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5.国王の決断

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「なるほど、状況はよくわかりました。レオニア殿、申し訳ありません。愚息はどうやら、思っていた以上に愚かなようです」

 私の説明を聞いた国王様は、レオニア様に向かってそのように言った。
 国王様は、特に動揺している様子がない。その様子に、私は少し驚いていた。
 しかしながら、私はすぐに理解した。国王様は、ランバス様の父親である。彼のことは、ある程度わかっていたということなのかもしれない。

「彼の態度は、正直言って目に余ります。こういうことは言いたくありませんが、我々の同盟を快く思っていない者はこちらの国にも多くいます。血気盛んな達にあれを聞かれたら、血が流れる可能性まである」
「この際正直に申しますが、ランバスのことは私も目に余ると思っていました。その態度を改めるようにいつも言っていたのですが……しかしながら、それはどうも無理なようですね。私もあれのことを諦めざるを得ないようです」

 国王様もレオニア様も、淡々と話をしていた。
 レオニア様はともかく、国王様は自分の息子の話なのだが、とても冷たいような気がした。
 ただそれはきっと、国を治める者としての顔なのだろう。平和のためになら、息子をも切り捨てる。国王様は、そんな立派な王様であるということなのかもしれない。

「しかしながら、どうするつもりなのですか?」
「ランバスには、しばらくの間修練の旅に出てもらうことにします」
「修練の旅?」

 国王様の口から出た言葉に、レオニア様は目を丸めていた。
 それは恐らく、国王様が何を言っているのかわかっていないのだろう。
 それを理解している私は、思わず固まっていた。国王様の発言は、とても厳しいものだったからだ。

「レオニア殿は、我が国に伝わる修練場をご存じありませんか?」
「いいえ……それは私が聞いてもよろしいことなのでしょうか?」
「他国にも知れ渡っていることですから、問題はありません。この国には、修練の穴という場所があるのです」
「ほう?」
「その穴は、修行僧などが己の精神と肉体を研ぎ澄ませるために入る場所です。一度入ると、一年間は戻って来られません。穴の中は不思議な魔力が渦巻いており、様々な環境で一年間を過ごすことになるのです」

 修練の穴という場所は、私も聞いたことがあった。
 その場所は、とても過酷な場所であると聞いている。一年後に帰って来られるかどうかすら、わからない程だという。
 その穴に、息子を入れるということは国王様にとってはとても厳しい処置である。ただ同時に、それは息子を思っての処置ともいえなくはない。

「つまりあなたは、息子の更正をその場所で果たそうとしているのですね?」
「ええ、そのつもりです。あそこに入った悪人が、更生して立派な人間になったという事例は少なくはありません。もしかしたらランバスも、まともになって帰って来るかもしれません。そうならなければ、どの道あれは切り捨てざるを得ません」
「なるほど……」

 ランバス様がこれからも生きていくためには、それに賭けるしかない。国王様の言葉からは、それが伝わってきた。
 こうして私のかつての婚約者は、非常に手痛いしっぺ返しを受けることになったのだった。
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