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 国王様は、再生能力を失っていた。
 魔法というものは、魔力を使って行使される。禁忌の魔法は、その代わりに生命力を使っている。
 その生命力にも限りはあるのだ。具体的には、国王様があの体になるために犠牲にしてきた人達の分だけしか、その力は宿っていなかったのである。

「あなたは、王都を滅ぼすための魔法を二度使った。それを返されて再生し、さらには僕の攻撃を再生し続けた。そうしていく内に、あなたの力は失われていったのだ」
「な、なんだと……」
「自分の力を過信し過ぎたな……あなたは、もう終わりだ」

 リルガー様は、ゆっくりと国王様にそう言った。
 その剣は、彼の首元に向けている。少しでもおかしな動きをすれば、その首をはねるということだろう。

「兄上、どうしますか? このまま首をはねても構いませんか?」
『ええ、構いませんよ。これ以上、彼を生かしておくのは危険でしょう』
「……そうですね」

 ラルーグ様は、リルガー様にいつもと変わらない口調で許可を出した。
 これで、彼が躊躇う理由はなくなった。その剣が、国王様のその首をはねるだろう。

「最期に、何か言い残すことはあるか?」
「や、やめろ……待ってくれ、私はただ……」
「……さらばだ」

 リルガー様の言葉に、思わず私は目を瞑っていた。
 そのすぐ後に、何かが地面に落ちる音が聞こえてきた。それが何の音なのかは、考えるまでもないだろう。
 私は、ゆっくりと目を開ける。すると、目の前にリルガー様がいた。

「終わりました」
「……そのようですね」

 リルガー様は、少し悲しそうな顔をしていた。
 それは、一体何に悲しんでいるのだろうか。

「王族というものは、誇り高きものでなければならないと、僕は思っています。あのようなことを行い、さらにはあのような最期など……」
「リルガー様……」

 リルガー様は、拳を握りしめて振るわせていた。
 誇り高き王族である彼にとって、レパイア王国の国王様の行いは許せないものだったのだろう。
 この強く優しく気高い王子は、本当にいい王子だ。このような王子がいる国の国民は、とても幸福だろう。
 少なくとも、レパイア王国のように間違いは起こらないはずである。

「リルガー様……こんなことを言っていいのかはわかりませんが、レパイア王国を……この国の人々のことをよろしくお願いします」
「イルアナ様……」
「どうか……」

 私は、リルガー様に頭を下げた。
 レパイア王国は、エルグレンド王国によって支配されるだろう。
 その統治が、ひどいものではないことを願うことしか、私にはできないのだ。
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