地味でつまらない私は、殿下の婚約者として相応しくなかったのではありませんか?

木山楽斗

文字の大きさ
1 / 20

1.第三王子との婚約

しおりを挟む
 オービス侯爵家の長女である私は、第三王子であるレヴァール殿下と婚約することになった。
 それは、オービス侯爵であるお父様が国王様から評価された結果である。王家との婚約は名誉なことなので、私としても誇らしい所だ。

「……君がイルセア嬢か」
「はい、レヴァール殿下。こうして挨拶をするのは、お久し振りですね」
「そうだったかな? いやすまないな。何分、何人もと挨拶を交わしてきた故に、印象深い者以外は覚えていないんだ」
「……そうでしたか」

 私は早速、婚約者となったレヴァール殿下の元に赴いていた。
 彼ときちんと挨拶を交わし、今後のことを話し合う。これはそういった場だ。
 ただレヴァール殿下は、あまり乗り気ではなさそうだった。彼は私を見ながら、少し不機嫌そうに鼻を鳴らす。

「少なくとも君は、印象に残るような出で立ちではないな。なんというか、全体的に地味な印象が見受けられる」
「そうでしょうか?」
「もう少し煌びやかに着飾ることを勧めておくとしよう。第三王子の妻になるなら、もう少し美的意識を磨いてもらいたいものだな」
「……努力いたします」

 レヴァール殿下とは、これまで挨拶くらいしか交わしたことがなかった。今まで内面がわかるような会話は、重ねていなかったのである。
 先程の会話で、レヴァール殿下がどういった人間であるかは、少しわかってきた。彼はどうやら、少々高慢な人間であるらしい。

 レヴァール殿下の言葉の節々からは、私を見下すような意思が垣間見える。まあ実際に、彼の方が地位としては上であるのだから、それは仕方ないことなのかもしれない。
 ただそれでも、思いやりという観点については少しくらい持ってもらいたいものである。上に立つ以上、それは必須のものだと私などは学んできたのだが。

「ふん……何も言い返されないというのも如何なものだな。君は僕と会話する意思がないのか?」
「いえ、そういう訳ではありませんが……」
「参ったな、君とはどうにも噛み合わない。だから僕は嫌だったんだ。父上は勝手に話を進めたがる。あの人の悪い癖だ」

 レヴァール殿下は、ゆっくりと首を横に振った。
 どうやら私は、彼に快く思われていないらしい。それは少々まずいかもしれない。これから夫になる相手に嫌われるなんて、できることなら避けたい所だ。

 だが正直、何故ここまで悪く思われてしまうのかがわからない。私にはそんなに、悪い所があったのだろうか。それがよくわからなかった。
 しかし立場上、私の方がレヴァール殿下に合わせていくしかない。少しでも彼からの印象を回復できるように、頑張っていくとしよう。
 その時の私は、実に呑気にそのように思っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【短編】花婿殿に姻族でサプライズしようと隠れていたら「愛することはない」って聞いたんだが。可愛い妹はあげません!

月野槐樹
ファンタジー
妹の結婚式前にサプライズをしようと姻族みんなで隠れていたら、 花婿殿が、「君を愛することはない!」と宣言してしまった。 姻族全員大騒ぎとなった

追放された地味令嬢、実は王国唯一の“魔力翻訳者”でした 〜役立たずと言われましたが、もう契約は終了です〜

あめとおと
恋愛
王太子から「魔法が何も起こらない役立たず」と断罪され、婚約破棄された伯爵令嬢リリア。 追放された彼女の能力は―― 魔法の“意味”を読み解き、術式そのものを理解する力《魔力翻訳》。 辺境の魔導研究所でその才能を見出された彼女は、 三百年解読不能だった古代魔法を次々と再生させていく。 一方、彼女を失った王都では魔法事故が連鎖。 国家結界すら崩壊寸前に――。 「戻ってきてほしい」 そう告げられても、もう遅い。 私を必要としてくれる場所は、 すでに別にあるのだから。 これは、役立たずと呼ばれた令嬢が 本当の居場所と理解者を見つける物語。

