妹と駆け落ちしたあなたが他国で事業に失敗したからといって、私が援助する訳ありませんよね?

木山楽斗

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8.二人の目的

 私とお兄様、そしてアドールの三人は最寄りの町を訪れていた。
 この町はヴェレスタ侯爵家の領地内にある港町である。この町でアドラス様やヘレーナは密会しているようだ。
 私達は、その現場として頻繁に利用されていたという酒場に来ていた。しかし、そこに二人はいない。流石に一つの場所に留まっているという訳ではないということだろうか。

「お兄様、どうでしたか? 二人の行方はわかりましたか?」
「ああ、どうやら二人は港に向かったらしい」
「港、ですか?」

 店主から話を聞いたお兄様は、少し苦い顔をしていた。
 その気持ちは、とてもよくわかる。二人が港に向かったということは、とても不可解だ。

「一体、何の目的で港に?」
「……普通に考えれば、目的は船ということになるだろう」
「まあ、私達が港に行くとなると、そうなりますよね。まさか魚を買いに行った訳ではないでしょうし……」

 港に向かう目的は、様々あるだろう。
 ただ、私達のような身分の者達が港に赴くといったら、主に船に乗る時だ。
 誰かを迎えるためということもあるが、どちらかというと自分達が船に乗る方が多い。しかしその仮説は、状況的に正しいかどうかは微妙な所だ。

「しかし、アドラス様は私にロナーダ子爵家の屋敷を訪ねると言って出発しました。船で出掛けたりしたら、いくらなんでも辻褄が合わなくなります」
「後に手紙でも出して誤魔化すつもりなのかもしれない。あるいは……」

 私の言葉に対して、お兄様は仮説を述べていた。
 しかしその言葉は、途中で詰まった。それは恐らく、アドールを気遣ったのだ。
 事実として、お兄様の視線は彼の方に向いている。その先の言葉は、彼にとって酷なものだと判断したのだろう。

「……ハルベルク様が何を言いたいのかはわかっています」
「む……」
「父上はヘレーナ様と駆け落ちしようとしている。そう考えているのですね」

 だが、アドールは聡い子であった。
 彼は既に、理解しているのだ。父親が自分を置いて行こうとしているかもしれないということを。
 それはまだ子供である彼にとって、とても辛いことであるはずだ。ただ、彼はそれをおくびにも出さない。

「……あくまでも可能性の一つということだ。そうだと決まった訳ではない」
「はい、そうですね……」
「とにかく、港に向かうとしよう。話はそれからだ」
「ええ……」

 お兄様は、珍しく気まずそうな顔をしていた。
 流石のお兄様でも、アドールが今置かれている状況には同情を隠せないようだ。
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