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18.姉として
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リノとメルティアのことは、三人以外の近しい人達には打ち明けておいた。
そこで初めて判明したことではあるが、リノが知っているゲームの世界では、お母様は亡くなっているらしい。それも、メルティアが生まれた時に。
そのことについて、お母様は心当たりすらないという。出産の際に問題があったそうだが、こちらの世界ではそういったものはなかったらしい。
「そういった違いが、私とあなたの関係にも影響していたのかしらね?」
「……どうなのでしょうか? 私は、お姉様がそれで変わるとは思いません」
「私もそう思いたいのだけれどね」
ゲームの世界の私は、一体どうして妹を虐げていたのだろうか。
それは私からしてみれば、まったく持って理解できないことである。一体どうして、可愛い妹を加害するのだろうか。
「……そのことについては、順序が逆なのかもしれません」
「それは……どういうこと?」
「ミレティア様……お姉様が違うからこそ、お母様は生きているのかもしれません。なんとなく、そう思うんです。お姉様の違いが運命を変えたって」
「……そうだとしたら、嬉しいわね」
リノの予測が、合っているかどうかはわからない。
だけれど、私は姉として恥じない存在になりたいと思っている。だから彼女の予測通りなら、嬉しい所だ。
「所で私は、ゲームの世界ではアレイグと婚約しているのよね?」
「あ、はい。そうですよ? ……うーん、まあ、こちらの世界でも仲良くしていますからね……あ、いやゲームの世界では仲が悪かったんですけれど」
「……でもなんというか、アレイグとそういう関係にはなれないような気がするわね。もちろん、気は合うのだけれど」
そこで私は、ゲームの世界の事情を思い出していた。
それは別に、こちらの世界でも無関係なことではない。お父様と伯父様の仲が良いため、それらは実現する可能性があることなのだ。
「それなら、イフェールはどうですか? 彼とも結構気が合うと思うのですが」
「そうね。アレイグよりはイフェールの方が、まだそういった可能性を想像できるかしら?」
「そうですか。それは良かったです」
「良かった?」
「あ、いえ、なんでもありません。そうだよね、リノ……あ、あはは」
メルティアの言葉に対して、リノは苦笑いを浮かべていた。
それは一体、どういうことなのだろうか。私にはよくわからない。
「まあ、婚約のことも重要だけれど、それよりも前にあなた達のことをなんとかしないとね」
「なんとか、ですか?」
「ええ、二人とも私の大切な妹だもの。必ずあなた達を二人生かしてみせるわ。もう一つの肉体を作り出してみせる」
「それはすごいことですけれど、本当にできるのでしょうか? ……まあ、お姉様なら本当になんとかしそうですけどね」
私の言葉に、リノは困惑してメルティアは笑顔を返してくれた。
その対照的な反応に、私は笑みを浮かべる。二人の妹は、中々に正反対なのかもしれない。
何はともあれ、私は必ずやり遂げてみせる。幸いにも、心強い協力者達も得られていることだし、きっと大丈夫だろう。
これからどんな困難が待ち受けていようとも、私はそれを乗り越えていく。なぜなら私は、姉なのだから。
END
そこで初めて判明したことではあるが、リノが知っているゲームの世界では、お母様は亡くなっているらしい。それも、メルティアが生まれた時に。
そのことについて、お母様は心当たりすらないという。出産の際に問題があったそうだが、こちらの世界ではそういったものはなかったらしい。
「そういった違いが、私とあなたの関係にも影響していたのかしらね?」
「……どうなのでしょうか? 私は、お姉様がそれで変わるとは思いません」
「私もそう思いたいのだけれどね」
ゲームの世界の私は、一体どうして妹を虐げていたのだろうか。
それは私からしてみれば、まったく持って理解できないことである。一体どうして、可愛い妹を加害するのだろうか。
「……そのことについては、順序が逆なのかもしれません」
「それは……どういうこと?」
「ミレティア様……お姉様が違うからこそ、お母様は生きているのかもしれません。なんとなく、そう思うんです。お姉様の違いが運命を変えたって」
「……そうだとしたら、嬉しいわね」
リノの予測が、合っているかどうかはわからない。
だけれど、私は姉として恥じない存在になりたいと思っている。だから彼女の予測通りなら、嬉しい所だ。
「所で私は、ゲームの世界ではアレイグと婚約しているのよね?」
「あ、はい。そうですよ? ……うーん、まあ、こちらの世界でも仲良くしていますからね……あ、いやゲームの世界では仲が悪かったんですけれど」
「……でもなんというか、アレイグとそういう関係にはなれないような気がするわね。もちろん、気は合うのだけれど」
そこで私は、ゲームの世界の事情を思い出していた。
それは別に、こちらの世界でも無関係なことではない。お父様と伯父様の仲が良いため、それらは実現する可能性があることなのだ。
「それなら、イフェールはどうですか? 彼とも結構気が合うと思うのですが」
「そうね。アレイグよりはイフェールの方が、まだそういった可能性を想像できるかしら?」
「そうですか。それは良かったです」
「良かった?」
「あ、いえ、なんでもありません。そうだよね、リノ……あ、あはは」
メルティアの言葉に対して、リノは苦笑いを浮かべていた。
それは一体、どういうことなのだろうか。私にはよくわからない。
「まあ、婚約のことも重要だけれど、それよりも前にあなた達のことをなんとかしないとね」
「なんとか、ですか?」
「ええ、二人とも私の大切な妹だもの。必ずあなた達を二人生かしてみせるわ。もう一つの肉体を作り出してみせる」
「それはすごいことですけれど、本当にできるのでしょうか? ……まあ、お姉様なら本当になんとかしそうですけどね」
私の言葉に、リノは困惑してメルティアは笑顔を返してくれた。
その対照的な反応に、私は笑みを浮かべる。二人の妹は、中々に正反対なのかもしれない。
何はともあれ、私は必ずやり遂げてみせる。幸いにも、心強い協力者達も得られていることだし、きっと大丈夫だろう。
これからどんな困難が待ち受けていようとも、私はそれを乗り越えていく。なぜなら私は、姉なのだから。
END
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