1 / 20
1.偽りの聖女として
しおりを挟む
「偽りの聖女アラティアよ。お前にはこの国から出て行ってもらう」
王太子であるダルキス殿下は、高らかにそう宣言した。
彼の隣には、ドナテル伯爵家の令嬢であるティスリアがいる。彼女は私の後を継いで、聖女になった者だ。
いや、それは正確ではないかもしれない。なぜなら私が聖女を下りることになった原因は、そもそも彼女にあるのだから。
「よくも、我を欺いていたものだ。その手腕に関しては、賞賛に値するといっても過言ではない。だが、お前は間違えたのだ。今回の罰は過ぎたる欲望を持った報いだと思え」
ダルキス殿下は、私に対して下卑た笑みを向けてきた。
恐らく彼も、ティスリアとグルなのだろう。今回の件は、二人が共謀して起こしたことであると、私は予測している。
「ダルキス殿下、一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「うん? なんだ? 今の俺は機嫌がいい。一つくらいなら、答えてやろうか?」
「国王様の容体は、いかがなのでしょうか?」
「……父上のことか」
私の質問に対して、ダルキス殿下は少し表情を歪めた。
それは彼にとって、聞かれたくない質問だったからだろう。
しかし彼は、すぐに元の下卑た笑みを取り戻す。実の父親のことだというのにそういった表情を浮かべられるこの王子は、とても冷たい人間であるだろう。
「心配はない。もうじき楽になるとも」
「楽になる……それは」
「ああ、変な意味ではないさ。ただ、父上もそろそろ限界ということなのだろうな。俺が後を継いで、安心させてやるとしよう」
前国王であるドルダンは、とても偉大なる王であった。
彼が健在であるなら、このような事態は起きなかっただろう。
そんな彼が最近寝込んでいるのも、この二人が何かしたからだ。それがわかっていながら何もできない自分がもどかしい。
「ダルキス殿下、もうよろしいではございませんか?」
「む?」
「罪人の言葉にも耳を傾けるあなたは立派ではありますが、彼女に関しては時間の無駄ですよ。平民の分際で、聖女を偽ったこの不届き者を、さっさと追い出してしまいましょう」
「まあ、そうだな。おい、その女を連れていけ」
ダルキス殿下は、ゆっくりと手を上げた。
すると私の周りに、兵士が現れる。これで話は、終わりということだろう。もう少し聞きたいことはあるのだが、今の私には従うことしかできない。
「ふふ、いい気味です」
「まったくだ。これでこのドラール王国に巣くうネズミを、また一匹処理することができた」
そんな私に対して、ティスリアとダルキス殿下は下卑た笑みを浮かべていた。
彼らはきっと、これからこの国でその権力を使って好き勝手するのだろう。それはなんとも、悲しきことである。
しかし、一平民でしかない私にはこの状況を覆せる程の力もない。結局私は、彼らの策略の通り、追放されるしかないのである。
王太子であるダルキス殿下は、高らかにそう宣言した。
彼の隣には、ドナテル伯爵家の令嬢であるティスリアがいる。彼女は私の後を継いで、聖女になった者だ。
いや、それは正確ではないかもしれない。なぜなら私が聖女を下りることになった原因は、そもそも彼女にあるのだから。
「よくも、我を欺いていたものだ。その手腕に関しては、賞賛に値するといっても過言ではない。だが、お前は間違えたのだ。今回の罰は過ぎたる欲望を持った報いだと思え」
ダルキス殿下は、私に対して下卑た笑みを向けてきた。
恐らく彼も、ティスリアとグルなのだろう。今回の件は、二人が共謀して起こしたことであると、私は予測している。
「ダルキス殿下、一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「うん? なんだ? 今の俺は機嫌がいい。一つくらいなら、答えてやろうか?」
「国王様の容体は、いかがなのでしょうか?」
「……父上のことか」
私の質問に対して、ダルキス殿下は少し表情を歪めた。
それは彼にとって、聞かれたくない質問だったからだろう。
しかし彼は、すぐに元の下卑た笑みを取り戻す。実の父親のことだというのにそういった表情を浮かべられるこの王子は、とても冷たい人間であるだろう。
「心配はない。もうじき楽になるとも」
「楽になる……それは」
「ああ、変な意味ではないさ。ただ、父上もそろそろ限界ということなのだろうな。俺が後を継いで、安心させてやるとしよう」
前国王であるドルダンは、とても偉大なる王であった。
彼が健在であるなら、このような事態は起きなかっただろう。
そんな彼が最近寝込んでいるのも、この二人が何かしたからだ。それがわかっていながら何もできない自分がもどかしい。
「ダルキス殿下、もうよろしいではございませんか?」
「む?」
「罪人の言葉にも耳を傾けるあなたは立派ではありますが、彼女に関しては時間の無駄ですよ。平民の分際で、聖女を偽ったこの不届き者を、さっさと追い出してしまいましょう」
「まあ、そうだな。おい、その女を連れていけ」
ダルキス殿下は、ゆっくりと手を上げた。
すると私の周りに、兵士が現れる。これで話は、終わりということだろう。もう少し聞きたいことはあるのだが、今の私には従うことしかできない。
「ふふ、いい気味です」
「まったくだ。これでこのドラール王国に巣くうネズミを、また一匹処理することができた」
そんな私に対して、ティスリアとダルキス殿下は下卑た笑みを浮かべていた。
