怠惰な聖女の代わりに業務を担っていた私は、たまの気まぐれで働いた聖女の失敗を押し付けられて追放されました。

木山楽斗

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 レパイア王国には、聖女という特別な役職がある。
 国を守る結界を維持したり、祈りを捧げたり、その役割は多岐に渡る。
 そんな聖女の役職に就いているのは、カーテナ・ラルカンテという人物だ。彼女は、公爵家の令嬢である。貴族で聖女という地位を持つ彼女は、国でも有数の人材であり、かなりの権力を保有している。

 そんなカーテナ様を補佐するのが、私イルアナ・フォルアドの仕事だ。
 補佐というのは、通常は聖女の手助けである。だが、私の場合は、少しだけ違う。
 カーテナ様は、聖女としての仕事をほとんど行っていない。彼女は、私に仕事を押し付けて、自分は休んでいるのだ。現在、聖女として働いているのはほぼ私なのである。

「今日の結界は、私が張らせてもらうわ」
「え?」

 そんなカーテナ様は、とても珍しいことを言い出してきた。
 結界を自分が張る。聖女として当たり前のことだが、彼女は最近それを面倒だと、私に押し付けていた。一体、どういう風の吹き回しなのだろうか。

「急にどうしたのですか?」
「たまには、体を動かさないといけないと思ったのよ。ずっと休んでいるのもいいけど、最近それも少し退屈になってきたしね」

 彼女は、休むことまで面倒になってきたようである。
 どうしようもない人だとは思うが、私にとっては少しありがたいことだ。
 これで、彼女が少しでもやる気を出してくれたら、私も楽になる。聖女の業務というのは、大変なものだ。それを補佐なしでやるのは、かなり苦しかった。
 だから、彼女が少しでも聖女の仕事をしてくれるなら、ありがたいのだ。そもそも、それは彼女の本来やるべきことなので、感謝するのもおかしな話かもしれないが。

「念のためお聞きしますけど、結界の張り方は覚えていますか?」
「馬鹿にしているの? 私は聖女よ。それを忘れる訳がないでしょう」
「そうですか……」

 私は、少しだけ心配だった。
 カーテナ様は、本当に聖女としての仕事をこなせるのだろうか。
 長らく、彼女は結界など張っていない。だから、失敗するのではないだろうか。そんな不安が頭をよぎったのだ。

 だが、いくらなんでも、そんなことはないはずである。
 曲がりなりにも、彼女は聖女である。そんな彼女が失敗するなど、あるはずはないだろう。

「わかりました。それでは、今日はよろしくお願いします」
「ええ、任せておきなさい」

 という訳で、私はカーテナ様に業務を任せることにした。
 本来なら、彼女の仕事なのに、こんな気持ちを抱くのは間違っている。そう思ったが、それは気にしないことにした。
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