30 / 100
30.変身の謎⑧
しおりを挟む
「あ、お母さん、腕がだるいよね?」
「え? ああ、大丈夫。リルフは軽いから」
リルフの質問に、私は少しだけ嘘をついた。腕は、結構だるくなっているのだ。
言っている通り、この子は軽い。それでも、私の腕はかなり疲れているようだ。
恐らく、寝ている間にリルフは人間の姿になった。ということは、結構な時間腕枕していただろう。
だから、疲れを感じているのかもしれない。それなのに、強がったのは少し失敗だっただろうか。
「……今の姿だと、流石に重いんじゃない?」
「まあ、多少は重いけど……」
「それじゃあ、退かないと……」
「ありがとう、リルフ」
リルフは、布団に少し潜り込み、頭を腕から退けてくれた。結構な開放感がある。やはり、腕は結構疲れていたようだ。
恐らく、リルフは私が本当は疲れていることを見抜いていたのだろう。そんな風に見抜かれてしまうのは、私がまだまだ未熟であることの証拠だ。
強がらないか、悟られないか、そのどちらかであるべきだっただろう。リルフに余計な気を遣わせるなんて、最も駄目なことである。
「リルフは、優しい子だね」
「え?」
「そう思ったんだ」
「そ、そうなんだ……」
私は、リルフの頭を自分の胸に引き寄せて、その頭をゆっくりと撫でた。
この子は、優しい子だ。こんな子に慕われているなんて、私はなんて幸せなのだろう。
「……そういえば、今日はミルーシャさんの所に行くんだよね?」
「え? あ、うん。そのつもりだよ」
「えっと……ミルーシャさんのこと、少し教えてもらってもいいかな? ボク、あんまりわかっている訳ではないから」
「あれ? そうだったかな?」
リルフに言われて、私は少し記憶を辿った。そういえば、この子にはミルーシャやあメルラムのことをあまり詳しく話していなかったかもしれない。
「えっと、ミルーシャとそれからメルラムは、この町……アルバナスというんだけど、そこの領主の娘と息子なんだ」
「領主……確か、町の支配者ということだよね?」
「えっと……まあ、そんな感じかな? ミルーシャがお姉ちゃんで、メルラムが弟で……えっと、私とは……昔からの知り合いなんだ」
「そうなんだ」
二人のことを話していて、私はあることに気がついた。リルフには、私の過去について話していないのだ。
別に、それを話すことは構わない。別に黙っておく必要がある訳ではないからだ。
ただ、今のこの和やかな空気で話すことは憚られた。もう少し、意識もはっきりとしていた状態で、伝えるべきだろう。
という訳で、私の過去は後で話すことにした。引っ張っても仕方ないので、ミルーシャの所から帰って来てから特に予定がなければ、話すことにしよう。
「え? ああ、大丈夫。リルフは軽いから」
リルフの質問に、私は少しだけ嘘をついた。腕は、結構だるくなっているのだ。
言っている通り、この子は軽い。それでも、私の腕はかなり疲れているようだ。
恐らく、寝ている間にリルフは人間の姿になった。ということは、結構な時間腕枕していただろう。
だから、疲れを感じているのかもしれない。それなのに、強がったのは少し失敗だっただろうか。
「……今の姿だと、流石に重いんじゃない?」
「まあ、多少は重いけど……」
「それじゃあ、退かないと……」
「ありがとう、リルフ」
リルフは、布団に少し潜り込み、頭を腕から退けてくれた。結構な開放感がある。やはり、腕は結構疲れていたようだ。
恐らく、リルフは私が本当は疲れていることを見抜いていたのだろう。そんな風に見抜かれてしまうのは、私がまだまだ未熟であることの証拠だ。
強がらないか、悟られないか、そのどちらかであるべきだっただろう。リルフに余計な気を遣わせるなんて、最も駄目なことである。
「リルフは、優しい子だね」
「え?」
「そう思ったんだ」
「そ、そうなんだ……」
私は、リルフの頭を自分の胸に引き寄せて、その頭をゆっくりと撫でた。
この子は、優しい子だ。こんな子に慕われているなんて、私はなんて幸せなのだろう。
「……そういえば、今日はミルーシャさんの所に行くんだよね?」
「え? あ、うん。そのつもりだよ」
「えっと……ミルーシャさんのこと、少し教えてもらってもいいかな? ボク、あんまりわかっている訳ではないから」
「あれ? そうだったかな?」
リルフに言われて、私は少し記憶を辿った。そういえば、この子にはミルーシャやあメルラムのことをあまり詳しく話していなかったかもしれない。
「えっと、ミルーシャとそれからメルラムは、この町……アルバナスというんだけど、そこの領主の娘と息子なんだ」
「領主……確か、町の支配者ということだよね?」
「えっと……まあ、そんな感じかな? ミルーシャがお姉ちゃんで、メルラムが弟で……えっと、私とは……昔からの知り合いなんだ」
「そうなんだ」
二人のことを話していて、私はあることに気がついた。リルフには、私の過去について話していないのだ。
別に、それを話すことは構わない。別に黙っておく必要がある訳ではないからだ。
ただ、今のこの和やかな空気で話すことは憚られた。もう少し、意識もはっきりとしていた状態で、伝えるべきだろう。
という訳で、私の過去は後で話すことにした。引っ張っても仕方ないので、ミルーシャの所から帰って来てから特に予定がなければ、話すことにしよう。
25
あなたにおすすめの小説
憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~
紅月シン
ファンタジー
聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。
いや嘘だ。
本当は不満でいっぱいだった。
食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。
だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。
しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。
そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。
二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。
だが彼女は知らなかった。
三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。
知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。
※完結しました。
※小説家になろう様にも投稿しています
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
石しか生成出来ないと追放されましたが、それでOKです!
