76 / 100
76.狙われる竜⑧
しおりを挟む
「そうですね……それでは、別の方向から攻めるとしましょうか。転生竜のもう一つの性質について、あなたはどう思われていますか?」
「もう一つの性質?」
「転生の性質ですよ」
ジャザーンの言葉に、私は少しだけ驚いた。その部分は、私が無性に気になっていた部分だからだ。
どうして気になっているのかは、自分でもわかっていない。だが、その言葉を聞いただけで、私の体は思わず強張ってしまうのだ。
「おや、何か思う所があるようですね?」
「そ、そんなことはない……」
「そうでしょうか?」
そんな私の変化に、ジャザーンはすぐに気づいた。私は自分の失敗を悟った。これは、彼に読み取られてはならないことだった。
「転生竜は、何度も転生を重ねている。その事実は、奇妙なものですよねぇ? リルフさんはあのような姿ですが、本当は長い年月を過ごしている。それがあなたも、気になっているのでしょうか?」
「それは……」
「怖いですか? それとも、悲しいのですか? まあ、どちらにしても、あなたの心にリルフさんに対する疑念が芽生えていることは、確かなことであるようですね……」
「そ、そんなことは……」
ジャザーンの言葉を、私はすぐに否定することができなかった。それは、私自身の心を、彼に言い当てられてしまったからだ。
転生竜の転生するという性質。そこに私は恐怖、あるいは嫌悪感のようなものを覚えているのだ。
「リルフさん、これがあなたの母親の答えですよ。わかりますか? あなたの母親は、あなたを恐れている」
「お母さん……」
「リ、リルフ……」
そこで、ジャザーンはリルフに言葉をかけた。その言葉を聞いて、リルフは私の方を見てくる。
その不安そうな視線に、私はどうすればいいのかわからなかった。この気持ちを誤魔化すこともできず、ただ見つめ返すことしかできないのだ。
「……わかっていたよ。あの話を聞いてから、お母さんはボクから少しだけ距離を取っていたよね」
「え?」
「意識してはいなかったのかもしれないけど……きっと、それがずっと気になっていたんだと思う。ごめん、ボクは……ボクは……」
「リルフ、そんな……」
リルフは、私の疑念に気づいていたようである。そういえば、最近この子は私に対して少し不安そうな視線を向けてきていた。もしかして、あれは自身を狙う者達への不安ではなかったのだろうか。
リルフは、私に対して不安を覚えていた。私の心情を察して、心配していてくれていたのだ。
私は、なんということをしてしまったのだろうか。疑念を抱いただけでなく、それでリルフを不安にさせて。
「私は、私は……」
私の心と呼応するかのように、辺りには雨が降り始めていた。その冷たさも気にならず、私は己の愚かさを悟っていた。
私は、一体何をやっていたのだろうか。自分の心の中がぐちゃぐちゃで、よくわからなくなってくる。
「お、お母さん……」
「リルフ?」
「うわああああああ!」
次の瞬間、リルフは叫びとともに光に包まれた。
その光には、見覚えがある。あれは、リルフが姿を変える時の光だ。
リルフの体は光の中で大きくなっていく。だが、それは以前までの姿とは少し違う気がする。
「グルルゥ……」
「あ、あれは……」
「素晴らしい……これで滅びが訪れる」
現れたのは、大きな竜となったリルフだった。しかし、その肉体は以前とは少し異なっている。
トカゲのような頭や翼や尻尾という部分は以前を変わっていない。ただ、その体が液体のように溶けているのだ。
ぽたぽたと、リルフの体からしずくが落ちていく。その様子を、私は茫然と眺めていることしかできなかった。
「もう一つの性質?」
「転生の性質ですよ」
ジャザーンの言葉に、私は少しだけ驚いた。その部分は、私が無性に気になっていた部分だからだ。
どうして気になっているのかは、自分でもわかっていない。だが、その言葉を聞いただけで、私の体は思わず強張ってしまうのだ。
「おや、何か思う所があるようですね?」
「そ、そんなことはない……」
「そうでしょうか?」
そんな私の変化に、ジャザーンはすぐに気づいた。私は自分の失敗を悟った。これは、彼に読み取られてはならないことだった。
