5 / 43
5
しおりを挟む
私は、魔法で空を飛んでいた。
順調に西へと向かっている私だったが、あるものが見えたため、その動きを止めることになった。
「あれは……」
下の方に見えたのは、鎧に身を包んだ者達である。
恐らく、あれは騎士だろう。見た目から考えて、エルグレンド王国の騎士であるはずだ。
多分、私の魔力が感知されて、騎士がやって来たのだろう。これが、他国の騎士なら逃げる所だが、目的地の王国の人間なら下りて行った方がいいかもしれない。
「失礼します」
「む……」
私が下りていくと、騎士達は少し驚いたような表情になった。
まさか、こちらから下りてくるとは思っていなかったのだろう。
とりあえず、私は手を上げておく。抵抗する気がないと相手に示すためだ。
「抵抗する意思は、ないということか?」
「はい、そういうことです」
「なるほど、何か事情があるということだな」
私の言葉で、騎士の一人はすぐに理解してくれた。
話が早いのは、本当に助かる。ここで、敵だと思われたりするともっと話はややこしくなっていただろう。
「私は、レパイア王国を追放されたイルアナ・フォルアドです」
「追放……罪人という訳か」
「私は、国を守る結界を……一時的に崩壊させたという罪で追放されました。信じてもらえるかどうかはわかりませんが、私はそんなことはしていません。聖女であるカーテナ・ラルカンテに罪を被せられて追放されました」
「ふむ……」
私は、騎士に対して事情を説明することにした。
どこまで信用されるかはわからないが、とりあえず全て話しておいた方がいいだろう。
私の目的は、エルグレンド王国に行くことだ。例え、それが鎖に繋がれてでも構わない。
だから、私が今やるべきなのは興味を持ってもらうことだ。少しでも連れて帰る価値があると思ってもらわなければならない。
「私は、聖女の補佐をしていました。ただ、最近、聖女は私に仕事を任せていたため、実質的には私が聖女だったといっても差し支えないでしょう」
「ほう……」
「だから、エルグレンド王国に対して有益な情報を持っています。私を、連れて帰ってくれませんか?」
私の言葉に、騎士は少しだけ表情を変えた。
私を連れて帰るか、考えているのだろう。
「隊長、彼女の言うことを信じてみましょう」
「む……あなたは……」
「少なくとも、僕は彼女に連れて帰る価値を見出しています。彼女の話が真実であろうとなかろうと、詳しく話を聞いてみたいと思っています」
そこで、騎士の中から一人の男性が現れた。
その男性は、他の騎士達とは明らかに雰囲気が違う。
「あなたの命令なら、当然私は従います」
「ありがとうございます。さて、イルアナさん、僕はリルガーといいます。エルグレンド王国の第二王子といった方がわかりやすいでしょうか」
「あ、あなたが……」
目の前の男性に名乗られて、私はとても驚いていた。
彼は、王子だったのだ。道理で、他の人とは雰囲気が違う訳である。
こうして、私はエルグレンド王国の人達に会ったのだった。
順調に西へと向かっている私だったが、あるものが見えたため、その動きを止めることになった。
「あれは……」
下の方に見えたのは、鎧に身を包んだ者達である。
恐らく、あれは騎士だろう。見た目から考えて、エルグレンド王国の騎士であるはずだ。
多分、私の魔力が感知されて、騎士がやって来たのだろう。これが、他国の騎士なら逃げる所だが、目的地の王国の人間なら下りて行った方がいいかもしれない。
「失礼します」
「む……」
私が下りていくと、騎士達は少し驚いたような表情になった。
まさか、こちらから下りてくるとは思っていなかったのだろう。
とりあえず、私は手を上げておく。抵抗する気がないと相手に示すためだ。
「抵抗する意思は、ないということか?」
「はい、そういうことです」
「なるほど、何か事情があるということだな」
私の言葉で、騎士の一人はすぐに理解してくれた。
話が早いのは、本当に助かる。ここで、敵だと思われたりするともっと話はややこしくなっていただろう。
「私は、レパイア王国を追放されたイルアナ・フォルアドです」
「追放……罪人という訳か」
