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8.気難しさの理由
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「……あれ? でもよく考えてみれば、最初に婚約の話があった時にはそういった事情はありませんでしたよね? 最初な訳ですし……」
「ああ、それは確かにその通りです」
バルギード様の話を聞いて、私はそんな疑問を覚えていた。
彼が気難しい人物だとされたのは、数々の婚約を破談にしてきたからである。だが、最初の婚約に関しては話が違う。
二回目以降ならまだあり得るかもそれない。しかし、最初だけは絶対にあり得ないのだ。
「そもそもの話、私がこのように偏屈な人間になったのは、その最初の婚約が原因なのです」
「そうなのですか?」
「ええ、正直に言って、父が最初に選んだ女性は少々問題がある人だったのです。自分以外の者を見下し、強欲で高慢な女性でした。彼女と婚約しても未来はない。そう判断して、私はその婚約を破談にしたのです。多少無理をしてでも、そうするべきだと判断しました」
バルギード様は、顎を撫でながらそう言った。
彼は今、苦い顔をしている。それだけその相手は難儀な性格をしていたということなのだろう。
「ですが、その後が少々大変でした。その女性が、私の悪評を流したからです」
「あら、それはひどいですね……」
「しかしながら、そのくらいは覚悟の上でした。彼女と正式に婚約していたら、私はもっと苦しい生活を送っていたでしょうから」
「なるほど、色々と大変だったんですね……」
「確かに大変ではありましたね……特に父との関係が悪化しました。例の女性は、外面だけは良かったので、父も信用していたようだったので」
「厄介な女性ですね……」
色々と批判しながらも、バルギード様は決してその女性の名前を口にしない。それは、その女性の名誉を守るためであるのだろう。
気難しい部分もあるが、彼はやはり紳士的な人物であるようだ。今のやり取りで、私はそれを確信した。
「私が彼女の本性を知れたのは、偶然でした。その偶然がなければ、私も信用していたかもしれません。故に、私はその次の縁談からは相手のことをある程度見極めることにしたのです。信用できる人と判断できなければ、婚約はしない。そう決意したのです」
最初の婚約候補者は、バルギード様にかなり強烈な印象を与えたようだ。もしかしたら、一種のトラウマのようになっているのかもしれない。
「……あなた方にとっては失礼なことをしてしまっているとは思っています。ですが、これは私にとって譲れないことですので」
「いえ、それは何も問題があることではないと思いますよ?」
「おや、それは何故?」
「お見合いというものは、そういったものであると記憶しています。お互いに納得できる相手かどうかを見極める場なのですから、試して悪いことはないでしょう?」
「なるほど、そう言っていただけるとこちらも心が少し軽くなります」
バルギード様の行為は、別に咎められるようなことではないだろう。相手を見極める。それがお見合いなのだから、それでいいはずだ。
そして、私は同時に理解した。私も、バルギード様を見極めなければならないのだと。
相手が公爵家の長男だからと遠慮する必要はない。そもそも、私は一度婚約で失敗しているのだから、相手を見極める必要は大いにあるといえる。
「ああ、それは確かにその通りです」
バルギード様の話を聞いて、私はそんな疑問を覚えていた。
彼が気難しい人物だとされたのは、数々の婚約を破談にしてきたからである。だが、最初の婚約に関しては話が違う。
二回目以降ならまだあり得るかもそれない。しかし、最初だけは絶対にあり得ないのだ。
「そもそもの話、私がこのように偏屈な人間になったのは、その最初の婚約が原因なのです」
「そうなのですか?」
「ええ、正直に言って、父が最初に選んだ女性は少々問題がある人だったのです。自分以外の者を見下し、強欲で高慢な女性でした。彼女と婚約しても未来はない。そう判断して、私はその婚約を破談にしたのです。多少無理をしてでも、そうするべきだと判断しました」
バルギード様は、顎を撫でながらそう言った。
彼は今、苦い顔をしている。それだけその相手は難儀な性格をしていたということなのだろう。
「ですが、その後が少々大変でした。その女性が、私の悪評を流したからです」
「あら、それはひどいですね……」
「しかしながら、そのくらいは覚悟の上でした。彼女と正式に婚約していたら、私はもっと苦しい生活を送っていたでしょうから」
「なるほど、色々と大変だったんですね……」
「確かに大変ではありましたね……特に父との関係が悪化しました。例の女性は、外面だけは良かったので、父も信用していたようだったので」
「厄介な女性ですね……」
色々と批判しながらも、バルギード様は決してその女性の名前を口にしない。それは、その女性の名誉を守るためであるのだろう。
気難しい部分もあるが、彼はやはり紳士的な人物であるようだ。今のやり取りで、私はそれを確信した。
「私が彼女の本性を知れたのは、偶然でした。その偶然がなければ、私も信用していたかもしれません。故に、私はその次の縁談からは相手のことをある程度見極めることにしたのです。信用できる人と判断できなければ、婚約はしない。そう決意したのです」
最初の婚約候補者は、バルギード様にかなり強烈な印象を与えたようだ。もしかしたら、一種のトラウマのようになっているのかもしれない。
「……あなた方にとっては失礼なことをしてしまっているとは思っています。ですが、これは私にとって譲れないことですので」
「いえ、それは何も問題があることではないと思いますよ?」
「おや、それは何故?」
「お見合いというものは、そういったものであると記憶しています。お互いに納得できる相手かどうかを見極める場なのですから、試して悪いことはないでしょう?」
「なるほど、そう言っていただけるとこちらも心が少し軽くなります」
バルギード様の行為は、別に咎められるようなことではないだろう。相手を見極める。それがお見合いなのだから、それでいいはずだ。
そして、私は同時に理解した。私も、バルギード様を見極めなければならないのだと。
相手が公爵家の長男だからと遠慮する必要はない。そもそも、私は一度婚約で失敗しているのだから、相手を見極める必要は大いにあるといえる。
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