怠惰な聖女の代わりに業務を担っていた私は、たまの気まぐれで働いた聖女の失敗を押し付けられて追放されました。

木山楽斗

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 私は、魔法で空を飛んでいた。
 順調に西へと向かっている私だったが、あるものが見えたため、その動きを止めることになった。

「あれは……」

 下の方に見えたのは、鎧に身を包んだ者達である。
 恐らく、あれは騎士だろう。見た目から考えて、エルグレンド王国の騎士であるはずだ。
 多分、私の魔力が感知されて、騎士がやって来たのだろう。これが、他国の騎士なら逃げる所だが、目的地の王国の人間なら下りて行った方がいいかもしれない。

「失礼します」
「む……」

 私が下りていくと、騎士達は少し驚いたような表情になった。
 まさか、こちらから下りてくるとは思っていなかったのだろう。
 とりあえず、私は手を上げておく。抵抗する気がないと相手に示すためだ。

「抵抗する意思は、ないということか?」
「はい、そういうことです」
「なるほど、何か事情があるということだな」

 私の言葉で、騎士の一人はすぐに理解してくれた。
 話が早いのは、本当に助かる。ここで、敵だと思われたりするともっと話はややこしくなっていただろう。

「私は、レパイア王国を追放されたイルアナ・フォルアドです」
「追放……罪人という訳か」
「私は、国を守る結界を……一時的に崩壊させたという罪で追放されました。信じてもらえるかどうかはわかりませんが、私はそんなことはしていません。聖女であるカーテナ・ラルカンテに罪を被せられて追放されました」
「ふむ……」

 私は、騎士に対して事情を説明することにした。
 どこまで信用されるかはわからないが、とりあえず全て話しておいた方がいいだろう。
 私の目的は、エルグレンド王国に行くことだ。例え、それが鎖に繋がれてでも構わない。
 だから、私が今やるべきなのは興味を持ってもらうことだ。少しでも連れて帰る価値があると思ってもらわなければならない。

「私は、聖女の補佐をしていました。ただ、最近、聖女は私に仕事を任せていたため、実質的には私が聖女だったといっても差し支えないでしょう」
「ほう……」
「だから、エルグレンド王国に対して有益な情報を持っています。私を、連れて帰ってくれませんか?」

 私の言葉に、騎士は少しだけ表情を変えた。
 私を連れて帰るか、考えているのだろう。

「隊長、彼女の言うことを信じてみましょう」
「む……あなたは……」
「少なくとも、僕は彼女に連れて帰る価値を見出しています。彼女の話が真実であろうとなかろうと、詳しく話を聞いてみたいと思っています」

 そこで、騎士の中から一人の男性が現れた。
 その男性は、他の騎士達とは明らかに雰囲気が違う。

「あなたの命令なら、当然私は従います」
「ありがとうございます。さて、イルアナさん、僕はリルガーといいます。エルグレンド王国の第二王子といった方がわかりやすいでしょうか」
「あ、あなたが……」

 目の前の男性に名乗られて、私はとても驚いていた。
 彼は、王子だったのだ。道理で、他の人とは雰囲気が違う訳である。
 こうして、私はエルグレンド王国の人達に会ったのだった。
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