爵に熱愛される
えとう蜜夏
恋愛
リリエラは母を亡くし弟の養育や領地の執務の手伝いをしていて貴族令嬢としての適齢期をやや逃してしまっていた。ところが弟の成人と婚約を機に家を追い出されることになり、住み込みの働き口を探していたところ教会のシスターから公爵との契約婚を勧められた。
お相手は公爵家当主となったばかりで、さらに彼は婚約者に立て続けに逃げられるといういわくつきの物件だったのだ。
少し辛辣なところがあるもののお人好しでお節介なリリエラに公爵も心惹かれていて……。
22.4.7女性向けホットランキングに入っておりました。ありがとうございます 22.4.9.9位,4.10.5位,4.11.3位,4.12.2位
Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.
ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)
【完結】瑠璃色の薬草師
シマセイ
恋愛
瑠璃色の瞳を持つ公爵夫人アリアドネは、信じていた夫と親友の裏切りによって全てを奪われ、雨の夜に屋敷を追放される。
絶望の淵で彼女が見出したのは、忘れかけていた薬草への深い知識と、薬師としての秘めたる才能だった。
持ち前の気丈さと聡明さで困難を乗り越え、新たな街で薬草師として人々の信頼を得ていくアリアドネ。
しかし、胸に刻まれた裏切りの傷と復讐の誓いは消えない。
これは、偽りの愛に裁きを下し、真実の幸福と自らの手で築き上げる未来を掴むため、一人の女性が力強く再生していく物語。
離婚します!~王妃の地位を捨てて、苦しむ人達を助けてたら……?!~
琴葉悠
恋愛
エイリーンは聖女にしてローグ王国王妃。
だったが、夫であるボーフォートが自分がいない間に女性といちゃついている事実に耐えきれず、また異世界からきた若い女ともいちゃついていると言うことを聞き、離婚を宣言、紙を書いて一人荒廃しているという国「真祖の国」へと向かう。
実際荒廃している「真祖の国」を目の当たりにして決意をする。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる