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24.兄からの情報
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嫁いできてから、私はマグナスとラナーシャ以外のドルピード伯爵家の人間と接する機会はなかった。
彼の両親も兄であるハワード様も、決してこちらの屋敷を訪ねてこなかったのである。
そんな私は、今日やっと二人の兄であるハワード様と対面した。マグナス様によく似たその男性は、堂々とした態度で私達の対面の椅子に座っている。
「マグナスよ。お前の推測を俺なりに調べてみたが、カルロム伯爵と母上には繋がりがなかった。だが面白いことがわかったぞ?」
「面白いこと?」
ハワード様は、あっさりとマグナスの推測を否定した後に笑みを浮かべた。
彼は今日、大きな情報を掴んだとこちらを訪ねてきた。それはどうやら、マグナスの推測を調べた結果得られたものであるようだ。
「お前達の婚約だが、どうやら母上が主導で進めていたらしい。カルロム伯爵とよく話し合って決まったようだ」
「……二人に繋がりがなかったのに、ですか?」
「ああ。明らかにおかしい。二人は大した繋がりがないにも関わらず縁談を進めた。そこに何かしらの足掛かりがあると俺は睨んだのだ」
ハワード様からもたらされた情報は、確かに不思議なものだった。
やはり二人の間には、何かがあるのかもしれない。二つの事件を通して繋がっているというマグナスの推測は、正しいのではないだろうか。
「そこで調べた結果、二人が同日にとある町まで出向いているということがわかった。ラグナメルというその町は、エルヴィッド公爵の領地の町だ。それなりに大きい町ではあるようだが、この町には少々きな臭い噂がある」
「噂、ですか?」
「闇市だ」
「闇市……」
私とマグナスは、ハワード様の言葉に顔を見合わせた。
ハワード様の口振りからして、掴めたのは同時に同じ町に来ていたということだけなのだろう。
だが、その二人の微々たる繋がりは、その町で流れている噂と合わせると一つの推測が立てられそうだ。
「つまり二人は、闇市で出会ったということですか?」
「そういうことになるだろう。アラティア嬢。俺はその可能性が高いと思っている。同時に、あなたの母やラナーシャの母は、その闇市で取引された何かが原因かもしれない」
「兄上、何か心当たりでもあるのですか?」
ハワード様は、マグナスの言葉に少しだけ黙った。それは話すのを躊躇っているように見える。
もしかしたら、私達は知るべきではないことを知ろうとしているのだろうか。しかし母の死の謎を解き明かすためだ。躊躇ってなんかいられない。
「ハワード様、話してください。一体何を知っているんですか?」
「……透明な毒だ」
「透明な毒?」
「透明な毒と呼ばれる検知できない毒がある。昔からまことしやかに囁かれている噂だ。俺も実在するなどとは思っていなかった。しかしもしかしたら、その毒は実在するのかもしれない。忌々しいことではあるが……」
「これは?」
そこでハワード様は、懐から一通の封筒を取り出した。
そこには見慣れない文字が書いてある。これは異国の言語だろうか。
「これは俺が懇意にしている神父からもらったものだ。神父の名誉のために言っておくが、彼はそれを懺悔しに来た者から預かっただけで、そこには行っていないそうだ。いやそもそも、それが本物であるのかもわからない」
「これは、闇市への招待状ですか?」
「そういうことになるだろう。本来であれば、俺が行きたい所ではあるが、母上の目がある以上、お前達に頼むしかない。そこにいって真偽を確かめてきてくれ」
ハワード様は、私達に対して申し訳なさそうにしていた。それはきっと、ここに危険があると思っているからなのだろう。
しかし、私もマグナスも答えは決まっていた。例え危険であろうとも、真実を解き明かす。それはこの調査を始めた時から、決めていたことなのだ。
彼の両親も兄であるハワード様も、決してこちらの屋敷を訪ねてこなかったのである。
そんな私は、今日やっと二人の兄であるハワード様と対面した。マグナス様によく似たその男性は、堂々とした態度で私達の対面の椅子に座っている。
「マグナスよ。お前の推測を俺なりに調べてみたが、カルロム伯爵と母上には繋がりがなかった。だが面白いことがわかったぞ?」
「面白いこと?」
ハワード様は、あっさりとマグナスの推測を否定した後に笑みを浮かべた。
彼は今日、大きな情報を掴んだとこちらを訪ねてきた。それはどうやら、マグナスの推測を調べた結果得られたものであるようだ。
「お前達の婚約だが、どうやら母上が主導で進めていたらしい。カルロム伯爵とよく話し合って決まったようだ」
「……二人に繋がりがなかったのに、ですか?」
「ああ。明らかにおかしい。二人は大した繋がりがないにも関わらず縁談を進めた。そこに何かしらの足掛かりがあると俺は睨んだのだ」
ハワード様からもたらされた情報は、確かに不思議なものだった。
やはり二人の間には、何かがあるのかもしれない。二つの事件を通して繋がっているというマグナスの推測は、正しいのではないだろうか。
「そこで調べた結果、二人が同日にとある町まで出向いているということがわかった。ラグナメルというその町は、エルヴィッド公爵の領地の町だ。それなりに大きい町ではあるようだが、この町には少々きな臭い噂がある」
「噂、ですか?」
「闇市だ」
「闇市……」
私とマグナスは、ハワード様の言葉に顔を見合わせた。
ハワード様の口振りからして、掴めたのは同時に同じ町に来ていたということだけなのだろう。
だが、その二人の微々たる繋がりは、その町で流れている噂と合わせると一つの推測が立てられそうだ。
「つまり二人は、闇市で出会ったということですか?」
「そういうことになるだろう。アラティア嬢。俺はその可能性が高いと思っている。同時に、あなたの母やラナーシャの母は、その闇市で取引された何かが原因かもしれない」
「兄上、何か心当たりでもあるのですか?」
ハワード様は、マグナスの言葉に少しだけ黙った。それは話すのを躊躇っているように見える。
もしかしたら、私達は知るべきではないことを知ろうとしているのだろうか。しかし母の死の謎を解き明かすためだ。躊躇ってなんかいられない。
「ハワード様、話してください。一体何を知っているんですか?」
「……透明な毒だ」
「透明な毒?」
「透明な毒と呼ばれる検知できない毒がある。昔からまことしやかに囁かれている噂だ。俺も実在するなどとは思っていなかった。しかしもしかしたら、その毒は実在するのかもしれない。忌々しいことではあるが……」
「これは?」
そこでハワード様は、懐から一通の封筒を取り出した。
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ハワード様は、私達に対して申し訳なさそうにしていた。それはきっと、ここに危険があると思っているからなのだろう。
しかし、私もマグナスも答えは決まっていた。例え危険であろうとも、真実を解き明かす。それはこの調査を始めた時から、決めていたことなのだ。
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