「私は、国を守る結界を……一時的に崩壊させたという罪で追放されました。信じてもらえるかどうかはわかりませんが、私はそんなことはしていません。聖女であるカーテナ・ラルカンテに罪を被せられて追放されました」
「ふむ……」
私は、騎士に対して事情を説明することにした。
どこまで信用されるかはわからないが、とりあえず全て話しておいた方がいいだろう。
私の目的は、エルグレンド王国に行くことだ。例え、それが鎖に繋がれてでも構わない。
だから、私が今やるべきなのは興味を持ってもらうことだ。少しでも連れて帰る価値があると思ってもらわなければならない。
「私は、聖女の補佐をしていました。ただ、最近、聖女は私に仕事を任せていたため、実質的には私が聖女だったといっても差し支えないでしょう」
「ほう……」
「だから、エルグレンド王国に対して有益な情報を持っています。私を、連れて帰ってくれませんか?」
私の言葉に、騎士は少しだけ表情を変えた。
私を連れて帰るか、考えているのだろう。
「隊長、彼女の言うことを信じてみましょう」
「む……あなたは……」
「少なくとも、僕は彼女に連れて帰る価値を見出しています。彼女の話が真実であろうとなかろうと、詳しく話を聞いてみたいと思っています」
そこで、騎士の中から一人の男性が現れた。
その男性は、他の騎士達とは明らかに雰囲気が違う。
「あなたの命令なら、当然私は従います」
「ありがとうございます。さて、イルアナさん、僕はリルガーといいます。エルグレンド王国の第二王子といった方がわかりやすいでしょうか」
「あ、あなたが……」
目の前の男性に名乗られて、私はとても驚いていた。
彼は、王子だったのだ。道理で、他の人とは雰囲気が違う訳である。
こうして、私はエルグレンド王国の人達に会ったのだった。
48
あなたにおすすめの小説
侯爵令嬢セリーナ・マクギリウスは冷徹な鬼公爵に溺愛される。 わたくしが古の大聖女の生まれ変わり? そんなの聞いてません!!
友坂 悠
恋愛
「セリーナ・マクギリウス。貴女の魔法省への入省を許可します」
婚約破棄され修道院に入れられかけたあたしがなんとか採用されたのは国家の魔法を一手に司る魔法省。
そこであたしの前に現れたのは冷徹公爵と噂のオルファリド・グラキエスト様でした。
「君はバカか?」
あたしの話を聞いてくれた彼は開口一番そうのたまって。
ってちょっと待って。
いくらなんでもそれは言い過ぎじゃないですか!!?
⭐︎⭐︎⭐︎
「セリーナ嬢、君のこれまでの悪行、これ以上は見過ごすことはできない!」
貴族院の卒業記念パーティの会場で、茶番は起きました。
あたしの婚約者であったコーネリアス殿下。会場の真ん中をスタスタと進みあたしの前に立つと、彼はそう言い放ったのです。
「レミリア・マーベル男爵令嬢に対する数々の陰湿ないじめ。とても君は国母となるに相応しいとは思えない!」
「私、コーネリアス・ライネックの名においてここに宣言する! セリーナ・マクギリウス侯爵令嬢との婚約を破棄することを!!」
と、声を張り上げたのです。
「殿下! 待ってください! わたくしには何がなんだか。身に覚えがありません!」
周囲を見渡してみると、今まで仲良くしてくれていたはずのお友達たちも、良くしてくれていたコーネリアス殿下のお付きの人たちも、仲が良かった従兄弟のマクリアンまでもが殿下の横に立ち、あたしに非難めいた視線を送ってきているのに気がついて。
「言い逃れなど見苦しい! 証拠があるのだ。そして、ここにいる皆がそう証言をしているのだぞ!」
え?
どういうこと?
二人っきりの時に嫌味を言っただの、お茶会の場で彼女のドレスに飲み物をわざとかけただの。
彼女の私物を隠しただの、人を使って階段の踊り場から彼女を突き落とそうとしただの。
とそんな濡れ衣を着せられたあたし。
漂う黒い陰湿な気配。
そんな黒いもやが見え。
ふんわり歩いてきて殿下の横に縋り付くようにくっついて、そしてこちらを見て笑うレミリア。
「私は真実の愛を見つけた。これからはこのレミリア嬢と添い遂げてゆこうと思う」
あたしのことなんかもう忘れたかのようにレミリアに微笑むコーネリアス殿下。
背中にじっとりとつめたいものが走り、尋常でない様子に気分が悪くなったあたし。
ほんと、この先どうなっちゃうの?
