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14.個人を判断するために

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 隣国であるアルバラス王国での生活は、祖国とそこまで異なるものという訳でもなかった。
 多少の文化の違いはあっても、獣人達はやはり人間に近い生活を送っている。それを私は、理解することができていた。
 そんな生活の中で一番困っているのは、獣人の見分けがあまりつかないということである。男女の違いは流石にわかるが、同性だと似すぎていてあまり見分けがつかない。

「そうはいっても、レオニア様のことはわかるようになりましたよ?」
「おや、そうですか?」
「はい。でも、本当に中々見分けがつかなくて……情けない話ではあるのですが」
「まあ、仕方ないことでしょう。私だって、人間の輪に入ってすぐに見分けるということは難しいですからね」

 私はその悩みを、レオニア様に相談していた。
 彼が私が何か悩んでいるのではないかと心配してきたため、思い切って相談してみたのだ。
 すると、レオニア様は特に怒ることもなく真摯に応えてくれた。それは私にとって、とてもありがたいことである。

「というか、我々獣人も見た目で判断しているという訳ではないのかもしれませんね」
「え?」
「我々には、匂いや気配といったものを感じ取れる力があります。そういう見た目以外のパーソナリティから、判断しているのだと思います」
「ああ、なるほど……まあ、それに関しては私も同じではありますね。レオニア様の匂いは、もう覚えましたから」

 レオニア様のことを判断できるようになったのは、彼特有の匂いを覚えているからだ。
 見た目が似ている獣人でも、匂いや雰囲気は違う。やはりそういった部分から、個人を判断するべきなのだろうか。

「私の匂いですか……人間からすると、どのように感じるものなのですか?」
「そう言われると、なんというか答えにくいですね。えっと、ですね。レオニア様の匂いはなんというか……男らしい匂いというか」
「ふむ……」
「ほ、他に言い方はありませんね……そんな感じです」

 レオニア様に本人の匂いを伝えながら、私は無性に恥ずかしくなっていた。
 こういうことは、多分本人に言うことではないと思う。いや、獣人同士なら普通なのだろうか。人間よりも色々な匂いを感じ取れるようだし、そういうことなのかもしれない。

「なるほど、フェリティア嬢からは花のような匂いがしますね。心地いい匂いだと思います」
「そ、そうですか……」
「なんだか安心する匂いです。そういう部分にも、私は惹かれたのかもしれませんね……」
「な、なるほど……」

 レオニア様は、尚も匂いの話を続けていた。
 こういう文化の違いは、やはりあるかもしれない。彼との会話に、私はそんなことを思うのだった。
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