嫌われ者の王弟殿下には、私がお似合いなのでしょう? 彼が王になったからといって今更離婚しろなんて言わないでください。

木山楽斗

文字の大きさ
26 / 36

26.国王としての彼

しおりを挟む
「……兄上は、本当にどうしようもない奴だな」
「そうですね……正直、あまり擁護することはできませんね」

 レオルード様が王城から去った後、ロナード様はため息をついた。
 その心情は理解できる。それはため息だってつきたくなるだろう。

「エリクシス、お前は全て知っていたんだよな? どうして、こんな馬鹿げた提案を受け入れたんだよ」
「……申し訳ありませんでした。レオルード様は、一度言い出したら聞かないもので」
「だからといって、俺に全部を押し付けるなんて、ひどいんじゃないか?」
「その罪は償うつもりです」

 ロナード様は、エリクシスさんに文句を言っていた。
 作戦に協力していた彼は、当然全てを知っていたということになる。だから、ロナード様には文句の一つくらい言う権利はあるだろう。
 とはいえ、エリクシスさんはとても申し訳なさそうにしている。真面目で知られる騎士団長だ。やはり、レオルード様の行動には色々と思う所があるのだろう。

「というか、兄上を止めらなかったお前に聞いておきたいんだが、もしも俺が同じことをしようとしたら、どうするつもりなんだ?」
「ロナード様はそのようなことはしません」
「……何?」
「レオルード様は、ああ見えてとても自由な方です。王族としての意識など、それ程ないと思います。一方で、ロナード様はとても真面目な方です。王族としての役目を投げ出すような方ではありません」
「褒めても何も出ないぞ」

 エリクシスさんの言葉に、ロナード様は再びため息をついた。
 あの騎士団長から、ここまで信頼されているなんてロナード様はやはりすごい人だ。
 とはいえ、私は既に彼の内面を知っている。だから、左程驚きはない。ロナード様は、口では色々と言うが、本当は真面目な人なのだ。

「お前とクレメリア、他数名がこの事実を知っているんだったな?」
「ええ、その通りです」
「葬儀の予定とか、そういうものは全部任せても問題ないのか?」
「もちろんです。全て手配は済ませています」
「はあ……それなら、葬儀が終わるまでに俺がやるべきことはなんだ?」
「国王としての仕事などがあります。正式な就任式はまだですが、誰かがその役目を担わなければなりません」
「面倒だな……」

 ロナード様は、ゆっくりと頭をかいた。
 しかし、次に顔を上げた時に彼は真剣な顔になっていた。これが、国王としての彼の顔なのだろう。
 かっこいいとそう思った。きっと私の夫は、その役目を全うするだろう。偉大なる国王として。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

あなたとの縁を切らせてもらいます

しろねこ。
恋愛
婚約解消の話が婚約者の口から出たから改めて考えた。 彼と私はどうなるべきか。 彼の気持ちは私になく、私も彼に対して思う事は無くなった。お互いに惹かれていないならば、そして納得しているならば、もういいのではないか。 「あなたとの縁を切らせてください」 あくまでも自分のけじめの為にその言葉を伝えた。 新しい道を歩みたくて言った事だけれど、どうもそこから彼の人生が転落し始めたようで……。 さらりと読める長さです、お読み頂けると嬉しいです( ˘ω˘ ) 小説家になろうさん、カクヨムさん、ノベルアップ+さんにも投稿しています。

婚約破棄寸前、私に何をお望みですか?

みこと。
恋愛
男爵令嬢マチルダが現れてから、王子ベイジルとセシリアの仲はこじれるばかり。 婚約破棄も時間の問題かと危ぶまれる中、ある日王宮から、公爵家のセシリアに呼び出しがかかる。 なんとベイジルが王家の禁術を用い、過去の自分と精神を入れ替えたという。 (つまり今目の前にいる十八歳の王子の中身は、八歳の、私と仲が良かった頃の殿下?) ベイジルの真意とは。そしてセシリアとの関係はどうなる? ※他サイトにも掲載しています。

婚約破棄はこちらからお願いしたいのですが、創造スキルの何がいけないのでしょう?

ゆずこしょう
恋愛
「本日でメレナーデ・バイヤーとは婚約破棄し、オレリー・カシスとの婚約をこの場で発表する。」 カルーア国の建国祭最終日の夜会で大事な話があると集められた貴族たちを前にミル・カルーア王太子はメレアーデにむかって婚約破棄を言い渡した。

【完結】その人が好きなんですね?なるほど。愚かな人、あなたには本当に何も見えていないんですね。

新川ねこ
恋愛
ざまぁありの令嬢もの短編集です。 1作品数話(5000文字程度)の予定です。

異母姉の身代わりにされて大国の公妾へと堕とされた姫は王太子を愛してしまったので逃げます。えっ?番?番ってなんですか?執着番は逃さない

降魔 鬼灯
恋愛
やかな異母姉ジュリアンナが大国エスメラルダ留学から帰って来た。どうも留学中にやらかしたらしく、罪人として修道女になるか、隠居したエスメラルダの先代王の公妾として生きるかを迫られていた。 しかし、ジュリアンナに弱い父王と側妃は、亡くなった正妃の娘アリアを替え玉として差し出すことにした。 粗末な馬車に乗って罪人としてエスメラルダに向かうアリアは道中ジュリアンナに恨みを持つものに襲われそうになる。 危機一髪、助けに来た王太子に番として攫われ溺愛されるのだか、番の単語の意味をわからないアリアは公妾として抱かれていると誤解していて……。 すれ違う2人の想いは?

【完】嫁き遅れの伯爵令嬢は逃げられ公爵に熱愛される

えとう蜜夏
恋愛
 リリエラは母を亡くし弟の養育や領地の執務の手伝いをしていて貴族令嬢としての適齢期をやや逃してしまっていた。ところが弟の成人と婚約を機に家を追い出されることになり、住み込みの働き口を探していたところ教会のシスターから公爵との契約婚を勧められた。  お相手は公爵家当主となったばかりで、さらに彼は婚約者に立て続けに逃げられるといういわくつきの物件だったのだ。  少し辛辣なところがあるもののお人好しでお節介なリリエラに公爵も心惹かれていて……。  22.4.7女性向けホットランキングに入っておりました。ありがとうございます 22.4.9.9位,4.10.5位,4.11.3位,4.12.2位  Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.  ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

【完結】瑠璃色の薬草師

シマセイ
恋愛
瑠璃色の瞳を持つ公爵夫人アリアドネは、信じていた夫と親友の裏切りによって全てを奪われ、雨の夜に屋敷を追放される。 絶望の淵で彼女が見出したのは、忘れかけていた薬草への深い知識と、薬師としての秘めたる才能だった。 持ち前の気丈さと聡明さで困難を乗り越え、新たな街で薬草師として人々の信頼を得ていくアリアドネ。 しかし、胸に刻まれた裏切りの傷と復讐の誓いは消えない。 これは、偽りの愛に裁きを下し、真実の幸福と自らの手で築き上げる未来を掴むため、一人の女性が力強く再生していく物語。

離婚します!~王妃の地位を捨てて、苦しむ人達を助けてたら……?!~

琴葉悠
恋愛
エイリーンは聖女にしてローグ王国王妃。 だったが、夫であるボーフォートが自分がいない間に女性といちゃついている事実に耐えきれず、また異世界からきた若い女ともいちゃついていると言うことを聞き、離婚を宣言、紙を書いて一人荒廃しているという国「真祖の国」へと向かう。 実際荒廃している「真祖の国」を目の当たりにして決意をする。

処理中です...