75 / 100
75.狙われる竜⑦
しおりを挟む
私とリルフは、ジャザーンに連れられて目地の外れまで来ていた。そこで待っていたのは、ローブと仮面を身に着けた集団である。
要するに、ジャザーンは私達を仲間の元へと連れてきたということだ。宿屋の前では危害を加えるつもりがないと言っていたが、それはここで数の優位に立ちたかったからということなのかもしれない。
「さて、まあ、これだけの人数を揃えておいて信じてもらえないかもしれませんが、私は未だにあなた達を傷つけようとは思っていないのです」
「何?」
「話がしたいと言ったでしょう。あれは紛れもない真実なのです。どうか、私の話をお聞きください」
ジャザーンの言葉は、本人も言っている通りまったく信頼できなかった。この状況で、危害を加えるつもりがないなんて、あるはずがない。
もし武力を行使しないとしても、十中八九何かしてくるつもりなのは間違いないだろう。そうでなければ、こんな所までわざわざ連れてきたりはしないはずである。
「フェリナさん、あなたは王都に行かれたようですが……リルフさんの真実を聞かれましたか? 聞かれましたよね? そのために、あなた達は王都に行ったのですから」
「そうだとしたら……なんだっていうの?」
「リルフさんは、転生竜……この国の命運を握っている存在です。とても重大な存在です」
「……」
ジャザーンは、私に対して大きな身振り手振りを交えながら言葉をかけてきた。その表情は、悪意に満ちている。彼は、何か嫌なことを考えているようだ。
「その転生竜が、どのような性質になるのか。それは、竜の母親にかかっているそうですね……つまりは、あなたが関係しているということになります」
「それがどうしたというの?」
「怖くはありませんか? あなたは国の運命を握っているんですよ? あなたの言動一つで、国が滅びるかもしれないのです。恐怖を感じてはいないのですか?」
「……恐怖を感じていない訳じゃない。でも、それがどうしたというんだ?」
私は、ジャザーンの質問の意図がよくわかっていなかった。
もちろん、私が国の運命を握っているという状況には恐怖を感じている。だが、そうだとしてもなんだというのだろうか。恐怖を感じていたとしても、彼らに何の関係があるというのだろうか。
「なるほど……強い精神力を持っているようですね。それに押し潰されていない……私の言葉に揺さぶられていないということなのでしょうね……」
「何?」
「もし、あなたがそこに恐怖を感じて押し潰されていたなら、転生竜に影響が出るはずです。それが出ないということはそういうことなのでしょう」
「なっ……」
ジャザーンのさらなる言葉に、私は彼の意図を理解した。
恐らく、彼は私を揺さぶって、リルフを悪い方向へと導こうとしているのだ。彼らの目的は、終末である。それを実行するために、私を通してリルフを変化させようとしているのだ。
どうやら、私は心を強く持っていなければならないようである。この男に何を言われようとも、揺さぶられてはならないのだ。
要するに、ジャザーンは私達を仲間の元へと連れてきたということだ。宿屋の前では危害を加えるつもりがないと言っていたが、それはここで数の優位に立ちたかったからということなのかもしれない。
「さて、まあ、これだけの人数を揃えておいて信じてもらえないかもしれませんが、私は未だにあなた達を傷つけようとは思っていないのです」
「何?」
「話がしたいと言ったでしょう。あれは紛れもない真実なのです。どうか、私の話をお聞きください」
ジャザーンの言葉は、本人も言っている通りまったく信頼できなかった。この状況で、危害を加えるつもりがないなんて、あるはずがない。
もし武力を行使しないとしても、十中八九何かしてくるつもりなのは間違いないだろう。そうでなければ、こんな所までわざわざ連れてきたりはしないはずである。
「フェリナさん、あなたは王都に行かれたようですが……リルフさんの真実を聞かれましたか? 聞かれましたよね? そのために、あなた達は王都に行ったのですから」
「そうだとしたら……なんだっていうの?」
「リルフさんは、転生竜……この国の命運を握っている存在です。とても重大な存在です」
「……」
ジャザーンは、私に対して大きな身振り手振りを交えながら言葉をかけてきた。その表情は、悪意に満ちている。彼は、何か嫌なことを考えているようだ。
「その転生竜が、どのような性質になるのか。それは、竜の母親にかかっているそうですね……つまりは、あなたが関係しているということになります」
「それがどうしたというの?」
「怖くはありませんか? あなたは国の運命を握っているんですよ? あなたの言動一つで、国が滅びるかもしれないのです。恐怖を感じてはいないのですか?」
「……恐怖を感じていない訳じゃない。でも、それがどうしたというんだ?」
私は、ジャザーンの質問の意図がよくわかっていなかった。
もちろん、私が国の運命を握っているという状況には恐怖を感じている。だが、そうだとしてもなんだというのだろうか。恐怖を感じていたとしても、彼らに何の関係があるというのだろうか。
「なるほど……強い精神力を持っているようですね。それに押し潰されていない……私の言葉に揺さぶられていないということなのでしょうね……」
「何?」
「もし、あなたがそこに恐怖を感じて押し潰されていたなら、転生竜に影響が出るはずです。それが出ないということはそういうことなのでしょう」
「なっ……」
ジャザーンのさらなる言葉に、私は彼の意図を理解した。
恐らく、彼は私を揺さぶって、リルフを悪い方向へと導こうとしているのだ。彼らの目的は、終末である。それを実行するために、私を通してリルフを変化させようとしているのだ。
どうやら、私は心を強く持っていなければならないようである。この男に何を言われようとも、揺さぶられてはならないのだ。
12
あなたにおすすめの小説
憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~
紅月シン
ファンタジー
聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。
いや嘘だ。
本当は不満でいっぱいだった。
食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。
だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。
しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。
そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。
二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。
だが彼女は知らなかった。
三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。
知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。
※完結しました。
※小説家になろう様にも投稿しています
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
魔物をお手入れしたら懐かれました -もふプニ大好き異世界スローライフ-
うっちー(羽智 遊紀)
ファンタジー
3巻で完結となっております!
息子から「お父さん。散髪する主人公を書いて」との提案(無茶ぶり)から始まった本作品が書籍化されて嬉しい限りです!
あらすじ:
宝生和也(ほうしょうかずや)はペットショップに居た犬を助けて死んでしまう。そして、創造神であるエイネに特殊能力を与えられ、異世界へと旅立った。
彼に与えられたのは生き物に合わせて性能を変える「万能グルーミング」だった。
めんどくさがり屋の異世界転生〜自由に生きる〜
ゆずゆ
ファンタジー
※ 話の前半を間違えて消してしまいました
誠に申し訳ございません。
—————————————————
前世100歳にして幸せに生涯を遂げた女性がいた。
名前は山梨 花。
他人に話したことはなかったが、もし亡くなったら剣と魔法の世界に転生したいなと夢見ていた。もちろん前世の記憶持ちのままで。
動くがめんどくさい時は、魔法で移動したいなとか、
転移魔法とか使えたらもっと寝れるのに、
休みの前の日に時間止めたいなと考えていた。
それは物心ついた時から生涯を終えるまで。
このお話はめんどくさがり屋で夢見がちな女性が夢の異世界転生をして生きていくお話。
—————————————————
最後まで読んでくださりありがとうございました!!
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる