「妹にしか思えない」と婚約破棄したではありませんか。今更私に縋りつかないでください。

木山楽斗

文字の大きさ
63 / 90

63.一瞬の行動

「……アルペリオ侯爵令息」
「レミアナ? どうかしたのかい?」
「いえ……」

 アルペリオ侯爵令息に拘束されていた私は、ゆっくりとため息をついた。
 ことを実行に移すためには、覚悟がいる。私は今、その覚悟を決めたのだ。

 幸いにも、こういう時にどうすればいいのかはわかっている。ギルドルア様が、以前同じ目に合っていたからだ。
 しかし、私が全て同じようにできるという訳ではない。非力な私では、アルペリオ侯爵令息に力負けしかねないからだ。
 故に私は、彼を油断させる必要がある。その隙をついて、彼の拘束から抜け出すのだ。

「あなたと一緒に行きます」
「何?」
「あなたと一緒に行くと言ったんです。それがアルペリオ兄様の望みなのでしょう?」
「レミアナ……」

 私の言葉に、アルペリオ侯爵令息は驚いたような顔をしていた。
 もしかしたら、彼も私がこういう回答を返すとは思っていなかったのかもしれない。
 しかしそれは好都合だ。今彼は呆気に取られている。その隙を、私は見逃さない。

「……クルレイド様!」
「なっ……!」

 私は、すっかり力が抜けていたアルペリオ侯爵令息の腕を振り払った。
 そのまま私は、クルレイド様がいる方向に向かう。その方向では、クルレイド様が兵士の剣を抜いている。この場において、誰よりも早く彼は行動を開始していたのだ。
 それは私と通じ合っていたからだろう。他の人は、私がこんな行動をすることは知らなかった。クルレイド様だけが、こうなることをわかっていたのである。

「レミアナ……僕を騙したのか!」

 私の後方にいるアルペリオ侯爵令息は、周囲を見渡していた。
 恐らく彼は、人質を探しているのだろう。それを防ぐためには、その右手に携えたナイフをなんとかしなければならない。

「……させるか!」
「あがっ!」

 私がそう思った瞬間、クルレイド様がその件をアルペリオ侯爵令息の右腕に振り払った。
 ただ彼は、切ることを選んではいない。あくまでも拘束するために、表面で叩きつけることを選んだようだ。

「くそっ……!」
「動くなっ!」
「おごっ!」

 クルレイド様は、次にアルペリオ侯爵令息の脇腹に剣を叩きつけた。
 それによって、アルペリオ侯爵令息はバランスを失う。彼は地面に倒れたのだ。

「アルペリオ侯爵令息、これ以上の抵抗は無駄だ」
「……く、くそうっ!」

 次の瞬間、クルレイド様はアルペリオ侯爵令息の首元に剣を持ってきた。
 最早彼は、抵抗することができないだろう。クルレイド様は一瞬で、アルペリオ侯爵令息を制圧したのである。
感想 95

あなたにおすすめの小説

「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった

歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。 だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」 追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。 一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。 誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。 「その言葉は、もう翻訳できません」

【完結】私を裏切った不倫夫に「どなたですか?」と微笑むまで 〜没落令嬢の復讐劇〜

恋せよ恋
恋愛
「早くあんな女と別れて、可愛い子と一緒になりたいよ」 不倫中の夫が笑う声を聞き、絶望の中で事故に遭うジェシカ。 結婚五年目に授かったお腹の子を失った彼女は、 「記憶を失ったフリ」で夫と地獄の婚家を捨てることを決意。 元男爵令嬢の薄幸ヒロインは、修道院で静かに時を過ごす。 独り身領主の三歳の男の子に懐かれ、なぜか領主まで登場! 無実の罪をなすりつけ、私を使い潰した報いを受けなさい。 記憶喪失を装った没落令嬢による、「ざまぁ」が幕を開ける! ※本作品には、馬車事故による流産の描写が含まれます。  苦手な方はご注意ください。主人公が絶対に幸せになる  物語ですので、安心してお読みいただければ幸いです。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

【完】婚約してから十年、私に興味が無さそうなので婚約の解消を申し出たら殿下に泣かれてしまいました

さこの
恋愛
 婚約者の侯爵令嬢セリーナが好きすぎて話しかけることができなくさらに近くに寄れないジェフェリー。  そんなジェフェリーに嫌われていると思って婚約をなかった事にして、自由にしてあげたいセリーナ。  それをまた勘違いして何故か自分が選ばれると思っている平民ジュリアナ。  あくまで架空のゆる設定です。 ホットランキング入りしました。ありがとうございます!! 2021/08/29 *全三十話です。執筆済みです

お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました

さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア 姉の婚約者は第三王子 お茶会をすると一緒に来てと言われる アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる ある日姉が父に言った。 アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね? バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た

妹が私の婚約者を奪った癖に、返したいと言ってきたので断った

ルイス
恋愛
伯爵令嬢のファラ・イグリオは19歳の誕生日に侯爵との婚約が決定した。 昔からひたむきに続けていた貴族令嬢としての努力が報われた感じだ。 しかし突然、妹のシェリーによって奪われてしまう。 両親もシェリーを優先する始末で、ファラの婚約は解消されてしまった。 「お前はお姉さんなのだから、我慢できるだろう? お前なら他にも良い相手がきっと見つかるさ」 父親からの無常な一言にファラは愕然としてしまう。彼女は幼少の頃から自分の願いが聞き届けられた ことなど1つもなかった。努力はきっと報われる……そう信じて頑張って来たが、今回の件で心が折れそうになっていた。 だが、ファラの努力を知っていた幼馴染の公爵令息に助けられることになる。妹のシェリーは侯爵との婚約が思っていたのと違うということで、返したいと言って来るが……はあ? もう遅いわよ。

婚約者は妹のような幼馴染みを何より大切にしているので、お飾り妻予定な令嬢は幸せになることを諦めた……はずでした。

待鳥園子
恋愛
伯爵令嬢アイリーンの婚約者であるセシルの隣には『妹のような幼馴染み』愛らしい容姿のデイジーが居て、身分差で結婚出来ない二人が結ばれるためのお飾り妻にされてしまうことが耐えられなかった。 そして、二人がふざけて婚姻届を書いている光景を見て、アイリーンは自分の我慢が限界に達そうとしているのを感じていた……のだけど!?

心を病んでいるという嘘をつかれ追放された私、調香の才能で見返したら調香が社交界追放されました

er
恋愛
心を病んだと濡れ衣を着せられ、夫アンドレに離縁されたセリーヌ。愛人と結婚したかった夫の陰謀だったが、誰も信じてくれない。失意の中、亡き母から受け継いだ調香の才能に目覚めた彼女は、東の別邸で香水作りに没頭する。やがて「春風の工房」として王都で評判になり、冷酷な北方公爵マグナスの目に留まる。マグナスの支援で宮廷調香師に推薦された矢先、元夫が妨害工作を仕掛けてきたのだが?

姉の所為で全てを失いそうです。だから、その前に全て終わらせようと思います。もちろん断罪ショーで。

しげむろ ゆうき
恋愛
 姉の策略により、なんでも私の所為にされてしまう。そしてみんなからどんどんと信用を失っていくが、唯一、私が得意としてるもので信じてくれなかった人達と姉を断罪する話。 全12話