甘やかされて育ってきた妹に、王妃なんて務まる訳がないではありませんか。

木山楽斗

文字の大きさ
10 / 66

10.婚約者との対面

しおりを挟む
 イムティア様の志を知ったことによって、私の考えは少し変わっていた。
 代々続いてきたエルバラス侯爵家を、両親や妹にこれ以上自由にさせたくはない。それが今の私の想いだ。
 故にここに戻って来られたのは幸いだった。厄介な存在であるメレティアも今はいないし、今の内に何かしらの足掛かりを掴んでおきたい所である。

「まずは、ナルギスね……」

 そこで私は、ゆっくりと深呼吸をした。
 驚くべきことに、バルラット侯爵家のナルギスは今日この家を訪ねて来ているらしい。
 婚約を知らされてすぐに対面することになるなんて思っていなかった。とりあえず私は、彼のことをやり過ごさなければならないようだ。

「……ラフェリアです」
「ラフェリア嬢か……待っていたぞ。どうぞ、入ってくれ」
「失礼します……」

 私は、ゆっくりと客室に入っていく。
 その中にいたのは、私と同年代の青年だ。彼とこうして直接顔を合わせるのは、いつ振りだっただろうか。
 幼い頃と比べると、彼は随分と背が高くなっているような気がした。どちらかというと、可愛らしかった印象も変わっている。凛々しい男性といった感じだ。

「ふむ……」

 幼少期、彼は普通の少年だった。
 そんな彼がまさか、お父様なんかを尊敬するようになるなんて思ってもいなかったことである。
 今は柔和な表情をしている彼だが、その本性はもしかしたらお父様と同じかもしれない。そう考えると、なんだか少し気分が悪くなってくる。

「久し振りだな、ラフェリア嬢。あなたは変わっていないな……」
「そうでしょうか?」
「ああ、幼い頃と変わらぬ麗しさだ」
「……え?」

 ナルギスは、私の前でゆっくりと跪いた。
 その態度に、私は少し面食らってしまう。思っていたよりも、柔らかい態度だからだ。
 これはどういう趣なのだろうか。お父様の手の者なら、もう少し高圧的な態度をしてくると思っていたのだが。

「あなたとこうして再会できたのは、運命の悪戯としか言いようがない。本来であるならば、あなたの妹君と結ばれるはずだったというのに……」
「あ、えっと……」
「おっと、すまない。こんな風にはしゃいではならないな。しかし俺は嬉しいのだ。この幸運が、嬉しくて仕方ないのだ」
「な、何を……」

 ナルギスの態度に、私は混乱していた。
 彼が何を言っているのか、よくわからない。頭の中に、疑問がいっぱいだ。
 しかしもしかしたら、ナルギスは私が思っていたような人物ではないのかもしれない。彼の態度に、私はそんなことを思うのだった。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました

饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。 わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。 しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。 末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。 そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。 それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は―― n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。 全15話。 ※カクヨムでも公開しています

【完結】我儘で何でも欲しがる元病弱な妹の末路。私は王太子殿下と幸せに過ごしていますのでどうぞご勝手に。

白井ライス
恋愛
シャーリー・レインズ子爵令嬢には、1つ下の妹ラウラが居た。 ブラウンの髪と目をしている地味なシャーリーに比べてラウラは金髪に青い目という美しい見た目をしていた。 ラウラは幼少期身体が弱く両親はいつもラウラを優先していた。 それは大人になった今でも変わらなかった。 そのせいかラウラはとんでもなく我儘な女に成長してしまう。 そして、ラウラはとうとうシャーリーの婚約者ジェイク・カールソン子爵令息にまで手を出してしまう。 彼の子を宿してーー

妹の婚約者自慢がウザいので、私の婚約者を紹介したいと思います~妹はただ私から大切な人を奪っただけ~

マルローネ
恋愛
侯爵令嬢のアメリア・リンバークは妹のカリファに婚約者のラニッツ・ポドールイ公爵を奪われた。 だが、アメリアはその後に第一王子殿下のゼラスト・ファーブセンと婚約することになる。 しかし、その事実を知らなかったカリファはアメリアに対して、ラニッツを自慢するようになり──。

王太子様には優秀な妹の方がお似合いですから、いつまでも私にこだわる必要なんてありませんよ?

木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるラルリアは、優秀な妹に比べて平凡な人間であった。 これといって秀でた点がない彼女は、いつも妹と比較されて、時には罵倒されていたのである。 しかしそんなラルリアはある時、王太子の婚約者に選ばれた。 それに誰よりも驚いたのは、彼女自身である。仮に公爵家と王家の婚約がなされるとしても、その対象となるのは妹だと思っていたからだ。 事実として、社交界ではその婚約は非難されていた。 妹の方を王家に嫁がせる方が有益であると、有力者達は考えていたのだ。 故にラルリアも、婚約者である王太子アドルヴに婚約を変更するように進言した。しかし彼は、頑なにラルリアとの婚約を望んでいた。どうやらこの婚約自体、彼が提案したものであるようなのだ。

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

妹の嘘を信じて婚約破棄するのなら、私は家から出ていきます

天宮有
恋愛
平民のシャイナは妹ザロアのために働き、ザロアは家族から溺愛されていた。 ザロアの学費をシャイナが稼ぎ、その時に伯爵令息のランドから告白される。 それから数ヶ月が経ち、ザロアの嘘を信じたランドからシャイナは婚約破棄を言い渡されてしまう。 ランドはザロアと結婚するようで、そのショックによりシャイナは前世の記憶を思い出す。 今まで家族に利用されていたシャイナは、家から出ていくことを決意した。

溺愛されている妹の高慢な態度を注意したら、冷血と評判な辺境伯の元に嫁がされることになりました。

木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるラナフィリアは、妹であるレフーナに辟易としていた。 両親に溺愛されて育ってきた彼女は、他者を見下すわがままな娘に育っており、その相手にラナフィリアは疲れ果てていたのだ。 ある時、レフーナは晩餐会にてとある令嬢のことを罵倒した。 そんな妹の高慢なる態度に限界を感じたラナフィリアは、レフーナを諫めることにした。 だが、レフーナはそれに激昂した。 彼女にとって、自分に従うだけだった姉からの反抗は許せないことだったのだ。 その結果、ラナフィリアは冷血と評判な辺境伯の元に嫁がされることになった。 姉が不幸になるように、レフーナが両親に提言したからである。 しかし、ラナフィリアが嫁ぐことになった辺境伯ガルラントは、噂とは異なる人物だった。 戦士であるため、敵に対して冷血ではあるが、それ以外の人物に対して紳士的で誠実な人物だったのだ。 こうして、レフーナの目論見は外れ、ラナフェリアは辺境で穏やかな生活を送るのだった。

婚約者を奪われた私が悪者扱いされたので、これから何が起きても知りません

天宮有
恋愛
子爵令嬢の私カルラは、妹のミーファに婚約者ザノークを奪われてしまう。 ミーファは全てカルラが悪いと言い出し、束縛侯爵で有名なリックと婚約させたいようだ。 屋敷を追い出されそうになって、私がいなければ領地が大変なことになると説明する。 家族は信じようとしないから――これから何が起きても、私は知りません。

処理中です...