旦那様の不手際は、私が頭を下げていたから許していただけていたことをご存知なかったのですか?

木山楽斗

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32.義母への挨拶

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 私とバルハルド様は、村の片隅にある墓地に来ていた。
 そこにある一つの墓に、バルハルド様のお母様は眠っているらしい。

「レスティア様、挨拶が遅れてしまって申し訳ありません。私は、リメリアと申します。バルハルド様と結婚の約束をさせてもらっています」
「……母上、リメリア嬢は良き人だ。俺もやっと落ち着くことができる。母上も喜んでくれるだろうか」

 私は、レスティア様にゆっくりと挨拶をした。
 それに続いて、バルハルド様も母親に語りかける。その口調は、いつにも増して穏やかで優しさに満ちている。
 今は亡き母に、バルハルド様は深い愛情と尊敬の念を抱いている気がした。立場故に色々と大変だっただろうし、そういった事柄が関係しているのかもしれない。

「幼少期の頃、俺にもいつか良き人が現れると言ってくれたことがあったな。父のいない俺にとって、結婚とはそれ程幸せなものではないと思っていた故に、あの時俺は母上に反発した。しかしだ、今はこうしてリメリア嬢と巡り会えた。どうやら母上の言ったことの方が、正しかったようだな」
「えっと、バルハルド様が仰っている程、良き人なのかどうかはわかりませんが、彼の妻として立派に努めていくつもりです」

 バルハルド様は、私を褒め称える言葉をお義母様にかけてくれた。
 それ自体は嬉しく思うのだが、少々過大評価であるような気もする。母親の前であるため、少し大袈裟に言ってくれているのだろうか。
 とはいえ、私もそれに応えられるようにならなければならない。お義母様に心配をかけないように、私も努力するとしよう。

「今の言葉でわかったかもしれないが、彼女はとても謙虚だ。俺にはもったいないくらいの婚約者だといえる」
「そ、それは流石に聞き捨てなりませんね。私はバルハルド様だからこそ、妻になりたいと思ったというのに……」
「む、それはそうかもしれないな。いや、すまない。母上、どうやら俺もまだまだのようだ」
「バルハルド様は、本当に素晴らしい人です。謙虚というなら、バルハルド様の方が謙虚だと思います」

 私とバルハルド様は、お義母様の前で色々と話した。
 これでお義母様も、少しは安心してくれるだろうか。私はこれでも、バルハルド様と結構相性がいいと思っているのだが。

「……あれ?」
「リメリア嬢? どうかしたのか?」
「え? ああいえ……」

 そこで私は、風が吹き抜けていくと同時に奇妙な感覚に陥った。
 その風が吹いてきた方向を向いてみると、誰がいたような気がした。
 それは、ただの気のせいなのかもしれない。しかし私は、それがお義母様が反応してくれたのではないかと、思うのだった。
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