寿明結未(旧・うどん五段)
ファンタジー
夏祭り中に異世界召喚に巻き込まれた、ただの一般人の桜木ユリ。
皆がそれぞれ素晴らしいスキルを持っている中、桜木の持つスキルは【石を出す程度の力】しかなく、余りにも貧相なそれは皆に笑われて城から金だけ受け取り追い出される。
この国ではもう直ぐ戦争が始まるらしい……。
召喚された3人は戦うスキルを持っていて、桜木だけが【石を出す程度の能力】……。
確かに貧相だけれど――と思っていたが、意外と強いスキルだったようで!?
「こうなったらこの国を抜け出して平和な国で就職よ!」
気合いを入れ直した桜木は、商業ギルド相手に提案し、国を出て違う場所で新生活を送る事になるのだが、辿り着いた国にて、とある家族と出会う事となる――。
★暫く書き溜めが結構あるので、一日三回更新していきます! 応援よろしくお願いします!
★カクヨム・小説家になろう・アルファポリスで連載中です。
中国でコピーされていたので自衛です。
「天安門事件」
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
めんどくさがり屋の異世界転生〜自由に生きる〜
ゆずゆ
ファンタジー
※ 話の前半を間違えて消してしまいました
誠に申し訳ございません。
—————————————————
前世100歳にして幸せに生涯を遂げた女性がいた。
名前は山梨 花。
他人に話したことはなかったが、もし亡くなったら剣と魔法の世界に転生したいなと夢見ていた。もちろん前世の記憶持ちのままで。
動くがめんどくさい時は、魔法で移動したいなとか、
転移魔法とか使えたらもっと寝れるのに、
休みの前の日に時間止めたいなと考えていた。
それは物心ついた時から生涯を終えるまで。
このお話はめんどくさがり屋で夢見がちな女性が夢の異世界転生をして生きていくお話。
—————————————————
最後まで読んでくださりありがとうございました!!
婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ
あげは
ファンタジー
「私は、ユミエラとの婚約を破棄する!」
学院卒業記念パーティーで、婚約者である王太子アルフリードに突然婚約破棄された、ユミエラ・フォン・アマリリス公爵令嬢。
家族にも愛されていなかったユミエラは、王太子に婚約破棄されたことで利用価値がなくなったとされ家を勘当されてしまう。
しかし、ユミエラに特に気にした様子はなく、むしろ喜んでいた。
これまでの生活に嫌気が差していたユミエラは、元孤児で転生者の侍女ミシェルだけを連れ、その日のうちに家を出て人のいない森の奥に向かい、森の中でカフェを開くらしい。
「さあ、ミシェル! 念願のスローライフよ! 張り切っていきましょう!」
王都を出るとなぜか国を守護している神獣が待ち構えていた。
どうやら国を捨てユミエラについてくるらしい。
こうしてユミエラは、転生者と神獣という何とも不思議なお供を連れ、優雅なスローライフを楽しむのであった。
一方、ユミエラを追放し、神獣にも見捨てられた王国は、愚かな王太子のせいで混乱に陥るのだった――。
なろう・カクヨムにも投稿
魔物をお手入れしたら懐かれました -もふプニ大好き異世界スローライフ-
うっちー(羽智 遊紀)
ファンタジー
3巻で完結となっております!
息子から「お父さん。散髪する主人公を書いて」との提案(無茶ぶり)から始まった本作品が書籍化されて嬉しい限りです!
あらすじ:
宝生和也(ほうしょうかずや)はペットショップに居た犬を助けて死んでしまう。そして、創造神であるエイネに特殊能力を与えられ、異世界へと旅立った。
彼に与えられたのは生き物に合わせて性能を変える「万能グルーミング」だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる