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29.我慢の限界
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お父様とお母様は、当たり前のように私の部屋で生活するようになった。
朝仕事に行ったお父様は夜にはここに帰って来て、三人でお風呂に入って三人で就寝する。その流れが当たり前になったのだ。
そんな幸せな生活の中で、私の頭の怪我はすっかりと完治した。もう痛みも残っていないし大丈夫だ。
「本当に大丈夫なのだろうか?」
「そうですね……心配です」
しかし、お父様もお母様もこんな感じだった。
私のことを心配してくれているのはわかるのだが、いくらなんでも過保護である。そもそもお医者様も問題ないと言っているのだから、疑う余地はないと思うのだが。
「お嬢様、お二人はずっとこんな感じなのですか?」
「はい、そうなんです」
あの件以来、私の身の周りの世話を基本的に担当することになったクローシャさんは、二人の様子に少し困惑しているようだった。
私が階段から転げ落ちるまで、二人はこのように愛を表すことがなかった。愛は確かにあったが、それが表に出てくることはなかったのである。
だから、クローシャさんは驚いているのだろう。二人の変わりように。
「でも、流石にそろそろ体をめいっぱい動かしたい気分です。外でお茶したりはできますけど、やっぱり物足りなくて」
「ファルミルお嬢様は、走るのが好きでしたね?」
「はい、体を動かすのは好きです」
「なるほど、今の生活は苦しいと」
「怪我をしていた時はもちろんわかります。でも、治ったのにこの生活というのはつまらないというか……」
「まあ、そうですよね……」
お父様とお母様のことは大好きではあるが、流石に今回は私も愚痴を言いたくなった。
いつまでもこのままというのは、流石に勘弁してもらいたい。私も、偶には外に出て走り回ったりしたいのだ。
「とはいえ、私から進言するのは難しいんですよね……立場が立場ですから」
「そうですよね……まあ、それなら私が言うしかないんですよね」
「何か憂いが?」
「その……二人を悲しませてしまいそうで」
「ああ、なるほど……」
二人に今の私の気持ちを打ち明ける。それは、二人を傷つけてしまう可能性があった。
だから、許してくれるまでは待とうと思っていたのだが、そろそろ我慢の限界だ。ここは、ガツンと言わせてもらうことにしよう。
「お父様、お母様、少しいいですか?」
「む?」
「ファルミル、どうかしたの?」
「私、流石に我慢の限界です」
「な、何?」
「ど、どういうことかしら……?」
私が少し語気を強めて言葉を放つと、お父様とお母様が驚いたような顔をした。同時に悲しそうである。
こういう顔をさせたくないから、私は我慢していたのだがもう仕方ない。このままだと、私はずっとベッドの上だ。
朝仕事に行ったお父様は夜にはここに帰って来て、三人でお風呂に入って三人で就寝する。その流れが当たり前になったのだ。
そんな幸せな生活の中で、私の頭の怪我はすっかりと完治した。もう痛みも残っていないし大丈夫だ。
「本当に大丈夫なのだろうか?」
「そうですね……心配です」
しかし、お父様もお母様もこんな感じだった。
私のことを心配してくれているのはわかるのだが、いくらなんでも過保護である。そもそもお医者様も問題ないと言っているのだから、疑う余地はないと思うのだが。
「お嬢様、お二人はずっとこんな感じなのですか?」
「はい、そうなんです」
あの件以来、私の身の周りの世話を基本的に担当することになったクローシャさんは、二人の様子に少し困惑しているようだった。
私が階段から転げ落ちるまで、二人はこのように愛を表すことがなかった。愛は確かにあったが、それが表に出てくることはなかったのである。
だから、クローシャさんは驚いているのだろう。二人の変わりように。
「でも、流石にそろそろ体をめいっぱい動かしたい気分です。外でお茶したりはできますけど、やっぱり物足りなくて」
「ファルミルお嬢様は、走るのが好きでしたね?」
「はい、体を動かすのは好きです」
「なるほど、今の生活は苦しいと」
「怪我をしていた時はもちろんわかります。でも、治ったのにこの生活というのはつまらないというか……」
「まあ、そうですよね……」
お父様とお母様のことは大好きではあるが、流石に今回は私も愚痴を言いたくなった。
いつまでもこのままというのは、流石に勘弁してもらいたい。私も、偶には外に出て走り回ったりしたいのだ。
「とはいえ、私から進言するのは難しいんですよね……立場が立場ですから」
「そうですよね……まあ、それなら私が言うしかないんですよね」
「何か憂いが?」
「その……二人を悲しませてしまいそうで」
「ああ、なるほど……」
二人に今の私の気持ちを打ち明ける。それは、二人を傷つけてしまう可能性があった。
だから、許してくれるまでは待とうと思っていたのだが、そろそろ我慢の限界だ。ここは、ガツンと言わせてもらうことにしよう。
「お父様、お母様、少しいいですか?」
「む?」
「ファルミル、どうかしたの?」
「私、流石に我慢の限界です」
「な、何?」
「ど、どういうことかしら……?」
私が少し語気を強めて言葉を放つと、お父様とお母様が驚いたような顔をした。同時に悲しそうである。
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