「転生竜は、何度も転生を重ねている。その事実は、奇妙なものですよねぇ? リルフさんはあのような姿ですが、本当は長い年月を過ごしている。それがあなたも、気になっているのでしょうか?」
「それは……」
「怖いですか? それとも、悲しいのですか? まあ、どちらにしても、あなたの心にリルフさんに対する疑念が芽生えていることは、確かなことであるようですね……」
「そ、そんなことは……」
ジャザーンの言葉を、私はすぐに否定することができなかった。それは、私自身の心を、彼に言い当てられてしまったからだ。
転生竜の転生するという性質。そこに私は恐怖、あるいは嫌悪感のようなものを覚えているのだ。
「リルフさん、これがあなたの母親の答えですよ。わかりますか? あなたの母親は、あなたを恐れている」
「お母さん……」
「リ、リルフ……」
そこで、ジャザーンはリルフに言葉をかけた。その言葉を聞いて、リルフは私の方を見てくる。
その不安そうな視線に、私はどうすればいいのかわからなかった。この気持ちを誤魔化すこともできず、ただ見つめ返すことしかできないのだ。
「……わかっていたよ。あの話を聞いてから、お母さんはボクから少しだけ距離を取っていたよね」
「え?」
「意識してはいなかったのかもしれないけど……きっと、それがずっと気になっていたんだと思う。ごめん、ボクは……ボクは……」
「リルフ、そんな……」
リルフは、私の疑念に気づいていたようである。そういえば、最近この子は私に対して少し不安そうな視線を向けてきていた。もしかして、あれは自身を狙う者達への不安ではなかったのだろうか。
リルフは、私に対して不安を覚えていた。私の心情を察して、心配していてくれていたのだ。
私は、なんということをしてしまったのだろうか。疑念を抱いただけでなく、それでリルフを不安にさせて。
「私は、私は……」
私の心と呼応するかのように、辺りには雨が降り始めていた。その冷たさも気にならず、私は己の愚かさを悟っていた。
私は、一体何をやっていたのだろうか。自分の心の中がぐちゃぐちゃで、よくわからなくなってくる。
「お、お母さん……」
「リルフ?」
「うわああああああ!」
次の瞬間、リルフは叫びとともに光に包まれた。
その光には、見覚えがある。あれは、リルフが姿を変える時の光だ。
リルフの体は光の中で大きくなっていく。だが、それは以前までの姿とは少し違う気がする。
「グルルゥ……」
「あ、あれは……」
「素晴らしい……これで滅びが訪れる」
現れたのは、大きな竜となったリルフだった。しかし、その肉体は以前とは少し異なっている。
トカゲのような頭や翼や尻尾という部分は以前を変わっていない。ただ、その体が液体のように溶けているのだ。
ぽたぽたと、リルフの体からしずくが落ちていく。その様子を、私は茫然と眺めていることしかできなかった。
13
あなたにおすすめの小説
失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~
紅月シン
ファンタジー
聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。
いや嘘だ。
本当は不満でいっぱいだった。
食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。
だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。
しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。
そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。
二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。
だが彼女は知らなかった。
三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。
知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。
※完結しました。
※小説家になろう様にも投稿しています
【完結】追放された生活錬金術師は好きなようにブランド運営します!
