刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。繁栄も滅亡も、私の導き次第で決まるようです。

木山楽斗

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41.怪しげな集団⑤

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 私は、兄貴に事情を説明するために宿屋の自室まで戻って来ていた。エルッサさんだけは、こんな時でもお客さんが来るかもしれないと言って受付に行った。という訳で、この場には四人だ。

「つまり……この子は、竜という生物であり、特別な存在ということか」
「うん。まあ、そういうことなんだ。多分、あいつらが狙ってきたのも、その辺りのことが関係しているんじゃないかな?」
「そう考えるのが自然だろうな……」

 事情を話した後、兄貴は少し考え始めた。騎士として、この事件をどうするべきか考えているのだろう。
 その隙に、私はリルフの方に視線を向ける。事件があってから、リルフは暗い表情をしている。当然といえば当然なのだが、それが気になったのだ。

「リルフ? 大丈夫?」
「え? あ、うん……」
「大丈夫ではなさそうだね……」
「あっ……お母さん……」

 私は、リルフのことをそっと抱きしめた。口で大丈夫と言われても、それはまったく信じられなかった。その表情や態度に、不安が現れていたからだ。
 訳のわからない者達に狙われているという事実は、もちろん怖いだろう。私だって、あんな集団に追いかけられたら冷静でいられるはずはない。

 それに、この子がずっと悩んでいたことも関係しているだろう。この子は、自分が何者かはゆっくりと知っていけばいいと思っていた。そのため、そのことはあまり気にしていなかったはずである。
 ところが、今回の出来事で嫌でもそれを考えればならなくなった。あの者達が何故狙ってくるのかという疑問は当然湧いてくるからだ。

 以上のことから、リルフは今とても不安なはずである。私が抱きしめることで、少しでもそれが薄れてくれることを願うばかりだ。

「お母さん……」
「大丈夫、大丈夫だから……」

 リルフは、私の胸にゆっくりと顔を預けてきた。そんなリルフの頭を、私はゆっくりと撫でる。
 こういう時に、何を言えばいいのか、私にはよくわからなかった。だから、口から出てきたのは大丈夫ということばだけだった。
 もっと気が利いたことがいえればいいのに。私は、自分の人生経験のなさを呪うのだった。

「……」
「……兄貴? どうかしたの?」
「え? いや、なんでもない……」

 そんな私とリルフの様子を、兄貴は少し不思議そうに見ていた。
 そういえば、兄貴の前ではまだ母親として振る舞っていなかった。だから、少し驚いたのだろうか。
 だが、直後に兄貴が少し気まずそうな顔になったことが気になった。私は知っている。兄貴がそういう顔をする時は、言いにくいことがある時だと。
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