聖女の代わりがいくらでもいるなら、私がやめても構いませんよね?

木山楽斗

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 私は、とりあえず家に戻って来ていた。
 王都に向かうのは、明日からになった。流石に、色々とあって疲れたため、体を休める時間を作ることにしたのだ。

「なるほど、本当に色々なことがあったみたいだね……」
「ええ……まさか、そんなことになっているとは驚きだわ」

 事情を説明した後、お父さんとお母さんはそのように呟いていた。
 二人は、そもそも私が聖女をやめたことすら知らなかった。そのことだけでも驚くべきことだが、さらに現聖女が機能していないと言われたのだ。これで、驚かないという方が無理である。

「それで、私は明日から王都に向かおうと思っているんだ。色々と疲れてやめてしまったけど、今思えば少し衝動的だったと思う。もう少し、周りのことを考えておけばよかった。そういう後悔があるから、私はビクトンを止めたいと思う」
「そうかい……」
「あなたが行きたいなら、行けばいいと思うわ……」

 私が王都に行くと言っても、両親は止めなかった。
 二人も、もうわかっているのだろう。私が固く決意をしているということを。

「でも、危ないことはしないで欲しいな」
「身の安全を一番に考えるのよ」
「大丈夫、多分、そんなに危ないことにはならないと思うし」

 王都に向かってから、私はなんとかしてビクトンを止めるつもりだ。
 そうするためには、彼の父に直談判するのが早いだろう。色々と周りが見えていないような所もあるが、国王様は賢明な方だ。私が話せば、きっとビクトンを止めてくれるだろう。
 問題は、彼がそれを止めてくるかもしれないということである。だが、それもそこまで気にする必要がないだろう。
 なぜなら、私は一度聖女をやめている身だからだ。そんな私に、ビクトンが注意しているとは思えない。恐らく、聖女だった時よりも簡単に国王様に話を通せるはずである。

「まあ、レイグス君も一緒なら問題ないかな?」
「ええ、彼はとても頼りになるものね」
「うん、存分に頼らせてもらうつもりだよ」
「あら? そういう所に遠慮はないのね」
「ははっ……なんだか、どこかで見たことがあるなあ……」

 それに、今回はレイグスも一緒だった。
 彼は、とても頼りになる。困ったことがあったら、きっと解決してくれるだろう。
 そもそも、心情的に一人よりも二人の方が気楽だ。王都で聖女の仕事をしていた時に比べて、私の心はとても軽い。それだけで、とても安全性は増すだろう。

「さて、そういうことなら、早く寝ないといけないわね……夕食を作るから、それまでは休んで、食べた後はすぐに寝る準備ね」
「うん、そうさせてもらうね」
「あなた、少し手伝ってくれる? なるべく、早く作りたいし」
「そう言うと思っていたよ」

 お母さんに言われた通り、今日はしっかりと休んで、明日に備えるべきだ。
 こうして、私は久し振りの実家で体を休めるのだった。
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