【完結】大聖女は無能と蔑まれて追放される〜殿下、1%まで力を封じよと命令したことをお忘れですか?隣国の王子と婚約しましたので、もう戻りません
冬月光輝
恋愛
「稀代の大聖女が聞いて呆れる。フィアナ・イースフィル、君はこの国の聖女に相応しくない。職務怠慢の罪は重い。無能者には国を出ていってもらう。当然、君との婚約は破棄する」
アウゼルム王国の第二王子ユリアンは聖女フィアナに婚約破棄と国家追放の刑を言い渡す。
フィアナは侯爵家の令嬢だったが、両親を亡くしてからは教会に預けられて類稀なる魔法の才能を開花させて、その力は大聖女級だと教皇からお墨付きを貰うほどだった。
そんな彼女は無能者だと追放されるのは不満だった。
なぜなら――
「君が力を振るうと他国に狙われるし、それから守るための予算を割くのも勿体ない。明日からは能力を1%に抑えて出来るだけ働くな」
何を隠そう。フィアナに力を封印しろと命じたのはユリアンだったのだ。
彼はジェーンという国一番の美貌を持つ魔女に夢中になり、婚約者であるフィアナが邪魔になった。そして、自らが命じたことも忘れて彼女を糾弾したのである。
国家追放されてもフィアナは全く不自由しなかった。
「君の父親は命の恩人なんだ。私と婚約してその力を我が国の繁栄のために存分に振るってほしい」
隣国の王子、ローレンスは追放されたフィアナをすぐさま迎え入れ、彼女と婚約する。
一方、大聖女級の力を持つといわれる彼女を手放したことがバレてユリアンは国王陛下から大叱責を食らうことになっていた。
(完結)お荷物聖女と言われ追放されましたが、真のお荷物は追放した王太子達だったようです
しまうま弁当
恋愛
伯爵令嬢のアニア・パルシスは婚約者であるバイル王太子に突然婚約破棄を宣言されてしまうのでした。
さらにはアニアの心の拠り所である、聖女の地位まで奪われてしまうのでした。
訳が分からないアニアはバイルに婚約破棄の理由を尋ねましたが、ひどい言葉を浴びせつけられるのでした。
「アニア!お前が聖女だから仕方なく婚約してただけだ。そうでなけりゃ誰がお前みたいな年増女と婚約なんかするか!!」と。
アニアの弁明を一切聞かずに、バイル王太子はアニアをお荷物聖女と決めつけて婚約破棄と追放をさっさと決めてしまうのでした。
挙句の果てにリゼラとのイチャイチャぶりをアニアに見せつけるのでした。
アニアは妹のリゼラに助けを求めましたが、リゼラからはとんでもない言葉が返ってきたのでした。
リゼラこそがアニアの追放を企てた首謀者だったのでした。
アニアはリゼラの自分への悪意を目の当たりにして愕然しますが、リゼラは大喜びでアニアの追放を見送るのでした。
信じていた人達に裏切られたアニアは、絶望して当てもなく宿屋生活を始めるのでした。
そんな時運命を変える人物に再会するのでした。
それはかつて同じクラスで一緒に学んでいた学友のクライン・ユーゲントでした。
一方のバイル王太子達はアニアの追放を喜んでいましたが、すぐにアニアがどれほどの貢献をしていたかを目の当たりにして自分達こそがお荷物であることを思い知らされるのでした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
全25話執筆済み 完結しました
辺境伯聖女は城から追い出される~もう王子もこの国もどうでもいいわ~
サイコちゃん
恋愛
聖女エイリスは結界しか張れないため、辺境伯として国境沿いの城に住んでいた。しかし突如王子がやってきて、ある少女と勝負をしろという。その少女はエイリスとは違い、聖女の資質全てを備えていた。もし負けたら聖女の立場と爵位を剥奪すると言うが……あることが切欠で全力を発揮できるようになっていたエイリスはわざと負けることする。そして国は真の聖女を失う――
【完結】無能な聖女はいらないと婚約破棄され、追放されたので自由に生きようと思います
黒幸
恋愛
辺境伯令嬢レイチェルは学園の卒業パーティーでイラリオ王子から、婚約破棄を告げられ、国外追放を言い渡されてしまう。
