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4.落ち着くべき時
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私はシェリダン様ともに、ディレイル伯爵家の屋敷の客室にいた。
レヴォード様が戻って来るまでは、とりあえずここで待機だ。使用人に言づけてあるので、多分話が終わったら彼もここに来てくれるはずである。
「この家の住人ではない俺達が勝手に部屋を使うというのは、あまり良くないことであるとも思えるが、今は緊急事態だ。細かいことには目を瞑ってもらうとしよう」
「シェリダン様、それは……」
「紅茶を手配しておいた。俺はともかく、あなたは落ち着く必要があるだろう。当然のことではあるが、心穏やかではあるまい」
シェリダン様は、そう言って紅茶を差し出してくれた。
これは確かに、私にとってはありがたいものである。ロンベルト様にイネリアを紹介されてから、私はずっと動揺していた。一度紅茶でも飲んで、心を落ち着かせておいた方が、これからのためにも良いだろう。
「お気遣い、感謝致します」
「気にする必要などはない。単純に、俺が紅茶を飲みたかったというだけでもあるからな」
「紅茶はお好きですか?」
「少なくとも嫌いではないといえる。ただ特別好きという訳ではないな」
シェリダン様は、そう言いながら紅茶を飲んでいた。
私もとりあえず、紅茶に口をつける。するとそれだけで心が少し落ち着いた。我ながら単純な話ではあるが、効果がすぐに出てきたようだ。
「はあ……」
「……随分と疲れていたようだな?」
「え? あ、その、すみません。だらしない声を出してしまいました」
すっかりと気が抜けてしまった私は、思わず大きなため息をついてしまった。
淑女として、これはとても恥ずかしいことである。シェリダン様の前であるというのに、それを忘れて随分と情けない声を出してしまったといえる。
「気にする必要はない。あなたの心情は理解しているつもりだ。いや、それは流石に傲慢というものか」
「いえ、そのようなことはありません。私は充分に理解してもらえていると思っています」
シェリダン様は、気遣いができる人だと思った。
この場に彼がいたことは、私にとっては幸福なことだといえるだろう。この状況で一人きりで待っていたら、押し潰されていたかもしれない。
「シェリダン様がいてくれて、本当に助かりました。ありがとうございます」
「俺の存在など、些細なものだ。感謝などは必要ない。それよりもあなたは、今後のことについて今の内に考えておくべきだ。恐らく、厄介なことになるだろうからな」
シェリダン様の忠告は、きちんと受け止めておかなければならないものだろう。
これから、事態が好転するなんて楽観的に考えることはできない。何が起こってもいいように、覚悟を決めておくべきだろう。
レヴォード様が戻って来るまでは、とりあえずここで待機だ。使用人に言づけてあるので、多分話が終わったら彼もここに来てくれるはずである。
「この家の住人ではない俺達が勝手に部屋を使うというのは、あまり良くないことであるとも思えるが、今は緊急事態だ。細かいことには目を瞑ってもらうとしよう」
「シェリダン様、それは……」
「紅茶を手配しておいた。俺はともかく、あなたは落ち着く必要があるだろう。当然のことではあるが、心穏やかではあるまい」
シェリダン様は、そう言って紅茶を差し出してくれた。
これは確かに、私にとってはありがたいものである。ロンベルト様にイネリアを紹介されてから、私はずっと動揺していた。一度紅茶でも飲んで、心を落ち着かせておいた方が、これからのためにも良いだろう。
「お気遣い、感謝致します」
「気にする必要などはない。単純に、俺が紅茶を飲みたかったというだけでもあるからな」
「紅茶はお好きですか?」
「少なくとも嫌いではないといえる。ただ特別好きという訳ではないな」
シェリダン様は、そう言いながら紅茶を飲んでいた。
私もとりあえず、紅茶に口をつける。するとそれだけで心が少し落ち着いた。我ながら単純な話ではあるが、効果がすぐに出てきたようだ。
「はあ……」
「……随分と疲れていたようだな?」
「え? あ、その、すみません。だらしない声を出してしまいました」
すっかりと気が抜けてしまった私は、思わず大きなため息をついてしまった。
淑女として、これはとても恥ずかしいことである。シェリダン様の前であるというのに、それを忘れて随分と情けない声を出してしまったといえる。
「気にする必要はない。あなたの心情は理解しているつもりだ。いや、それは流石に傲慢というものか」
「いえ、そのようなことはありません。私は充分に理解してもらえていると思っています」
シェリダン様は、気遣いができる人だと思った。
この場に彼がいたことは、私にとっては幸福なことだといえるだろう。この状況で一人きりで待っていたら、押し潰されていたかもしれない。
「シェリダン様がいてくれて、本当に助かりました。ありがとうございます」
「俺の存在など、些細なものだ。感謝などは必要ない。それよりもあなたは、今後のことについて今の内に考えておくべきだ。恐らく、厄介なことになるだろうからな」
シェリダン様の忠告は、きちんと受け止めておかなければならないものだろう。
これから、事態が好転するなんて楽観的に考えることはできない。何が起こってもいいように、覚悟を決めておくべきだろう。
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