加藤伊織
ファンタジー
(全151話予定)世界からは魔法が消えていっており、錬金術師も賢者の石や金を作ることは不可能になっている。そんな中で、生活に必要な細々とした物を作る生活錬金術は「小さな錬金術」と呼ばれていた。
カモミールは師であるロクサーヌから勧められて「小さな錬金術」の道を歩み、ロクサーヌと共に化粧品のブランドを立ち上げて成功していた。しかし、ロクサーヌの突然の死により、その息子で兄弟子であるガストンから住み込んで働いていた家を追い出される。
落ち込みはしたが幼馴染みのヴァージルや友人のタマラに励まされ、独立して工房を持つことにしたカモミールだったが、師と共に運営してきたブランドは名義がガストンに引き継がれており、全て一から出直しという状況に。
そんな中、格安で見つけた恐ろしく古い工房を買い取ることができ、カモミールはその工房で新たなスタートを切ることにした。
器具付き・格安・ただし狭くてボロい……そんな訳あり物件だったが、更におまけが付いていた。据えられた錬金釜が1000年の時を経て精霊となり、人の姿を取ってカモミールの前に現れたのだ。
失われた栄光の過去を懐かしみ、賢者の石やホムンクルスの作成に挑ませようとする錬金釜の精霊・テオ。それに対して全く興味が無い日常指向のカモミール。
過保護な幼馴染みも隣に引っ越してきて、予想外に騒がしい日常が彼女を待っていた。
これは、ポーションも作れないし冒険もしない、ささやかな錬金術師の物語である。
彼女は化粧品や石けんを作り、「ささやかな小市民」でいたつもりなのだが、品質の良い化粧品を作る彼女を周囲が放っておく訳はなく――。
毎日15:10に1話ずつ更新です。
この作品は小説家になろう様・カクヨム様・ノベルアッププラス様にも掲載しています。
追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中
四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。
婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。
拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ
あげは
ファンタジー
「私は、ユミエラとの婚約を破棄する!」
学院卒業記念パーティーで、婚約者である王太子アルフリードに突然婚約破棄された、ユミエラ・フォン・アマリリス公爵令嬢。
家族にも愛されていなかったユミエラは、王太子に婚約破棄されたことで利用価値がなくなったとされ家を勘当されてしまう。
しかし、ユミエラに特に気にした様子はなく、むしろ喜んでいた。
これまでの生活に嫌気が差していたユミエラは、元孤児で転生者の侍女ミシェルだけを連れ、その日のうちに家を出て人のいない森の奥に向かい、森の中でカフェを開くらしい。
「さあ、ミシェル! 念願のスローライフよ! 張り切っていきましょう!」
王都を出るとなぜか国を守護している神獣が待ち構えていた。
どうやら国を捨てユミエラについてくるらしい。
こうしてユミエラは、転生者と神獣という何とも不思議なお供を連れ、優雅なスローライフを楽しむのであった。
一方、ユミエラを追放し、神獣にも見捨てられた王国は、愚かな王太子のせいで混乱に陥るのだった――。
なろう・カクヨムにも投稿
【完結】ワーカホリック聖女様は働き過ぎで強制的に休暇を取らされたので、キャンピングカーで静養旅に出る。旅先で素敵な出合いもある、、、かも?
永倉伊織
ファンタジー
働き過ぎで創造神から静養をするように神託を受けた聖女メルクリースは、黒猫の神獣クロさんと一緒にキャンピングカーで静養の旅に出る。
だがしかし
仕事大好きワーカホリック聖女が大人しく静養出来るはずが無い!
メルクリースを止める役割があるクロさんは、メルクリースの作る美味しいご飯に釣られてしまい、、、
そんなこんなでワーカホリック聖女メルクリースと愉快な仲間達とのドタバタ静養旅が
今始まる!
旅先で素敵な出会いもある、、、かも?
めんどくさがり屋の異世界転生〜自由に生きる〜
ゆずゆ
ファンタジー
※ 話の前半を間違えて消してしまいました
誠に申し訳ございません。
—————————————————
前世100歳にして幸せに生涯を遂げた女性がいた。
名前は山梨 花。
他人に話したことはなかったが、もし亡くなったら剣と魔法の世界に転生したいなと夢見ていた。もちろん前世の記憶持ちのままで。
動くがめんどくさい時は、魔法で移動したいなとか、
転移魔法とか使えたらもっと寝れるのに、
休みの前の日に時間止めたいなと考えていた。
それは物心ついた時から生涯を終えるまで。
このお話はめんどくさがり屋で夢見がちな女性が夢の異世界転生をして生きていくお話。
—————————————————
最後まで読んでくださりありがとうございました!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる