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8.重大な決断

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 実家に戻った私は、自室にて考えていた。
 レオニア様からされた提案、それはとんでもないことだった。それを受け入れるかどうかは、正直かなり迷っている。

『実の所、この婚約はローティア第一王女にもたらされていた話なのですが、どうやら彼女は私と婚約するのは難しいようですからね……』
『そ、そうなのですか? まさか、ランバス様のように何か問題が?』
『いいえ、彼女は獣人に対して何かしらの偏見を持っていたりする訳ではありません。ただ、猫が苦手らしいんです。なんでも、昔噛まれたとかで……』
『猫……』

 彼からの婚約の提案は、第一王女が駄目だったためにもたらされたものだ。
 それはつまり、この国を背負う大役であることを意味している。この提案を受け入れた瞬間から、私は二つの国の和平のために注力することになるのだ。
 貴族であるため、ある程度の責任を背負うことは覚悟していた。しかしながら、ここまでの大事となると、そう簡単に割り切ることはできそうにない。

『トラウマということですか……』
『ええ、彼女に悪気はないのだと思います。まあ、そういったことに関しては我々も多かれ少なかれありますからね。例えば、シマウマの獣人などは我ら獅子の獣人に対して本能的に恐れています。もちろん、そういったものを越えた関係もありますが……』
『なるほど……』

 他国で暮らすというだけで、一大事である。それに加えて、今回は行き先が獣人の国だ。人間とは異なる種族の元に嫁ぐのは、かなり大変なことだろう。
 果たして私は、あちらの国で上手くやれるのだろうか。正直な所、あまり自信はない。

『……話は大体理解することができた。色々と大変だったようだな?』
『ええ、突然こんなことになってしまって、申し訳ありません。お父様……』
『気にすることはない。私は、お前の選択を尊重するつもりだ……故に今回の婚約も、お前に決定権を委ねよう。行きたくないと思うなら、この国に残ればいい。その後のことは、私がなんとかしよう』
『……ありがとうございます』
『言っておくが、王家との婚約を破棄した引け目などで決める必要はないぞ? 今回の件は、この国にとって重要なことだ。できないと思うなら、引き下がる方がいい。しっかりと考えて、結論を出すのだ』

 お父様の言葉を思い出しながら、私はゆっくりと体を起こした。
 もしも行くなら、私は覚悟をしなければならない。鏡に映る自分を見ながら、私はそれについてじっくりと考えるのだった。
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