「自分より優秀な部下はいらない」と国を追い出されました。それから隣国で大成した私に「戻って来て欲しい」なんてよく言えましたね?

木山楽斗

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1.救いの手

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 ゆっくりと揺れる馬車の中で、私はある一人の男性を見ていた。
 端正な顔立ちに、柔和な笑みを浮かべる彼を見れば、誰だって好青年という言葉が浮かんでくるはずだ。
 ただ、彼はただの紳士という訳ではない。一国を背負う立場にある人なのだ。

「驚きました。まさか、私に救いの手が差し伸べられるなんて……」
「救いの手、ですか。少し大袈裟なような気はしますね。あなたなら、この帰らずの森でも簡単に抜けられるのではありませんか?」
「森を抜けるのは、確かにそれ程難しいことではありません。ただ、私は罪人の身、森を抜けた所で、受け入れてもらえる国がありませんから」

 偉大なるフォルード・ラディオン第二王子は、私の言葉に苦笑いを浮かべていた。
 彼は、私が置かれている立場をよく理解している。よって、そんな表情しか浮かべられなくなっているのだろう。

「正直言って、腹立たしい限りです。あなたのような優秀な方をよもや罪人として、国から追い出すなんて、考えられない所業です」
「そう言っていただけるのは、ありがたいですね。今回の件に関しては、私も怒りを覚えていますから」
「……もっとも、エパイル王国がそのような判断をしたおかげで、我が国は貴重な人材を確保できた訳ですからね」
「それは……」

 フォルード殿下は、別に私のことを慈善事業で助けた訳ではない。その事実は、認識しているつもりだ。
 ただ、彼はきっと悪い人ではない。もしも私と同じように誰かが不当に国から追放された場合、普通に怒りを感じていそうだ。
 しかし、私のように才能を持つ者でなければ、助けることは難しいのだろう。彼は立場上、気軽に動くことができない。第二王子とは、そういう存在だ。

「今一度確認しておきますが、あなたにはラディオン王国に貢献してもらいます。それは、絶対的な条件です」
「ええ、もちろんです。助けていただけるのですから、むしろそれは当然の責務とさえ思っています」
「エパイル王国に対して、不利なことをさせるかもしれません」
「理解しています。それについては気が引ける面もありますが、割り切ります。幸か不幸か、私には身寄りがありません。その辺りについて、容赦や情けは切り捨てられます」
「そうですか……」

 フォルード殿下の質問に対して、私ははきはきと答えた。
 彼にとっては嬉しい言葉を返したつもりだが、反応は悪い。やはり人が良いのだろう。もしかしたら私以上に、私の裏切りを気にしているのかもしれない。

 しかし私からすると、本当に割り切れることなのだ。
 あの国であった出来事を考えれば、その結論はむしろ自然とさえいえる。
 エパイル王国は、私を追い出した。色々な事情はあるが、それは揺るがない事実なのだ。
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