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20.同じ湯船で
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家族三人でお風呂に入る。それは少し前までは考えられなかったことだ。
正直、私はすごく嬉しい。一緒にお風呂に入って、一緒に寝て、一緒に起きて。それは私が憧れていた家族の形だ。
湯船につかりながら、私は笑顔を浮かべていた。その隣に、お父様とお母様はそれぞれいてくれる。広い湯船の中に、家族三人で並んでいるのだ。
「なんだか、すごく幸せです」
「そう? それなら、よかったわ」
「ああ、ファルミルがそう思ってくれるならよかったよ」
お父様とお母様は、お互いの方を見ないようにしていた。
先程までは自然と会話を交わしていた二人だったが、お風呂ではまたぎこちなくなってしまっている。
ただ、そのぎこちなさは単純に恥ずかしさのせいだろう。変な言い方ではあるが、今までよりもすっきりとしたぎこちなさだ。それが私にとって、また嬉しい。
「……ふう」
「……お父様? お疲れですか?」
「む? ああ、いや……まあ、そうだな。少し疲れているのかもしれない」
「大丈夫ですか?」
「今、その疲れを癒している所さ」
「お風呂に入ると疲れが取れるということですか?」
「ああ、その通り。湯船につかると一日の疲れが取れていくのさ」
お父様は、かなり疲れているようだ。
きっとその原因は、私が怪我をしたからだろう。お父様は、あれでかなり疲れただろうし、私と会う時間を作るために無理をしている。だから、疲れが溜まってしまっているのだ。
ただ、お父様は私が謝ることを望んでいないだろう。だから、今私が言うべきことは別のことだ。
「お疲れ様です、お父様」
「ありがとう、ファルミル。君にそう言ってもらえると、頑張った甲斐があったと思えるよ」
私の言葉に、お父様は笑顔を浮かべた。
その笑顔を見て、私は気付いた。いつの間にかお父様がこちらを向いていることに。
どうやら、私との会話に夢中になってお母様が見えていないらしい。
「ファルクス様、前にも言ったとは思いますが、私にできることがあったら言ってくださいね?」
「む?」
「あっ……」
そこでお母様は私の方を向いて、二人の視線がぶつかった。
そのまま、二人はゆっくりとそっぽを向く。その光景に、私は思わず笑ってしまう。
「もちろん、君のことも頼りにしているよ。頼りにしている……前話した時よりもずっと素直にそう言えるよ」
「そうなのですか?」
「ああ、だから君も僕のことを頼ってくれ。君の助けになりたいんだ。困っていることがあったら、なんでも言って欲しい」
「……困っていることなんてありません。少し前まではありましたが、それはもう解決しましたから」
「……解決したのかい?」
「そうですね……少なくとも今は困ってはいないと思います」
お互いに違う方向を向きながらも、お父様とお母様は繋がっている。二人の会話に、私はそんなことを思っていた。
それに、なんとなくいい雰囲気のような気がする。もしかしたら、二人が私のために踏み出してくれた一歩は、とても大きなものだったのかもしれない。
正直、私はすごく嬉しい。一緒にお風呂に入って、一緒に寝て、一緒に起きて。それは私が憧れていた家族の形だ。
湯船につかりながら、私は笑顔を浮かべていた。その隣に、お父様とお母様はそれぞれいてくれる。広い湯船の中に、家族三人で並んでいるのだ。
「なんだか、すごく幸せです」
「そう? それなら、よかったわ」
「ああ、ファルミルがそう思ってくれるならよかったよ」
お父様とお母様は、お互いの方を見ないようにしていた。
先程までは自然と会話を交わしていた二人だったが、お風呂ではまたぎこちなくなってしまっている。
ただ、そのぎこちなさは単純に恥ずかしさのせいだろう。変な言い方ではあるが、今までよりもすっきりとしたぎこちなさだ。それが私にとって、また嬉しい。
「……ふう」
「……お父様? お疲れですか?」
「む? ああ、いや……まあ、そうだな。少し疲れているのかもしれない」
「大丈夫ですか?」
「今、その疲れを癒している所さ」
「お風呂に入ると疲れが取れるということですか?」
「ああ、その通り。湯船につかると一日の疲れが取れていくのさ」
お父様は、かなり疲れているようだ。
きっとその原因は、私が怪我をしたからだろう。お父様は、あれでかなり疲れただろうし、私と会う時間を作るために無理をしている。だから、疲れが溜まってしまっているのだ。
ただ、お父様は私が謝ることを望んでいないだろう。だから、今私が言うべきことは別のことだ。
「お疲れ様です、お父様」
「ありがとう、ファルミル。君にそう言ってもらえると、頑張った甲斐があったと思えるよ」
私の言葉に、お父様は笑顔を浮かべた。
その笑顔を見て、私は気付いた。いつの間にかお父様がこちらを向いていることに。
どうやら、私との会話に夢中になってお母様が見えていないらしい。
「ファルクス様、前にも言ったとは思いますが、私にできることがあったら言ってくださいね?」
「む?」
「あっ……」
そこでお母様は私の方を向いて、二人の視線がぶつかった。
そのまま、二人はゆっくりとそっぽを向く。その光景に、私は思わず笑ってしまう。
「もちろん、君のことも頼りにしているよ。頼りにしている……前話した時よりもずっと素直にそう言えるよ」
「そうなのですか?」
「ああ、だから君も僕のことを頼ってくれ。君の助けになりたいんだ。困っていることがあったら、なんでも言って欲しい」
「……困っていることなんてありません。少し前まではありましたが、それはもう解決しましたから」
「……解決したのかい?」
「そうですね……少なくとも今は困ってはいないと思います」
お互いに違う方向を向きながらも、お父様とお母様は繋がっている。二人の会話に、私はそんなことを思っていた。
それに、なんとなくいい雰囲気のような気がする。もしかしたら、二人が私のために踏み出してくれた一歩は、とても大きなものだったのかもしれない。
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