『無能な聖女』と婚約破棄された私、実は伝説の竜を唯一従える『真の守護者』でした。~今さら国に戻れと言われても、もう遅いです~

スカッと文庫
ファンタジー
「魔力値たったの5だと? 貴様のような偽聖女、この国には不要だ!」 聖女として国を支えてきたエルナは、第一王子カイルから非情な婚約破棄を言い渡される。隣には、魔力値を偽装して聖女の座を奪った男爵令嬢の姿が。 実家からも見捨てられ、生きては戻れぬ『死の森』へ追放されたエルナ。しかし、絶望の中で彼女が目覚めさせたのは、人間には測定不能な【神聖魔力】だった。 森の奥で封印されていた伝説の銀竜を解き放ち、隣国の冷徹皇帝にその才能を見出された時、エルナを捨てた王国は滅びの危機に直面する――。 「今さら謝っても、私の結界はもうあなたたちのために張ることはありません」 捨てられた聖女が真の幸せを掴む、逆転劇がいま幕を開ける!

婚約破棄された宰相です。 正直、婚約者も宰相も辞めたかったので丁度よかったです

鍛高譚
恋愛
内容紹介 「婚約破棄だ! そして宰相もクビだ!」 王宮の舞踏会で突然そう宣言したのは、女性問題を繰り返す問題王太子ユリウス。 婚約者であり王国宰相でもあるレティシアは、静かに答えた。 「かしこまりました」 ――正直、本当に辞めたかったので。 これまで王太子の女性問題の後始末、慰謝料交渉、教会対応、社交界の火消し…… すべて押し付けられていたレティシアは、婚約も宰相職もあっさり辞任。 そしてその瞬間―― 王宮が止まった。 料理人が動かない。 書類が処理されない。 伝令がいない。 ついにはトイレの汚物回収まで止まり、王宮は大混乱。 さらに王太子の新たな女性問題が発覚し、教会は激怒。 噂は王都中に広がり、王宮は完全に統治不能に。 そしてついに―― 教会・貴族・王家が下した決断は、 「王太子廃嫡」 そして。 「レティシア、女王即位」 婚約破棄して宰相をクビにした結果、 王宮を止めてしまった元王太子の末路とは――? これは、婚約破棄された宰相が女王になるまでの 完全自業自得ざまぁ物語。

《完結》悪女と噂されたわたくしのざまぁ

ヴァンドール
恋愛
悪女と噂のわたくしとの結婚なら、どれほど軽んじても問題はないと思っていた旦那様。 ところが……。

公爵家の家政を10年回した私が出ていったら、3ヶ月で領地が破綻しました

歩人
ファンタジー
エレナは公爵家に嫁いで10年、夫は愛人に入れ込み、義母には「家政婦代わり」と 罵られた。だが領地の財務も、商会との交渉も、使用人の管理も、全部エレナが やっていた。ある日、義母から「あなたの代わりなんていくらでもいる」と言われ、 エレナは静かに離縁届を出した。「では、代わりの方にお任せください」 辺境の町で小さな商会を開いたエレナ。10年間の実務経験は伊達ではなかった。 商会はたちまち繁盛する。一方、エレナがいなくなった公爵家は3ヶ月で経営破綻。 元夫が「戻ってこい」と泣きつくが—— 「お断りです。あと、10年分の未払い給金を請求いたしますね」

【完結】転生したら断罪イベントの真っ最中。聖女の嘘を暴いたら、王太子が真っ青になりました

丸顔ちゃん。
恋愛
王太子は私――エリシアに婚約破棄を宣言し、 隣では甘ったるい声の“聖女”が「こわかったんですぅ♡」と泣き真似をしている。 だが私は知っている。 原作では、この聖女こそが禁術で王太子の魔力を吸い取り、 私に冤罪を着せて処刑へ追い込んだ張本人だ。 優しい家族を守るためにも、同じ結末は絶対に許さない。 私は転生者としての知識を武器に、 聖女の嘘と禁術の証拠を次々に暴き、 王太子の依存と愚かさを白日の下に晒す。 「婚約は……こちらから願い下げです」 土下座する王太子も、泣き叫ぶ聖女も、もう関係ない。 私は新しい未来を選ぶ。

大切にされないなら、大切にしてくれる人を選びます

南部
恋愛
大切にされず関係を改善できる見込みもない。 それならいっそのこと、関係を終わらせてしまえばいい。

処理中です...