彼らはきっと、これからこの国でその権力を使って好き勝手するのだろう。それはなんとも、悲しきことである。
しかし、一平民でしかない私にはこの状況を覆せる程の力もない。結局私は、彼らの策略の通り、追放されるしかないのである。
213
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の妹君。〜冤罪で追放された落ちこぼれ令嬢はワケあり少年伯に溺愛される〜
見丘ユタ
恋愛
意地悪な双子の姉に聖女迫害の罪をなすりつけられた伯爵令嬢リーゼロッテは、罰として追放同然の扱いを受け、偏屈な辺境伯ユリウスの家事使用人として過ごすことになる。
ユリウスに仕えた使用人は、十日もたずに次々と辞めさせられるという噂に、家族や婚約者に捨てられ他に行き場のない彼女は戦々恐々とするが……彼女を出迎えたのは自称当主の少年だった。
想像とは全く違う毎日にリーゼロッテは戸惑う。「なんだか大切にされていませんか……?」と。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
金喰い虫ですって!? 婚約破棄&追放された用済み聖女は、実は妖精の愛し子でした ~田舎に帰って妖精さんたちと幸せに暮らします~
アトハ
ファンタジー
「貴様はもう用済みだ。『聖女』などという迷信に踊らされて大損だった。どこへでも行くが良い」
突然の宣告で、国外追放。国のため、必死で毎日祈りを捧げたのに、その仕打ちはあんまりでではありませんか!
魔法技術が進んだ今、妖精への祈りという不確かな力を行使する聖女は国にとっての『金喰い虫』とのことですが。
「これから大災厄が来るのにね~」
「ばかな国だね~。自ら聖女様を手放そうなんて~」
妖精の声が聞こえる私は、知っています。
この国には、間もなく前代未聞の災厄が訪れるということを。
もう国のことなんて知りません。
追放したのはそっちです!
故郷に戻ってゆっくりさせてもらいますからね!
※ 他の小説サイト様にも投稿しています
偽りの呪いで追放された聖女です。辺境で薬屋を開いたら、国一番の不運な王子様に拾われ「幸運の女神」と溺愛されています
黒崎隼人
ファンタジー
「君に触れると、不幸が起きるんだ」――偽りの呪いをかけられ、聖女の座を追われた少女、ルナ。
彼女は正体を隠し、辺境のミモザ村で薬師として静かな暮らしを始める。
ようやく手に入れた穏やかな日々。
しかし、そんな彼女の前に現れたのは、「王国一の不運王子」リオネスだった。
彼が歩けば嵐が起き、彼が触れば物が壊れる。
そんな王子が、なぜか彼女の薬草店の前で派手に転倒し、大怪我を負ってしまう。
「私の呪いのせいです!」と青ざめるルナに、王子は笑った。
「いつものことだから、君のせいじゃないよ」
これは、自分を不幸だと思い込む元聖女と、天性の不運をものともしない王子の、勘違いから始まる癒やしと幸運の物語。
二人が出会う時、本当の奇跡が目を覚ます。
心温まるスローライフ・ラブファンタジー、ここに開幕。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです
ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」
宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。
聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。
しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。
冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。
私の妹は確かに聖女ですけど、私は女神本人ですわよ?
みおな
ファンタジー
私の妹は、聖女と呼ばれている。
妖精たちから魔法を授けられた者たちと違い、女神から魔法を授けられた者、それが聖女だ。
聖女は一世代にひとりしか現れない。
だから、私の婚約者である第二王子は声高らかに宣言する。
「ここに、ユースティティアとの婚約を破棄し、聖女フロラリアとの婚約を宣言する!」
あらあら。私はかまいませんけど、私が何者かご存知なのかしら?
それに妹フロラリアはシスコンですわよ?
この国、滅びないとよろしいわね?
現聖女ですが、王太子妃様が聖女になりたいというので、故郷に戻って結婚しようと思います。
和泉鷹央
恋愛
聖女は十年しか生きられない。
この悲しい運命を変えるため、ライラは聖女になるときに精霊王と二つの契約をした。
それは期間満了後に始まる約束だったけど――
一つ……一度、死んだあと蘇生し、王太子の側室として本来の寿命で死ぬまで尽くすこと。
二つ……王太子が国王となったとき、国民が苦しむ政治をしないように側で支えること。
ライラはこの契約を承諾する。
十年後。
あと半月でライラの寿命が尽きるという頃、王太子妃ハンナが聖女になりたいと言い出した。
そして、王太子は聖女が農民出身で王族に相応しくないから、婚約破棄をすると言う。
こんな王族の為に、死ぬのは嫌だな……王太子妃様にあとを任せて、村に戻り幼馴染の彼と結婚しよう。
そう思い、ライラは聖女をやめることにした。
他の投稿サイトでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる