怠惰な聖女の代わりに業務を担っていた私は、たまの気まぐれで働いた聖女の失敗を押し付けられて追放されました。

木山楽斗

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 カーテナ様は、国を守る結界を張ることができなかった。
 長らく仕事をしていなかった彼女は、失敗してしまったのである。

「さて、今回の結界についてだが、お前が張ったことで失敗したということだな?」
「いえ、そのような事実はありません……」

 しかし、その責任はカーテナ様に求められることはなかった。
 彼女は、私に今回の失敗を押し付けてきたのである。
 私が結界を張って、それが失敗した。そういう風に報告したのである。

「以前までは、カーテナが張っていて問題がなかった。だが、今回は失敗した。それは、お前が張ったからだという証明だろう」
「その前提が間違っているのです。今までの結界は、私が張ってきたのです」
「素直に罪を認めれば、少しは罰も軽くなるものの、まだ嘘をつくのか?」
「嘘ではありません……」

 国を守る結界が一時とはいえ崩壊した。それは、かなりの一大事である。
 その責任を負わされた私は、国王様によって断罪されることになった。裁判というのは名ばかりの私に罰を与える催しが、今行われているのだ。

「大体、お前の言うカーテナが仕事をしていなかったなどという事実は、誰に聞いてもなかった。それなのに、まだ嘘を突き通すつもりなのか?」
「それは……」

 カーテナ様は、自分が仕事をしていなかったことについて、箝口令を敷いていた。
 聖女であり、公爵令嬢である彼女の命令は、かなり効果がある。皆、真実をひた隠しにしているようだ。
 だから、国王様はカーテナ様の真実を知らない。あくまで、普段はカーテナ様が業務にあたっていると思っているのだ。

 しかし、それは安易な考え方である。権力を持つ者が、何か策を施していることなど、普通は予想できるのではないだろうか。
 そもそも、彼女のことを信じていても、調査くらいはするべきだ。周りがそう言っているからといって、ろくに調査もせずに私を裁くことは絶対に間違っている。

「返答ができないのならば、お前は罪を犯して嘘をついたということだ。そんなお前には、国外追放を言い渡す」
「国外追放……」

 私に言い渡されたのは、国外追放だった。
 それは、かなり重い罰である。国外追放された者の末路は明るくない。最悪の結末が、ほとんどなのだ。
 だが、私にそれを覆す力はない。上司も、同僚も、国も敵に回った以上、私はこの判決を受け入れるしかないのだ。
 私は、この国にもカーテナ様にも真摯に尽くしてきた。それなのに、こんな末路というのはあまりにも納得できないことである。
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