レイチェルは一言も言い返さないまま、パーティー会場から姿を消した。
邪魔者がいなくなったと我が世の春を謳歌するイラリオと新たな婚約者ヒメナ。
しかし、レイチェルが国からいなくなり、不可解な事態が起き始めるのだった。
章を分けるとかえって、ややこしいとの御指摘を受け、章分けを基に戻しました。
どうやら、作者がメダパニ状態だったようです。
表紙イラストはイラストAC様から、お借りしています。
聖女を騙った罪で追放されそうなので、聖女の真の力を教えて差し上げます
香木陽灯
恋愛
公爵令嬢フローラ・クレマンは、首筋に聖女の証である薔薇の痣がある。それを知っているのは、家族と親友のミシェルだけ。
どうして自分なのか、やりたい人がやれば良いのにと、何度思ったことか。だからミシェルに相談したの。
「私は聖女になりたくてたまらないのに!」
ミシェルに言われたあの日から、私とミシェルの二人で一人の聖女として生きてきた。
けれど、私と第一王子の婚約が決まってからミシェルとは連絡が取れなくなってしまった。
ミシェル、大丈夫かしら?私が力を使わないと、彼女は聖女として振る舞えないのに……
なんて心配していたのに。
「フローラ・クレマン!聖女の名を騙った罪で、貴様を国外追放に処す。いくら貴様が僕の婚約者だったからと言って、許すわけにはいかない。我が国の聖女は、ミシェルただ一人だ」
第一王子とミシェルに、偽の聖女を騙った罪で断罪させそうになってしまった。
本気で私を追放したいのね……でしたら私も本気を出しましょう。聖女の真の力を教えて差し上げます。
この村の悪霊を封印してたのは、実は私でした。その私がいけにえに選ばれたので、村はもうおしまいです【完結】
小平ニコ
恋愛
主人公カレンは、村の風習でいけにえとして死ぬことを命令される。最低の家族たちに異常な育て方をされたカレンは、抵抗する気力もなく運命を受け入れた。村人たちは、自分がいけにえに選ばれなくて良かったと喜び、カレンの身を案じる者は一人もいない。
そして、とうとう山の神に『いけにえ』として捧げられるカレン。だが、いけにえの儀式で衰弱し、瀕死のカレンの元に現れた山の神は、穏やかで優しく、そして人間離れした美しさの青年だった。
彼との共同生活で、ずっと昔に忘れていた人の優しさや思いやりを感じ、人間らしさを取り戻していくカレン。一方、カレンがいなくなったことで、村ではとんでもない災いが起ころうとしていた……
【完結】濡れ衣聖女はもう戻らない 〜ホワイトな宮廷ギルドで努力の成果が実りました
冬月光輝
恋愛
代々魔術師の名家であるローエルシュタイン侯爵家は二人の聖女を輩出した。
一人は幼き頃より神童と呼ばれた天才で、史上最年少で聖女の称号を得たエキドナ。
もう一人はエキドナの姉で、妹に遅れをとること五年目にしてようやく聖女になれた努力家、ルシリア。
ルシリアは魔力の量も生まれつき、妹のエキドナの十分の一以下でローエルシュタインの落ちこぼれだと蔑まれていた。
しかし彼女は努力を惜しまず、魔力不足を補う方法をいくつも生み出し、教会から聖女だと認められるに至ったのである。
エキドナは目立ちたがりで、国に一人しかいなかった聖女に姉がなることを良しとしなかった。
そこで、自らの家宝の杖を壊し、その罪を姉になすりつけ、彼女を実家から追放させた。
「無駄な努力」だと勝ち誇った顔のエキドナに嘲り笑われたルシリアは失意のまま隣国へと足を運ぶ。
エキドナは知らなかった。魔物が増えた昨今、彼女の働きだけでは不足だと教会にみなされて、姉が聖女になったことを。
ルシリアは隣国で偶然再会した王太子、アークハルトにその力を認められ、宮廷ギルド入りを勧められ、宮仕えとしての第二の人生を送ることとなる。
※旧タイトル『妹が神童だと呼ばれていた聖女、「無駄な努力」だと言われ追放される〜「努力は才能を凌駕する」と隣国の宮廷ギルドで証明したので、もう戻りません』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる