妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗

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44.母の同僚達

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「可愛いですね、クラリア様」
「本当、滅茶苦茶似合っていますよ」
「……あ、ありがとうございます」

 レセティア様の案で、メイド服を着てみることになった私は、何故か屋敷のメイドさん達に囲まれていた。
 中心となっているのは、お母さんが屋敷にいた時からヴェルード公爵家に仕えていた人達である。お母さんの復帰に伴って、皆集まっていたらしい。
 それで私がメイド服を着ることになって、なんだか盛り上がっているのだ。

「いや、カルリアの子供なのかなぁとは思っていたけど、まさか本当にそうだったなんて」
「驚いたわよ。あ、えっと、カルリア様って呼ばないと駄目なのかな?」
「いえ、私は立場としてはメイドでしかありませんから」

 私が身に包んでいるのは、子供用のメイド服であるらしい。
 貴族の家に仕える人の中には、幼い頃から仕える人もいるらしく、丁度私に合う服があったのである。

 ヴェルード公爵家のメイド服というものは、中々に可愛らしいものだ。これはレセティア様の趣味であるらしく、ヴェルード公爵――すなわちお父様はそのお母様の意思を尊重して、それを採用したそうである。

「ロヴェリオ殿下、クラリアはどうですか?」
「……叔母上、なんで俺に話を振るんですか?」
「あら、この場にいる殿方はロヴェリオ殿下だけなのですから、ここはクラリアに賞賛の言葉の一つでもかけてあげるべきなのではありませんか?」
「それは……まあ、そういうものですか?」

 そこで私の耳には、レセティア様とロヴェリオ殿下の話し声が聞こえてきた。
 するとロヴェリオ殿下は、こちらに少し近づいて来る。その顔が少し赤くなっているため、私の方も少し照れてしまった。

「クラリア、似合っているよ」
「あ、ありがとうございます」

 ロヴェリオ殿下は、特に躊躇うこともなく賞賛の言葉を口にしてくれた。
 それがなんだか、とても心に染み渡ってくる。メイドさん達にも褒められたというのに、何故かそれらの言葉とは違う感情が湧いてきた。
 それはやはり、ロヴェリオ殿下だからなのだろうか。私は少し、固まってしまった。

「え? 嘘っ……ちょ、ちょっと、カルリア」
「……どうかしましたか?」

 そんな風に私が少し浸ってしまっていると、周囲のメイドさんの内一人が驚いたような声をあげた。
 誰かから話を聞いたらしきそのメイドさんは、お母さんに耳打ちをしている。すると直後に、お母さんの表情が変わった。目を丸めて、驚いているのだ。

「……カルリア? 何かあったのかしら?」
「レセティア様、その、クラリアの……婚約が」
「婚約?」

 レセティア様が声をかけると、お母さんは少し声を震わせながら、その言葉を口にした。
 そこで私は、目の前にいるロヴェリオ殿下と顔を見合わせた。私の婚約、それは一体どういうことなのだろうか。
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