妹が私に言う「悪役令嬢」がなんのことだかさっぱりわかりません。

木山楽斗

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12.母の推測

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 お母様から話を聞き終えた私は、自室に戻って考えることになった。
 メルティアに何が起こったのか、それは非常に難しい問題だった。お母様も、そこまで自信がありそうではなかったような気はする。

『例えば、私が死ぬ夢を見ていた、とかかもしれないわね。あの子の中では、私は故人になっているはずだった。それでミレティアとの間に壁を作っているということは……』
『私がお母様のことを……ということですか?』
『あまり考えたくはないことだけれど、そうなのかもしれないわ』

 この私がお母様を害することなんて、あり得ないことだ。
 しかし、夢で見る可能性がないとは言い切れない。夢というものは、不可思議なものだ。自分が望んでないようなことでも、起こってしまう。
 頭を打って気を失っている間に夢を見るかは、よくわからない。ただ、お母様の予測はそれなりにしっくりとくるものだ。

『しかも夢というなら、本人はそのことを覚えていないかもしれませんよね。もしかして、深層心理に刷り込まれているとか……』
『あまりネガティブに考えるものではないと思うけれど、そもそも私の予測が合っているのかどうかも、わからない訳だし』
『……そうですね。少し動揺してしまいました』

 メルティアの深層心理にその事実が刻まれているとしたら、それを取り除くにはどうすれば良いのだろうか。
 私はお母様と、そのことについても話し合った。その結果出た結論は、少しずつ慣らしていくしかないというものである。時間以外に、解決する方法はないのかもしれなかった。

「……尻込みしていても、仕方ないわよね」

 お母様の所に行く前まで、私はメルティアと話そうと思っていた。
 しかし今は、それを躊躇してしまっている。結局の所、私はメルティアと向き合うのが怖いのだ。
 だけど、そこで私はアレイグの言葉を思い出した。メルティアのことを侮ってはいけない。今の私の憂いを、彼女は悟るだろう。それは妹を傷つけることになる。

「私は姉なのだから、それではいけない。アレイグのように誇り高く生きなければならない……」

 今のメレティアと話すことが、正しいことなのかどうかはわからない。
 ただ話してみなければ、わからないこともある。結局の所、イフェールの論もお母様の論も、推測でしかないのだから。
 重要なのは、妹と分かり合うことだ。怖がらず話をしよう。私達は姉妹だ。それを今一度、この胸に刻みつけるとしよう。

「まあ、今日はもう遅いから明日ということにはなるけれど……」

 色々と悩んでいたせいで、今はとても話せるような時間ではなかった。
 とりあえず今日は休んで、明日はすぐに行動を開始しよう。そう思って私は、なんとか眠りにつくのだった。
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