自分勝手なあなたよりも、偽りの聖女として追放された私の方が支持されているようですね。

木山楽斗

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1.偽りの聖女として

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「偽りの聖女アラティアよ。お前にはこの国から出て行ってもらう」

 王太子であるダルキス殿下は、高らかにそう宣言した。
 彼の隣には、ドナテル伯爵家の令嬢であるティスリアがいる。彼女は私の後を継いで、聖女になった者だ。
 いや、それは正確ではないかもしれない。なぜなら私が聖女を下りることになった原因は、そもそも彼女にあるのだから。

「よくも、我を欺いていたものだ。その手腕に関しては、賞賛に値するといっても過言ではない。だが、お前は間違えたのだ。今回の罰は過ぎたる欲望を持った報いだと思え」

 ダルキス殿下は、私に対して下卑た笑みを向けてきた。
 恐らく彼も、ティスリアとグルなのだろう。今回の件は、二人が共謀して起こしたことであると、私は予測している。

「ダルキス殿下、一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「うん? なんだ? 今の俺は機嫌がいい。一つくらいなら、答えてやろうか?」
「国王様の容体は、いかがなのでしょうか?」
「……父上のことか」

 私の質問に対して、ダルキス殿下は少し表情を歪めた。
 それは彼にとって、聞かれたくない質問だったからだろう。
 しかし彼は、すぐに元の下卑た笑みを取り戻す。実の父親のことだというのにそういった表情を浮かべられるこの王子は、とても冷たい人間であるだろう。

「心配はない。もうじき楽になるとも」
「楽になる……それは」
「ああ、変な意味ではないさ。ただ、父上もそろそろ限界ということなのだろうな。俺が後を継いで、安心させてやるとしよう」

 前国王であるドルダンは、とても偉大なる王であった。
 彼が健在であるなら、このような事態は起きなかっただろう。
 そんな彼が最近寝込んでいるのも、この二人が何かしたからだ。それがわかっていながら何もできない自分がもどかしい。

「ダルキス殿下、もうよろしいではございませんか?」
「む?」
「罪人の言葉にも耳を傾けるあなたは立派ではありますが、彼女に関しては時間の無駄ですよ。平民の分際で、聖女を偽ったこの不届き者を、さっさと追い出してしまいましょう」
「まあ、そうだな。おい、その女を連れていけ」

 ダルキス殿下は、ゆっくりと手を上げた。
 すると私の周りに、兵士が現れる。これで話は、終わりということだろう。もう少し聞きたいことはあるのだが、今の私には従うことしかできない。

「ふふ、いい気味です」
「まったくだ。これでこのドラール王国に巣くうネズミを、また一匹処理することができた」

 そんな私に対して、ティスリアとダルキス殿下は下卑た笑みを浮かべていた。
 彼らはきっと、これからこの国でその権力を使って好き勝手するのだろう。それはなんとも、悲しきことである。
 しかし、一平民でしかない私にはこの状況を覆せる程の力もない。結局私は、彼らの策略の通り、追放されるしかないのである。
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